- 日時
- 2017年10月26日(木)17:30~19:00
- テーマ
- 術後合併症減少のための取り組み
(呉医療センター・中国がんセンター発信)
司会 呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部/呼吸器外科部長 山下 芳典
固形がんに対する外科的切除術は治療の中心である一方、手術侵襲によって惹起される術後合併症を制御する必要がある。これまで術後早期回復促進の観点からさまざま報告がされてきたが、Fast track surgery、ERAS (Early Recovery from Surgery) ではエビデンスをもとに体系化されてきた。それらの考え方がチーム医療とともに本邦でも取り込まれ、まさに日本外科代謝栄養学会ではESSENSE (Essential Strategy for Normalization after Surgery with patient’s Excellent satisfaction) というプロジェクトが施行されたところである。今回、侵襲の大きな食道がん、膵・胆道腫瘍、肺がんの根治術に対する周術期管理を取り上げ、最新の研究成果と今後の課題について講演および討論していただく。
ERAS概論
呉医療センター・中国がんセンター 臨床研究部/呼吸器外科部長 山下 芳典
1.食道がん根治術の周術期
岩手県立中央病院 副院長 消化器外科科長
外科代謝栄養学会 周術期管理WG(ESSENSE)委員長 宮田 剛
以前は高度侵襲手術が故に早期離床などは不可能とされていた食道がん手術ではあるが、近年では胸腔鏡も増え、また手術直前にmethylprednisoloneを投与してサイトカインの過剰産生を抑制することが一般化してきているため、手術翌日からの立位、歩行開始、また早期からの飲水開始、なども可能になってきている。腸瘻造設も一般化しており手術翌日からの経腸栄養開始も行われ身体的回復は早期化している。今後はリハビリテーションの至適負荷量などが課題である。
2.ERASを適用した膵頭十二指腸切除術の周術期管理と多職種チーム医療の関わり
県立広島病院 消化器・乳腺・移植外科部長 眞次 康弘
ERASは患者ストレス軽減、合併症減少、回復促進、満足度向上などを目指す包括的な周術期管理プログラムで、主たる管理項目は術後早期の離床と経口摂取確立である。術後腸管機能回復と栄養、疼痛管理、リハビリテーションなどが重要であり、運用には多職種が連携するチーム医療の構築が有用である。ERASを適用した膵頭十二指腸切除術の周術期管理の実際とNSTを中核としたチーム医療の関わりについて報告する。
3.肺がん周術期、術園包括的リハビリテーションと超早期離床・経口摂取の試み
呉医療センター・中国がんセンター 呼吸器外科医長 三村 剛史
原発性肺がん切除術に対するAdvanced ERAS(A-ERAS)法を報告する。 ERASの項目に加え、多職種チーム体制の下で、術前外来待機期間包括的呼吸リハビリテーション(包括的呼吸リハ)を、胸腔鏡下手術(VATS)を施行し、そして術当日の超早期離床・経口摂取を導入している。包括リハでは分岐鎖アミノ酸製剤(6.4g/日)と補中益気湯投与を併用している。経口摂取は術当日夕食から開始し忍容性を確認している。さらにHigh-risk患者において肺切除後の合併症を軽減させる可能性が示唆されている。
総括発言
岩手県立中央病院 副院長 消化器外科科長
外科代謝栄養学会 周術期管理WG(ESSENSE)委員長 宮田 剛