- 日時
- 2022年05月26日(木)17:30~18:30
- テーマ
- 異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫-診療上の諸問題について-
(宮城県立がんセンター発信)
司会 宮城県立がんセンター 整形外科 保坂 正美
異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫(ALT/WDLPS)は、整形外科に限らず多くの外科系診療科で治療されていますが、本疾患の歴史的変遷を踏まえ、特に異型脂肪腫様腫瘍を中心に、病理診断、画像診断、治療上の問題点についてそれぞれの立場から述べていただき、本疾患についての理解を深めたいと思います。
1. 歴史、臨床診断上の問題点
宮城県立がんセンター 整形外科 鈴木 一史
脂肪系腫瘍の歴史は紀元前に始まり、近代になり病理学の発達とともに様々な分類が出現し、その中で異型脂肪腫様腫瘍という疾患名が出現した。現在までの脂肪系腫瘍の歴史の変遷について述べる。また、一般に異型脂肪腫様腫瘍は脂肪腫より大きいとされているが、大きさによる鑑別が妥当であるかについても考察する。
2. 画像診断上の問題点
東北大学病院 放射線診断科 常陸 真
異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫は、CTやMRIではほぼ脂肪の塊の様にみえ、脂肪腫との鑑別が困難な事が多い。造影MRIで、内部に造影効果や血管構造が見られる事があれば、異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫を疑う所見となる。サイズが5cm以上、深部発生の場合も高分化型脂肪肉腫を疑う所見と考えられる。硬化型や炎症型といった亜型が存在し、脂肪以外の濃度や信号を呈する事があり、脱分化型との鑑別に注意が必要である。
3. 病理診断上の問題点について
宮城県立がんセンター 病理診断科 伊藤 しげみ
異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫の鑑別診断で特に病理医を悩ませるのが巨大脂肪腫や再発脂肪腫との鑑別です。異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫ではほぼ全例にMDM2/CDK4増幅が認められることから、当院では生検検体で免疫染色によるスクリーニングを実施し、悪性が違われる場合はDISHまたはFISH検査を追加しています。しかしながら免疫染色やFISHの感度・特異度は完全でないため、手術標本での形態学的観察が重要です。今回は臨床診断と病理診断が乖離したグレーゾーン症例をレビューし、病理診断の際に重要なポイントについて考察しました。
4. 臨床の実際、治療上の問題点
東北公済病院 整形外科 土肥 修
異型脂肪腫様腫瘍に対して当院では原則として辺縁切除を行っており、再発率は0.6%、転移をきたした症例はなく、5年生存率は100%であった。異型脂肪腫様腫瘍はWHO分類で良悪性の中間、intermediate(locally aggressive)に分類されているが、Enzingerは異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫の10~15%に脱分化がみられると述べており、手術せず経過観察とするのもリスクはある。深部発生など切除困難例を手術すべきかが課題である。