令和4年1月27日(木)、第15回小児がん拠点病院連絡協議会をオンラインで開催した。全国15の小児がん拠点病院および国立成育医療研究センターと国立がん研究センターの2つの小児がん中央機関代表者が参加した。(出席者名簿)
開会にあたり、国立がん研究センターの中釜斉理事長、国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長より挨拶があった。また厚生労働省健康局がん・疾病対策課の成田幸太郎課長補佐より挨拶があった。
1.小児がん中央機関からの報告
若尾文彦センター長(国立がん研究センターがん対策情報センター)から資料の提供が行われ、がん情報サービスを2021年7月に更新したことが報告された。(資料1-1)また、松本公一センター長(国立成育医療研究センター小児がんセンター)から資料の提供が行われ、小児がん拠点病院と連携病院における2020年度の情報公開解析について報告がなされた。(資料1-2)
この報告について、以下の議論があった
- 拠点病院と連携病院が実際どのように連携し小児がん医療の解決に至っているのか、資料があれば次回以降提示してもらいたい。
- 診療相談ホットラインから実際に診療につながったケース、つながらなかったケースについて提示してもらえると課題が見えてくるためお願いしたい。
2.相談支援部会からの報告(資料2)
鈴木彩医療社会事業専門員(国立成育医療研究センター医療連携・患者支援センター)から資料の提供が行われ、相談員専門研修・継続研修、研修検討委員会、部会について報告された。また小児・AYA世代がん患者の教育に関する要望書について、本協議会にて承認を得た後、厚労省へ提出する予定であることが報告された。
この報告について、以下の議論があった
- 拠点病院では多くの患者が相談支援センターにつながることができているという調査結果があるが、連携病院においてはデータがないため今後同様の調査をしたい。
- 現在の指針では連携病院の相談員は研修を受けなくてもよいというものだが、今後は拠点病院の行う研修を受けることを明記し連携病院への相談支援センター設置の必須化について検討したい。
3.看護部会について(資料3)
嶋田せつ子看護部長(国立成育医療研究センター看護部)から資料の提供が行われ、看護部会での取り組みとして、自施設の小児がん病棟での強みや看護実践内容、もっと知りたいと思う内容についての調査、各病院の記載をリーフレットにまとめ各施設へ配布することに取り組んでいることが報告された。
この報告について、以下の議論があった
- 小児病院によるAYA世代の対象年齢について、20歳までは小児病院が中心でそれ以上は成人でも対応することとなっているが、年齢だけではなくがんの種類によっても対応する病院が分かれる。
- 認定看護師を輩出するプログラムを2019年12月から開始し修了者は50名程度であるが、研修受講者を合わせると300名となり、13の拠点病院に受講者がいることが確認できたことが報告された。
4.小児がん医療の診断支援事業
(1)中央病理診断からの報告(資料4-1)
義岡孝子統括部長(国立成育医療研究センター病理診断部)から資料の提供が行われ、中央病理診断数は、年々増えていること、中央病理診断への検体提出について、「小児固形腫瘍検体提出の手引き」が改訂され、従来のスタンプ標本提出が不要になる等の変更があったことについての報告がなされた。
(2)造血器腫瘍マーカー中央診断からの報告(資料4-2)
出口隆生診療部長(国立成育医療研究センター小児がんセンター小児がん免疫診療科)より、資料の提供が行われ、細胞マーカー診断支援についての報告がなされた。
(3)中央画像診断からの報告(資料4-3)
宮嵜治診療部長(国立成育医療研究センター放射線診療部)より資料の提供が行われ、中央画像診断報告の症例についての報告がなされた。
(4)小児がんの登録事業からの報告(資料4-4)
瀧本哲也診療部長(成育医療研究センター小児がんセンター小児がんデータ管理科)より資料の提供が行われ、小児固形腫瘍観察研究の登録率の向上についての報告がなされた。
5.小児がんゲノム医療について(資料5)
加藤元博診療部長(国立成育医療研究センター小児がんセンター移植・細胞治療科)より資料の提供が行われ、小児がんゲノム医療の充実に向けて、小児がんゲノム診療に必要な体制の構築について報告がなされた。
令和4年2月24日(木)に小児がんゲノム医療研修の開催を予定している。
この報告について以下の議論があった
- ゲノム医療の体制を整え、小児がんへの医療提供に加え開発研究の加速が求められているため、国立がん研究センターの先生方の力を借りながら、小児がんの治療開発を目標に進めていきたいとの報告があった。
6.小児がん緩和ケア体制について(資料6)
余谷暢之診療部長(国立成育医療研究センター小児がんセンターがん緩和ケア科)より資料の提供が行われ、小児がん緩和ケア体制についての報告がなされ、15拠点の緩和ケアチームの年間の介入患者実態調査について検討していることが報告された。
この報告について以下の議論があった
- 小児緩和ケア専門医の育成について、小児がんの緩和を診られる医師を育成していくことが喫緊の課題である。
- 小児緩和ケア加算について、小児にも参加しやすいよう緩和ケア加算の要件の改訂が重要ではないだろうか。
- 15拠点の緩和ケアチームの介入実態調査について、介入件数とそのなかでも加算の取れている件数をとると課題がわかるのではないだろうかとの指摘があった。
7.事前アンケート結果について(資料7)
米田光宏診療部長(国立成育医療研究センター小児がんセンター副センター長)より資料の提供が行われ、本協議会に向けて行われた事前アンケートの結果についての報告がなされた。
8.総合討論
全体を踏まえて下記の議論があった。
- 新型コロナワクチンについて、小児病院への配分数が少なく接種希望者がワクチンを接種できないという状況について、今後検討していく必要があるとの指摘があった
- この協議会は非常に有意義な議論が多いため、メディアへ広報してはどうかとの提案があった。