- 日時
- 2019年09月26日(木)17:30~19:00
- テーマ
- デジタルコミュニケーションネットワークを利用したがんの診断コンサルテーションシステムの構築
(長崎大学病院/大阪国際がんセンター発信)
司会 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻病理学 教授
亀田総合病院 臨床病理科 特任包括部長 福岡 順也
1.デジタルパソロジーの導入により、がんの病理診断はこう変化する
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻病理学 教授
亀田総合病院 臨床病理科 特任包括部長 福岡 順也
WSI(バーチャルスライド)を用いたデジタルパソロジーが広く認識され、国内でもスキャナーが医療機器として承認を受けた。我々の研究班により本邦でもデジタルパソロジーによる診断がガラス診断と比較して劣らないことを証明することが出来、これを受けて厚労省や病理学会も顕微鏡を用いた病理診断と同等のものとしてデジタルパソロジーによる診断を認識するようになった。
当然のことながら顕微鏡がデジタルパソロジーに変わることは単純に顕微鏡からモニターに変わるというだけに留まらない。デジタル化が進むと、今後病理診断はどのように変わっていくのか?デジタル化により具体的にどのような改善が行われるかについて具体例および研究データを織り交ぜて紹介する。特にここではコンサルテーションと人工知能にフォーカスを当てる。コンサルテーションは病理診断においてとても重要な位置を占めるが、コンサルテーションを実施することで診断が改善することを証明したデータは無く、現在、患者が訪問をするセカンドオピニオン以外、コンサルテーションは診療行為として認められていない。デジタルパソロジーによりコンサルテーションはきわめて簡便なものとなり、頻繁に行われることになろう。我々はAMED研究班にて診断困難例におけるデジタルコンサルテーションの重要性について実証研究を行い、その重要性を示した。この結果も共有したい。
更に、デジタルパソロジーを導入することにより、人工知能の応用が身近な物となることも疑いは無い。インハウスにて人工知能を教育し、日常診断に応用することが今後増えてくると思われる。我々も主に肺がんをターゲットとしてディープラーニングにより作り上げたプラットフォームがあり、これを日常診療に応用している。AIを日常診療に導入することでどのようなワークフローの変化が生じ、どのように診断が改善するかについても紹介をしたい。
2.人工知能と病理診断—JP-AIDの活動についての報告—
京都大学大学院医学研究科附属総合解剖センター 准教授 吉澤 明彦
がん診療における病理医の役割は未だ大きい。しかしながら、本邦においてがんの病理診断にたずさわる病理専門医は圧倒的に不足している。一方、多くの医療の領域で、人工知能(Artificial Intelligence:AI)を用いた診断補助技術が入り込んできており、病理診断領域においても、それは病理医不足を補う一つの方法であると期待されている。日本病理学会はAMEDの研究開発資金を得て、全国の多くの施設からWSI(高精細病理デジタル画像)を収集し、AI病理診断エンジンの開発に取り組んでいる(JP-AIDプロジェクト)。近い将来、複数のアプリケーションを提供することが期待されているが、本発表では、JP-AIDの進捗に関して報告する予定である。
3.人工知能を使ったヒト肺がん細胞像の自動分類:architectureの違いと分類精度の比較
藤田医科大学医学部病理診断学講座 教授 塚本 徹哉
ヒト非小細胞肺がんの中でも、細胞診画像による腺がんと扁平上皮がんの鑑別は困難な場合が多い。本研究では、deep convolutional neural networks (DCNN)を用いて、腺がん、扁平上皮がん、小細胞がんの細胞診画像の自動分類を試みた。AlexNet、GoogLeNet、VGG16、ResNet50の4つのDCNNを比較した所、VGG16が識別確信度76.8%と最も良好な結果であった。いずれのarchitectureも分化傾向の良好な形態のものは正診し、低分化なものは誤診する傾向にあった。更なる識別率向上のためDCNNの構造最適化を行うとともに、その判定の内容についてさらに検証する必要があると考えられた。