- 日時
- 2018年11月22日(木)17:30~19:00
- テーマ
- がん治療医と看護師が取り組むべき『がん告知後に治療を開始する患者のための妊孕性温存』
(国立がん研究センター中央病院発信)
司会 国立がん研究センターがん対策情報センター 加藤 雅志
がん医療における生殖医療との連携が重要な課題となっている。がんと診断された患者は、がんの治療方針を決めていく中で、様々な不安を抱えながら将来子供を持つことについても考え行動しなければならない。がん告知を受けた直後の患者は、がん治療開始までの限られた時間で妊孕性温存について決定しなければならないこともあり、患者が納得した生活を送ることができるよう医療者による適切な支援が求められている。今回、特に「がん告知後、がん治療開始前」の時期に焦点を当てて、その時期に関わるがん治療医と看護師が取り組むべきがん・生殖医療、地域のネットワーク構築の必要性について討論を行う。
1.小児・AYA世代がん患者に対するがん・生殖医療の実践—がん治療医の役割は?
聖マリアンナ医科大学産婦人科学 鈴木 直
がん・生殖医療とは、小児・AYA世代がん患者に対する生殖機能温存を目指した医療がその定義となる。本邦では、本領域に関する臨床的疑問に答える形式の世界初のガイドラインが2017年に日本癌治療学会によって刊行された。がん・生殖医療においては、がんと宣告された患者が不安と恐怖の中で、そして時間的猶予が無い状況下で不確実な将来の選択肢を決める必要性がある。あくまでもがん治療を優先とする中で、がん治療医は患者が自己決定できる環境を(将来子どもを授かる選択だけで無く、その選択肢を選択しないという決定に関しても)、多職種の医療従事者と密に連携して構築する必要がある。
2.がん治療開始前の妊孕性温存治療に対する意思決定支援における看護師の役割
上智大学総合人間科学部 渡邊 知映
がん治療開始前の妊孕性温存に関する意思決定支援について、全国調査の結果をもとに、看護職が抱える課題を共有しながら、看護職に求められる役割を具体的なプロセスとして解説していきたい。さらに、若年患者や予後が厳しい患者への対応など介入が難しい事例について考慮するべき視点について共有したい。
3.がん・生殖医療における医療連携の現状と今後の在り方について考える:岐阜県での取り組みを交えて
岐阜大学医学部産科婦人科学 古井 辰郎
がん・生殖医療に関する情報提供、意思決定支援について、原疾患治療の優先を前提とした様々な選択肢とその限界、経済的問題、養子縁組や里親制度、さらに子供を持たない選択肢までを短時間で話し合う必要がある。そのためには、がん治療と生殖医療の密な医療連携は必須である。また、図らずも妊孕性温存ができない場合のサポート体制も重要である。これらの支援の国内の現状や日本がん・生殖医療学会の取り組みについて議論したい。