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地域相談支援フォーラム in 長崎 開催記録(2日目)

「離島・がん医療空白地域の現状を知ろう~相談者を支えるネットワークづくり いま私たちができること~」
更新・確認日:2015年04月08日 [ 履歴 ]
履歴
2015年04月08日 掲載しました。

■プログラム

平成27年2月1日(日)9:00~12:30 場所:長崎大学病院 第4講義室
全体テーマ「つなげよう!がん相談支援の輪」
(2日目) テーマ「離島・がん医療空白地域の現状を知ろう~相談者を支えるネットワークづくり いま私たちができること~」
離島の現状報告
グループワーク、全体共有
講評
閉会あいさつ

■概要

続く2日目、2月1日(日)は、116人の相談員が参加し朝9時に開始されました。司会・進行を務める安藤真紀さん(長崎大学病院)のあいさつのあと、「離島・がん医療空白地帯の現状を知ろう 相談者を支えるネットワークづくり いま私たちにできること」題して5人の発表者の報告に入りました。
宮川江利さんと竹山由子さん 写真
まず、座長の宮川江利さん(長崎みなとメディカルセンター)、竹山由子さん(九州がんセンター)の下、宮川さんから「九州・沖縄ブロックには離島などまだまだ社会資源の少ない地域が存在している。がんと診断されたとき拠点病院が近くにないという状況がある。こうした中で、治療のための転院や治療が終わったときの連携のために、患者・家族が困らないように議論していきたいこと、どのような支援が必要か5人の発表者から学び、参加者とグループワークで深めていきたい」と、実行委員会でこのテーマが検討され選ばれた経緯と2日目の報告とディスカッションの趣旨が説明されました。
屋(おく)ます江さん 写真
最初にがん専門相談員の立場から、屋(おく)ます江さん(鹿児島県立大島病院)が「離島におけるがん患者の現状とがん専門相談員としての課題」と題して発表されました。
鹿児島県立大島病院がある奄美大島は鹿児島から南へ400kmの洋上に位置し、有人8島からなる奄美群島は12市町村、人口約11万人が生活している。
国が指定した地域がん診療連携拠点病院である鹿児島県立大島病院の医療圏は8島におよび、圏内の医療資源は、15病院と診療所が96施設、在宅療養を支援する施設は、在宅療養支援診療所が24カ所、在宅療養支援病院が4施設存在するとのことでした。

平成18年から25年までの院内がん登録のデータから、鹿児島県立大島病院で治療を受けたがん患者は2,028人で、がん相談支援センターでは医療費、退院支援や在宅医療についても相談が増えており、この背景として、高齢独居世帯が多く、医療依存度も高いこと、家族が住む県外の大病院で手術を受け、術後の化学療法や緩和ケアのために鹿児島県立大島病院へ転入院するケースや、周囲にがんを知られたくないために長期入院を希望する場合もあるとのことでした。
島を離れてがんの治療を受けたい、また、がんの治療後に島に戻ってきたい、という離島特有の相談には、日頃から信頼できる「かかりつけ医」を持って相談することや、適切に診療情報提供書を書いてもらうことなど、相談者が具体的な行動がとれるよう支援していることが報告されました。

屋さんは、離島の現状として、受診にあたり地理的な問題や交通機関が整備されていないこと、離島が多く医師の不在や緩和ケア病棟がないこと、がん相談支援センターの認知度が低く相談に結びついていないことなどの問題点を提示し、これらの問題点に対し、住民へのがんに関する知識の普及、がん相談支援センターを周知し相談しやすい環境作りを行っていき、創意工夫をして参加しやすい患者サロンを作っていくという取り組みなど、地域の支援者との連携を強めることで、がんになっても住み慣れた奄美で生活できる環境を作っていきたいことが述べられました。
松本泰行さん 写真
続いて、松本泰行さん(壱岐市民病院)は、地域医療連携室で勤務する看護師の立場から「離島がん医療の実際」と題して報告されました。
壱岐市民病院がある壱岐島は、福岡から高速船で約1時間、北西に約60kmの洋上に位置し、島には約27,000人が生活し、高齢化率は31%を超えているとのことでした。壱岐島の医療資源としては、6病院、診療所が18施設、訪問看護が2施設存在している現状を述べられました。
壱岐市民病院は、長崎県が指定した『がん診療離島中核病院』であり、現状として外科医が不在なため、島外で手術、放射線治療、がん化学療法を受けたあとの受け入れを行い、がん相談支援に関しては、外来、病棟、地域連携室の職員がそれぞれ対応されていることが報告されました。

