令和元年6月19日、第10回小児がん拠点病院連絡協議会がフクラシア東京ステーション 6Dにて開催され、全国15の小児がん拠点病院および国立成育医療研究センターと国立がん研究センターの2つの小児がん中央機関代表者が参加した。(出席者名簿)
開会にあたり、国立がん研究センターの中釜斉理事長、国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長より挨拶があった。また厚生労働省健康局がん・疾病対策課の片岡伸介課長補佐より挨拶があった。
1.小児がん中央機関からの報告
(1)「がん情報サービス」の情報提供・相談支援について
若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)から資料の説明が行われ、がん情報サービスでAYA世代や成人小児共通のコンテンツが増えてきていること、がん情報サービスと小児がん情報サービスを統合していくことなどが報告された。(資料1-1)
(2)小児がん中央機関の役割と成育医療研究センターでの情報公開について
松本公一センター長(国立成育医療研究センター小児がんセンター)から資料の説明が行われ、改訂された小児がん中央機関の実施要綱に基づいて事業を行っていること、国立成育医療研究センターのホームページに全国の診療施設の診療実績を掲載していること、施設ごとの診療数の分布をもとに集約化関する情報を得られること、診療相談ホットラインについて、アドバイザリーボード委員の更新について報告された。(資料1-2)
(3)静岡県立こども病院での小児がん拠点病院指定に関する検討について
新規参画施設の渡邉 健一郎部長(静岡県立こども病院血液腫瘍科)より、病院の紹介をいただいた。(資料1-3)
2. 相談支援部会からの報告
鈴木彩医療社会事業専門員(国立成育医療研究センター医療連携・患者支援センター)から資料の説明が行われ、相談員専門研修・継続研修など活動報告や、専門研修や部会の計画について報告された。また就労支援についての課題を成人の施設の経験を共有して進めることが報告された。(資料2)
3.看護部会について
松谷弘子看護部長(国立成育医療研究センター看護部)から第4回看護部長会議について、看護管理上の課題や取り組みについての情報共有を行ったことや、教育ラダーや、無菌室を含む看護師配置、小児に対する特定行為研修などについても検討を進めることになったことが報告された。(資料3)
4.中央機関の支援事業について
(1)造血器腫瘍マーカー中央診断の報告について
出口隆生診療部長(国立成育医療研究センター小児がんセンター小児がん免疫診断科)より資料の説明が行われ、造血器腫瘍の免疫診断の実績について報告された。医療法改正に伴う制度管理に対応すべく衛生検査センターとし、衛生検査所として登録した。(資料4-1)
(2)中央病理診断の報告について
義岡孝子統括部長(国立成育医療研究センター病理診断部)から、病理診断について報告された。(資料4-2)小児がん中央機関と小児がん拠点病院を中心としたネットワークを形成して、病理診断支援の体制を作ることを計画しており、小児がんを専門とする病理医の育成にも貢献することを目指している。そのために、病理部門の診断体制についての現状把握を行いたいことなどが報告された。
5.各ブロックの報告について
松本公一センター長(国立成育医療研究センター小児がんセンター)から資料の説明が行われ、連携病院の指定について、松本センター長から連携病院の類型と例示された要件が報告された。(資料5-2序)
この報告について、以下の議論があった。
- 「第三者認定」については、学会やJCCG(日本小児がん研究グループ)などの認定を想定している。
- ブロックごとに地域の実情を考慮して、弾力的に運用することを考えている。提示された類型の条件を杓子(しゃくし)定規にあてはめるのではなく、提示された要件は目安として見ていただきたい。各ブロックにおいて連携病院の指定にあたり、どのような要件の変更が必要になったか、変更が必要な理由も明確化して厚生労働省に報告いただきたい。
- 一つの連携病院が複数のカテゴリーに指定されることは想定しており、複数カテゴリーの指定についは特に問題はない。
- LCAS(小児・AYA世代のがんの長期フォローアップ体制整備事業)を受けた医師について常勤・非常勤は規定されていないが、勤務実態がないような職員にならないようにする必要がある。LCASについては継続できるよう学会でも検討していく。
- 地域でのフォローアップを実施するカテゴリー3は、非常勤の外来であっても適切な勤務実績のもと必要な体制が提供できていると地域ブロック協議会として要件を認めるのであれば、そのように要件を地域ブロックから厚労省に提出する。
- ブロック内に複数の拠点病院がある場合は、合議で連携病院の指定をする。一つの連携病院が複数の拠点病院から指定されることも制限はされないが、手続きが煩雑になることが懸念される。
- 拠点病院がない府県でも患者がカテゴリーごとにどの病院に相談すればいいかをわかるようにすることが望ましい。
- 地域の実情により、ひとりの患者が複数の病院で診療を受けている場合も想定される。ブロックの協議会ごとに、どのように連携するのが理想的なのかを議論していただきたい。
- 地域的な境界領域ではブロックを超えて患者が受診することも想定される。連携病院は、そういった実情に合わせて指定することも可能である。
- 現時点では連携病院に補助金等のインセンティブは予定していない。
- 脳腫瘍や骨腫瘍のように、診療できる施設が限られている疾患群について連携するカテゴリー2の病院については、どのがん種について連携を行うのか明確にして申請していただく予定。
- 拠点病院が行う研修会の開催費用については拠点病院の予算で負担は可能である。拠点病院の財源の使用範囲については、規定による。また、各ブロックの取り組みやブロック協議会の参画施設、連携病院の指定方針について、報告がされた。
(資料5-1) (資料5-2-1) (資料5-2-2) (資料5-2-3) (資料5-2-4) (資料5-2-5) (資料5-2-6) (資料5-2-7)
6.各ブロックの報告について
(1)がんゲノム医療提供体制の情報共有について
加藤元博診療部長(国立成育医療研究センター小児がんセンター移植・細胞治療科)より、がんゲノム医療提供体制について情報共有があり、小児がんに対するゲノム医療の構築について報告がされた。(資料6-1)
(2)小児がん拠点病院・小児専門施設緩和ケアチーム研修会について
余谷暢之診療部長(国立成育医療研究センター小児がんセンターがん緩和ケア科)より、緩和ケアチーム研修の準備状況について報告がされた。開催は2020年1月18日(土)を予定している。(資料6-2)
7.総合議論
全体を踏まえて、以下の議論があった。
- ゲノム医療についての体制を小児がん拠点病院の枠組みの中でも検討していく必要があるだろう、との指摘があった。