- 日時
- 2018年05月10日(木)17:30~19:00
- テーマ
- がん治療における臓器機能温存をめざした試み
(九州がんセンター発信)
司会 九州がんセンター統括診療部長 森田 勝(消化管外科)
がん治療において、根治性を追求することは言うまでもなく最も大切なことです。一方、治療に伴い、時として正常な臓器機能が損なわれ、患者のQOLは著しく低下します。したがって、がん診療に従事するものにとって臓器機能温存は常に留意すべき問題です。今回は、外科的処置がQOL低下に最もつながりやすい頭頸部外科・直腸外科領域、さらには放射線治療科における臓器機能温存の試みについて紹介したいと思います。
1.頭頸部がん治療のジレンマ-機能温存と生存率の向上を目指して-
九州がんセンター頭頸科部長 益田 宗幸
頭頸部がんが発生する臓器は構音、発声、咀嚼、嚥下、呼吸、嗅覚、味覚等の生命維持や社会生活に必須の機能を担っており、治療により鬱状態になる患者が突出して高いがんとして知られている。頭頸部がん治療においては、臓器機能温存と生存率という本来両立しない目標の追求が常に求められる。このジレンマを最も象徴する喉頭温存をテーマに、現在当院で行っている治療戦略の概略と、難しい選択を迫られた症例の経過を供覧する。
2.集学的治療による低位直腸がん治療 根治を犠牲にしない肛門機能温存
九州がんセンター消化管外科医師 杉山 雅彦
直腸がんに対する根治療法は根治性追求と肛門機能温存という相反するニーズを十分に満たす必要がある。従来であれば直腸切断術の適応であった症例に対しても術前に薬物療法、放射線療法を施行することで肛門を温存することが可能となっている。さらに手術技術も低侵襲で精密な神経温存が可能な腹腔鏡下手術、特に近年では肛門側操作に腹腔鏡下手術を応用する経肛門的低侵襲手術(TAMIS)が注目されておりこれらの概要を紹介する。
3.定位放射線治療-適応と臨床的意義-
九州がんセンター放射線治療科医長 國武 直信
1. 脳転移に対する治療として手術、全脳照射、定位照射などを行うが、それぞれの利点・欠点や適応、さらにそれぞれを併用することの臨床的意義などについて検討し、当院における治療方針の再検討を試みた。
2. I期肺がんに対する治療は手術が標準治療ではあるが、定位放射線治療による根治照射の適応と問題点について検討した。