- 日時
- 2021年10月14日(木)17:30~19:00
- テーマ
- 胃がん薬物療法の新展開
(愛知県がんセンター発信)
司会 愛知県がんセンター 副院長/薬物療法部長 室 圭
切除不能胃がんにおける全身薬物療法は、この10年で成績向上著しい大腸がんや非小細胞肺がんに比し、治療成績の改善が伸び悩んでいる。近年、後方ライン治療としてラムシルマブ、免疫チェックポイント阻害薬、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩、HER2陽性例に対するトラスツズマブ・デルクステカンが臨床導入されたこと等により、生存成績向上が期待されている。さらなる治療開発によりブレークスルーの可能性もある。胃がん薬物療法の現状と展望についてご発表いただく。
1. 愛知県がんセンターにおけるリアルワールドデータ
愛知県がんセンター 薬物療法部 レジデント 緒方 貴次
近年、大規模臨床試験における切除不能胃がんの生存期間は11-17か月と徐々に延長している。最近では後方ラインの薬剤が大規模臨床試験の結果から複数承認されているが、胃がんでの後方ラインへの移行率などを考えると、実臨床において後方ラインの薬剤が全体の生存期間の延長に寄与しているかは不明である。愛知県がんセンターにおける切除不能胃がんの過去15年間のデータを基に、実臨床での本邦における胃がん薬物治療の進歩について発表する。
2. バイオマーカーに基づいた個別化治療の新展開(免疫療法以外)
岐阜大学医学部附属病院 がんセンター 准教授 牧山 明資
バイオマーカーに基づいた治療開発はこれまで様々ながん種で盛んに行われており、特に非小細胞肺がんや大腸がんなどにおいては新たな薬剤の承認につながり治療成績の向上に寄与している。一方で胃がんにおいては多数の分子標的薬の開発が実施されたが、その多くが残念ながら失敗に終わっている。その中でも乳がんに先行する抗HER2療法や血管新生阻害剤は胃がんにおいても予後改善効果を示し、近年ではFGFRやClaudin 18.2を標的にした治療法など有望な治療開発が進んでいる。がんゲノム医療時代において、分子標的薬剤を中心に胃がんにおける現況と今後の展望について発表する。
3. 胃がんにおける免疫療法の新展開
国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 消化管内科 医員 川添 彬人
近年、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)である抗PD-1/PD-L1抗体は、消化器がんを含む様々な悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果を示し臨床導入されている。しかし、胃がんにおける抗PD-1抗体の奏効割合は10%程度に留まっており、一部の症例では急速な腫瘍増悪を示すことも知られている。従って、ICIの至適バイオマーカーやより効果の得られる併用療法の開発が急務である。本講演では、胃がんにおけるICIのバイオマーカー解析や併用療法の開発に関して、最新の知見を含めて発表する。