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【多職種向け】 2023年

多地点合同メディカル・カンファレンス[2023-第1回]

(埼玉県立がんセンター発信)
司会 埼玉県立がんセンター 脳神経外科 楮本 清史

近年、高齢化に伴ってがん患者が増加し、診断と治療の進歩により多くのがん患者の予後が改善している。一方で、患者の高齢化に伴って、がんの治療中に脳血管障害が合併する機会がまれではなく、がんと脳卒中(Stroke oncology)として注目されつつある。当院では、予期せぬ脳血管障害の合併症により、有効な治療を継続できなかった症例を契機に、全病院的な課題ととらえ、その予防を目的とした取り組みを行ってきた。その経緯と新設した「周術期脳疾患外来」の活動内容を検討し、その成果と課題について議論したい。

1. 発端となった症例と周術期脳疾患外来設立までの経緯

埼玉県立がんセンター 脳神経外科 大関 有希恵

当院では、以前、周術期に脳卒中を発症し、予後不良な転帰をたどった例を経験した。
総合キャンサーボードで検討し、周術期の脳血管障害とその対策について議論を行った。その後、院内医療安全対策の一つとして「周術期脳血管障害対策マニュアル」を作成し、注意喚起を促した。周術期における脳卒中対策やリスク評価などの術前診察を通常の外来診察や電子カルテ、電話での診察依頼などで対応していたが、「周術期脳疾患外来」を開設し実行することとなった。現在年間約90人程度診察を行っているが、周術期外来を設立して以降、術前に周術期外来を受診し当院で治療を受けた患者で周術期に脳卒中を発症した例は今のところない。
今回、周術期脳疾患外来設立の発端となった症例とその経緯について報告する。

2. 周術期脳疾患外来について

埼玉県立がんセンター 脳神経外科 早瀬 宣昭

2019年7月に周術期脳疾患外来を開設し、2021年12月までの期間に216例の診察を行った。対象は種々の癌種にわたり、脳疾患の内訳は脳梗塞既往、頚部・脳血管狭窄、脳動脈瘤や、無症候性良性脳腫瘍、てんかん既往などである。2019年7月から12月まで、47例を診察し、大腸癌、右内頚動脈閉塞、左内頚動脈狭窄の症例を他施設紹介、左下顎歯肉癌術後、肺癌、両側内頚動脈狭窄症例は、結果的に手術治療を回避した。手術治療をおこなった45例に周術期脳疾患合併症はなかった。2020年は77例を診察し、比較的大きな未破裂脳動脈瘤を認めた肺癌と、子宮体癌症例を他施設へ紹介した。手術治療を行った75例に周術期脳疾患合併症はなかった。2021年は、92例を診察した。後頭蓋窩硬膜動静脈瘻を認めた肺癌症例を他施設へ紹介した。手術治療を行った91例に周術期脳疾患合併症はなかった。
脳血管障害について、脳卒中治療ガイドライン2021に準拠し、症例ごとに、原疾患の病状と周術期脳卒中リスクを勘案して、主科に対し、周術期管理を提案している。
結論として、周術期脳疾患外来を通し、がん治療における安全な周術期管理に寄与していると考えている。

更新・確認日:2023年08月30日 [ 履歴 ]
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2023年02月08日 ビデオ掲載はございません。
2023年01月27日 抄録を更新しました。
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