- 日時
- 2022年02月24日(木)17:30~18:30
- テーマ
- 膵がんの集学的治療
(国立がん研究センター東病院発信)
司会 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 池田 公史
膵がんに対する治療戦略は、近年、急速に変貌している。切除可能例に対しては術前治療が標準治療となり、Borderline resectable例に積極的な周術期治療が試みられている。進行がんには、ナノリポソーマルイリノテカンやオラパリブが登場し、悪液質に対するアナモレリンも使用可能となり、遺伝子パネル検査も一般化した。このように治療戦略が複雑化している膵がんの集学的治療について、それぞれの領域のエキスパートに概説していただく。
1. 切除可能膵がんにおけるctDNA
国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 佐々木 満仁
血液循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA; ctDNA)による遺伝子解析は、包括的遺伝子プロファイリング検査として実臨床に導入されているが、その他にがんの早期診断や術後の微小残存病変(Minimal residual disease; MRD)の検出への応用も期待されている。複数のがん腫でctDNAを用いたMRDと予後の相関についても報告され、ctDNAは周術期の重要なバイオマーカーとなっていくと考えられる。ここでは、切除可能膵がんにおけるctDNAの現状と今後の展望について概説する。
2. Borderline resectable膵がんに対する周術期治療
国立がん研究センター東病院 臨床研究支援部門機器開発推進部・肝胆膵外科 高橋 進一郎
最近の臨床試験の結果によればBorderline resectable膵がん(BR膵がん)では切除先行(術後補助療法)よりも術前治療の有効性が高い事がわかってきた。局所制御と微小転移制御をもたらし予後を向上させる術前治療が期待されるが標準治療は現在まで定まっていない。今までにBR膵がんに実施された主要な臨床試験の成績と現在実施中の臨床試験を提示し今後の展望について考察する。
3. 進行膵がんの二次治療
国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 今岡 大
膵がんの大半が既に肝などに転移した進行した状態で発見され、全身化学療法の適応となることが多い。なかでもFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法は、現在の転移性膵がんに対する1次治療の標準治療に位置付けられている。その一方で、2次治療のエビデンスは少なく、長い間、5-FU/LV療法やS-1単剤療法といった、『みなし標準治療』による治療が行われてきた。しかし、NAPOLI-1試験においてnal-IRI/5-FU/LV療法(NAPOLI-1レジメン)が有用性を示したことから、現在ではNAPOLI-1レジメンが2次治療の標準治療に位置付けられている。ここでは、NAPOLI-1レジメンを中心に、切除不能膵がんに対する2次治療の開発の流れ、そして今後の展望について述べる。
4. アナモレリン
国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 光永 修
経口グレリン受容体作動薬アナモレリンは、消化器がん悪液質患者50名を対象とした単アーム試験で有用性が示され、2021年にがん悪液質治療薬として保険承認された。アナモレリンの良い適応とは、有用性とその臨床意義について、自験例を交えて紹介する。