平成26年の壱岐市民病院におけるがん患者は282人で、がん種は、前立腺がん、乳がん、肝臓がん、胃がん、肺がんの順で多く、松本さんが所属される地域医療連携室を経由して、壱岐市民病院から他院への転院、他院から壱岐市民病院へ入院された患者さんは1年間に147人、そのうちの約30%弱、40人の方ががんの診断を受けておられ、他院への転院が19人、他院からの入院が21人だったと報告されました。
平成26年度に、外来で化学療法を受けられた患者さんは、前立腺がんの方を除いて24人で、がん種では肺がん、乳がん、大腸がんの順となっていました。

島外でのがん治療のための他院紹介先、逆に島外から壱岐市民病院への紹介元の現状を見ると、約90%は福岡県内の医療機関となっており、同じ長崎県内の移動よりも交通の便がよく、家族が住んでいることも多い、という背景があると述べられました。

これらの現状から浮かび上がる課題に対して、平成27年4月から外科医が常勤となり壱岐市民病院での手術が検討されていることや、ソーシャルワーカーを採用してこれまで以上の相談支援体制の整備を準備していること、抗がん剤のミキシング室を新設するとともに、外来に化学療法専門ブースを設置して、抗がん剤治療の環境整備を進めていることなど、がん診療体制の充実に向けて計画が進められていることが述べられました。
屋さんの報告でも触れられたように、「狭い島の中でがんを知られたくない」という思いを持つ患者さんも多いが、離島だから仕方ない、と諦めることなくハード面やスタッフの充実などを含め、小さなことからがん患者さんを支援していきたい、と締めくくられました。
押渕素子さん 写真
続いて長崎県松浦市の診療所医師、押渕素子さん(押渕医院)は、「がん医療空白地域の現状」と題して発表されました。
押渕医院のある松浦市は、平戸市、佐世保市、佐賀県の唐津市、伊万里市に隣接しており、人口は24,000人、人口減少と高齢化が進む地域で、がん診療連携拠点病院のある佐世保までは自動車で1時間弱の距離で、高齢のがん患者さんには負担となる距離とのことでした。
押渕医院は、松浦鉄道御厨駅の目の前にある、訪問看護ステーションと短期入所施設を併設する診療所です。訪問看護ステーションでは、これまで自動車で1時間半という移動時間のために、依頼に対応できていなかった鷹島への訪問を、スタッフの熱意によって、まさに今週開始を決めたところだと話されました。

長崎県内の人口10万人あたりの医師数の現状は275.8人と、全国平均を上まわっているものの、医師は都市部に集中しており、松浦市は87.0人と県内最低であり、松浦市民病院が診療所に転換したことなどから、平成8年から24年までの医師数の減少が顕著であるとのことでした。松浦市の医療資源は、平均61.2歳の医師23人が地域の医療を支えており、病院が3施設、診療所が11施設、訪問看護ステーションは押渕医院併設の1カ所で、救急告示病院、夜間救急診療所がないことが紹介されました。
押渕さんは麻酔科を専門ですが、押渕医院勤務後はプライマリケア医として内科外来も担当しているため、高血圧、糖尿病、認知症などさまざまな疾患で受診される患者さんへの対応もあり、がん患者さんだけにゆっくりと時間をとることが難しい現状とのことでした。その日々の診療において、がんを早期に発見し、治療のできる病院に紹介すること、遠方の病院に通院が困難な患者さんの化学療法の継続から、緩和ケア、在宅医療、訪問診療、在宅でのみとりやご家族のグリーフケア、そして相談相手としてなど、かかりつけ医として果たすべき役割を担っていると述べられました。

