- 日時
- 2019年05月09日(木)17:30~19:00
- テーマ
- 新規オピオイド鎮痛薬
(埼玉県立がんセンター発信)
司会 埼玉県立がんセンター 緩和ケア科 余宮 きのみ
ここ数年、使用できるようになったオピオイド鎮痛薬が急速に増加し、個々の患者に合ったオピオイドを選択できるようになった。各演者の先生方に、新規オピオイド製剤の①特徴を分かりやすくご説明頂き、②知見や使用経験からどのような場合に使用するのか、どう使用するのか、などについてお話し頂く。新規オピオイドを整理し、臨床で活かす一助となれば幸いである。
1.フェンタニル口腔粘膜吸収剤
国立がん研究センター がん対策情報センター 山本 里江
フェンタニル口腔粘膜吸収剤は、口腔粘膜吸収率が高く、効果発現が速いという特徴を持つ。ROO(rapid-onset opioid)とも呼ばれ、がん突出痛治療薬として、わが国では現在2種類(バッカル錠、舌下錠)が処方可能である。がん突出痛に対して、本剤を必要としている患者を適切に選択し、安全かつ有効に使用することで、より質の高い疼痛治療が期待できる。がん突出痛とレスキュー薬の概念を改めて整理し、本剤についての理解を深めていきたい。
2.タペンタドール
静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科 佐藤 哲観
タペンタドールは、μオピオイド受容体への作動性と、脊髄レベルにおけるノルアドレナリン再取込抑制作用を併せ持つ新規オピオイドである。WHO第三段階に位置付けられる鎮痛薬だが、オピオイドとしての作用が比較的弱いためモルヒネやオキシコドンと比較して消化器系副作用を生じにくい。脊髄後角におけるノルアドレナリン再取込抑制作用により下行性疼痛抑制系を賦活し、神経障害性疼痛への効果も期待できる薬剤である。
3.ヒドロモルフォン
埼玉県立がんセンター 緩和ケア科 大里 真之輔
諸外国において、ヒドロモルフォンはモルヒネやオキシコドンと並び、がん疼痛に対して以前から使用されているオピオイドである。また、呼吸困難に対しても、モルヒネの代替薬として使用されている。ヒドロモルフォンは、グルクロン酸抱合で代謝され薬物相互作用が少ない。徐放錠は一日一回の内服で済み、剤形は低用量から高用量まであること、速放錠は錠剤であること、高濃度の注射製剤があるなど、製剤としての特徴も多い。
4.メサドン
埼玉県立がんセンター 緩和ケア科 京坂 紅
メサドンは、本邦における新たな強オピオイドとして期待されている。しかし、メサドンの薬物動態は個人差が大きく、メサドンと他のオピオイドとの交叉耐性が不完全であるため、そのスイッチング方法については、未だにコンセンサスが得られていない。また、呼吸抑制やQT延長等の重篤な副作用のために、使用には慎重にならざるを得ない。一方で、有用性の高い薬剤として世界各国で使用されており、神経障害性疼痛に有用との報告もある。当院の症例を提示しながら、メサドンについての理解を深めていきたい。