- 日時
- 2017年02月09日(木)17:30~19:00
- テーマ
- がん性腹水に対する治療
(国立がん研究センター中央病院発信)
司会 国立がん研究センター中央病院 消化管内科 朴 成和
がん性腹水は、特に腹腔内臓器を原発とする悪性腫瘍で高頻度に認められ、患者のQOLを低下させるだけでなく、治療に難渋する。近年、がん性腹水に対して、全身化学療法だけでなく、腹腔内化学療法や腹水濾過濃縮再静注療法などの様々な試みがなされており、新しい知見を紹介して、multi-disciplinaryな治療法について議論したい。
1.胃がんのがん性腹水に対する全身化学療法
国立がん研究センター中央病院 消化管内科 岩佐 悟
切除不能の進行再発胃がんに対する化学療法は、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤の併用療法が標準治療であり、S-1とシスプラチンの併用療法が第Ⅲ相試験の結果に基づき広く汎用されてきた。胃がんの転移様式としての腹膜播種はしばしば腸管狭窄や腹水貯留を招き、患者のQOLを落とすのみならず、標準治療を行えないことが少なくない。高度の腹膜播種症例に対する薬物療法のこれまでの検討と現在行われている臨床試験を紹介する。
2.胃がんのがん性腹水に対する腹腔内化学療法
東京大学医学部附属病院 外来化学療法部 石神 浩徳
がん性腹水を伴う胃がんの予後は極めて不良であり、新たな治療法の開発が急務である。我々は強力な局所療法である腹腔内化学療法と全身化学療法を併用した治療法を考案し、腹膜播種陽性胃がんを対象として臨床試験を進めてきた。また、大量腹水例ではCARTと腹腔内・全身併用化学療法を繰り返すことにより症状の改善と生存期間の延長を目指してきた。本講演では、臨床試験の成績および大量腹水例の治療成績について報告する。
3.がん性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注療法(CART)
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 がん専門修練医 西川 忠曉
腹水濾過濃縮再静注療法(CART)は1981年に難治性胸水・腹水症に対して保険収載されて以降、卵巣がんを中心に婦人科がん領域でも頻用されてきた。がん性腹水に対しては、とくに緩和治療で用いられることの多いCARTであるが、緩和治療以外への応用を含め、婦人科がん領域での使用経験を中心に、その現状と今後の展望について言及したい。