- 日時
- 2022年07月28日(木)17:30~18:30
- テーマ
- がん支持療法としてのリンパ浮腫治療
(静岡県立静岡がんセンター発信)
司会 静岡県立静岡がんセンター 再建・形成外科 部長 安永 能周
がん治療によって四肢に生じるリンパ浮腫は、ときに乳がん患者や婦人科がん患者の社会生活への復帰を妨げ、また、社会復帰後にもQOLを低下させる要因になりうる。キャンサーサバイバーがより不自由のない日常生活を送れるように“がん支持療法”として行う、リンパ浮腫への多職種アプローチについて議論したい。
一方、終末期がん患者のリンパ浮腫では、苦痛の軽減や、自宅での看取り希望を叶えられることを目指して、“緩和ケア”としてリンパ浮腫に向き合う必要がある。キャンサーサバイバーと終末期がん患者に対する2つの異なるアプローチを共有し、がん患者のリンパ浮腫への理解を深めたい。
1. がん支持療法としてのLVA(リンパ管細静脈吻合術)とその効果
静岡県立静岡がんセンター 再建・形成外科 安永 能周
当センターでは、がん治療後の2次性リンパ浮腫に対し、外科的な“がん支持療法”として積極的にLVAを行っている。LVAによる浮腫改善率(余剰体液量の減少率)は下肢45.1%(860mL減少)、上肢46.0%(267mL減少)で、上肢・下肢によらず一定であった。これまでの研究で明らかにしてきた、LVAの治療効果に関するエビデンスを紹介する。
2. リンパ浮腫に対する多職種チーム医療
静岡県立静岡がんセンター リハビリテーション科 加藤 るみ子
静岡県立静岡がんセンター 栄養室 山下 亜依子
当センターでは、2020年8月から形成外科・栄養室・リハビリテーション科が連携し、多職種でリンパ浮腫診療に当たっている。リンパ浮腫患者はまず、リハビリ科で保存療法を導入し、多職種カンファレンスで適応を判断してからLVAを中心とする外科治療を行う。外科治療の効果は栄養室で評価している(患肢の体液量を測定)。治療の効果を維持するために、保存療法の時期から、リンパ浮腫治療に栄養指導と運動指導を取り入れている。今回、その取り組みの実際を報告する。
3. 右下肢リンパ浮腫を合併した終末期直腸がん患者の自宅退院支援
岩手県立中央病院 リハビリテーション技術科 小澤 栞
がんの進行による機能障害やADL低下は身体的苦痛となり、QOL維持を目的としたリハビリテーションが重要とされる。本症例は50代女性、独居。直腸がん術後、リンパ節転移再発により右下肢リンパ浮腫を合併し、集中排液目的に入院された。しかし、急速な病状進行により浮腫の増悪、ADL低下が顕著となり、優先目標を自宅退院とした。浮腫のケアに加え、廃用に対するリハビリテーションも導入し、退院に繋げることができた。