- 日時
- 2023年08月24日(木)17:30~18:30
- テーマ
- がん終末期患者の在宅看取りへの課題
(岩手県立中央病院発信)
司会 岩手県立中央病院 呼吸器内科 呼吸器センター長 宇部 健治
肺癌は、発見時に手術適応となる症例は半数に満たず、完全切除後でもII期、III期の再発率は5割を超える。薬物治療が進歩しているとはいえ、切除不能や術後再発した肺癌に治癒の可能性はほぼ望めず、いずれ終末期を迎えることになる。がん終末期患者が人生の最期を自宅で迎えたいという希望が多い一方、現実には悪性新生物による死亡のうち自宅で最期を迎えるケースは2割にとどまる。在宅看取りをいかに増やせるか、課題を探る。
1. がん終末期患者の在宅看取りへの課題 ~病院主治医の立場から~
岩手県立中央病院 副呼吸器センター長 石田 格
2020年に始まった新型コロナウイルス感染拡大は、医療機関で治療する患者に多大な影響をもたらした。感染防止目的で面会制限が設けられ、緩和ケア病院への転院も容易ではなくなった。終末期患者が、残された貴重な時間を面会も叶わず不自由な環境で過ごすのはとても残念なことである。残された時間を大切な方々と共に過ごしていただくため、診療に関わる医師は、在宅医療制度を理解し、適切なタイミングで在宅医療への移行を提案する必要がある。
2. がん終末期患者の在宅看取りへの課題 ~緩和ケアチームの立場から~
岩手県立磐井病院 緩和ケア認定看護師 松浦 真由美
呼吸器疾患終末期の在宅療養について、患者、家族の意向を聴きながら支援を進めている。往診に対する意識や理解、患者の苦痛症状の対応に対する不安、家族の介護力などを確認し調整を行っている。地域性もあり、近所の目が気になるなど、介入を希望しない患者、家族、また、希望するサービスに対応できないことなどもある。患者、家族が安心して自宅で過ごせるよう、主治医、地域多職種協働による支援を考えていきたい。
3. がん終末期患者の在宅看取りへの課題 ~往診医の立場から~
もりおか往診ホームケアクリニック 岩井 正勝
病院完結型の時代から、地域包括ケアの時代へと転換がなされ、地域全体での継続的な医療体制の構築が重要である。今後、ますます在宅における看取りの重要性が増すことが予想されるが、実際には、在宅における看取りを阻む要因があり、患者・家族、及び医療従事者ともに満足感を覚える在宅看取りには至っていない。今回、有床診療所である当クリニックの経験より、在宅での看取りの現状と課題点について探ってみたいと思う。