「自宅は最高の個室」と言われるように、自宅でのみとりは理想的であるものの、老老介護などの現状の中で実現は困難なこともあるが、本人の希望を可能なかぎり支援しようと、これまで23人の方を自宅でみとられたとのことで、自動車で50分、船で25分などの地域にも訪問された報告されました。
実際の訪問診療の事例を紹介されたあと、今後の課題として、訪問看護ステーションを24時間対応にすること、そして長崎県の北部において在宅医療の仲間を作ることをあげられ、そのために普段から「顔の見える関係作り」を実践している、と述べられました。また、地域医療のやりがいを若い世代に伝えるために「ながさき県北地域医療教育コンソーシアム:A.G.O netながさき」が立ち上がり、全国から研修医が実習に訪れているとのことでした。
発表の最後に、自分自身がこの地域で働き続けることで、同じ思いを抱く人たちと共に松浦の地域医療を支えていきたい、と述べられました。
出口久美子さん 写真
続いて、「小離島における在宅ターミナルケアへの取り組み」について、訪問看護ステーション看護師の立場から、出口久美子さん(長崎県看護協会訪問看護ステーション福江)が発表されました。
長崎県の最西端に位置する五島列島は、5つの島を中心に約140の島があるとのことでした。発表は、医療資源と福祉資源の少ない五島列島の小離島に住む、あるターミナル期のがん患者さんについての療養経過と訪問看護活動についての報告がありました。
出口さんの勤務する訪問看護ステーション福江の所在地である福江島は、人口約4万人、高齢化率34%で医療、福祉資源はほぼ整備されているものの、この活動報告のあった小離島は、定期便の本数も少なく、強風や高波など悪天候による欠航も多いとのことでした。また、医療、福祉資源も少なく、無床診療所が1施設で島内に救急車の配置もないとのことでした。そのため急患の場合は、島の波止場まで自家用車を使用し、海上タクシーや漁船で福江港まで搬送、その後、福江島の救急車に連携する必要があるとのことでした。
自宅で最期を迎えたい、と希望するがん患者さんを支えるために、退院後の医療体制は、福江島の中核病院の医師と、小離島の診療所医師が役割分担し、訪問看護は月に一度の頻度での導入が始まり、また、介護体制はケアマネジャーやホームヘルパーが家族と連携しながら支援したと述べられ、病状の変化により、訪問看護の頻度も増え、本人の希望や家族の不安を受け止めながら活動を続けられ、自宅で最期を迎えたいという本人の希望に添った支援がなされたことが報告されました。

本人の意思表示や家族の思いと力、疼痛コントロール、親類や近隣の協力、医療・福祉の連携など、本人の希望を実現できた要因を考察され、さらに行政のサポートとして、五島市小離島地区高齢者支援事業として実施している、小離島高齢者訪問介護船賃負担事業を紹介されました。これは、訪問看護などの利用者が事業者に対して負担する旅客船の船賃を五島市が支給するものとのことでした。

出口さんは、小離島への訪問看護において重要なこととして、住民の気質を知るなどのネットワーク作り、人と人とのつながり、人間関係の構築をあげられました。また、保健師の訪問などを通して、行政に現状を伝え、支援の協力を得ることが必要であると述べられました。
真栄里隆代さん 写真
そして最後は、「がん治療と離島の課題」と題して、当事者の立場から真栄里隆代さん(ゆうかぎの会)が発表されました。
沖縄県は国内他県に類を見ない島嶼県であることや、交通網の整備が不十分なこと、また県民所得が低いなどの特徴があることを述べられました。また、真栄里さんの住む沖縄県宮古島市は、沖縄本島からも300Kmの距離に位置する人口約55,000人の島で、過疎化、高齢化、介護力不足があるといった現状が報告されました。

宮古島の医療資源は総合病院が2施設あるものの、がん医療に関する問題点としては、放射線治療ができないこと、骨シンチやPET検査ができないこと、血液がんの専門医が不在であること、島内に緩和ケア病棟がないこと、情報提供・相談支援体制が不十分であることが述べられ、これら地理的背景、社会背景、医療資源などから、離島のがん患者が厳しい状況に置かれていることを報告されました。
次に離島の課題を明らかにするため、「がんになったとき、何に困ったか」「離島のハンディキャップを取り除くには何が必要か」について、平成23年9月に宮古島で市民を対象に実施されたアンケートなどの結果から考察されました。
まず、島の住民の現状として、過疎化、介護力低下という背景が報告され、がんになったとき困ったこととして、気持ちの落ち込み、交通費、宿泊費、治療費など経済的な問題、そして情報支援・相談支援の体制整備の遅れがあげられました。
このうち、情報の入手、検索方法についてはインターネットと本屋がそれぞれ約4割であり、病気を正しく理解するには厳しい現状があると述べられました。
経済的な問題については、がんの治療費に加え、離島ならではの渡航費、そして治療中のホテル、アパートなどの滞在費があげられ、これらの負担軽減のために直接的な支援策の整備が必要であると述べられました。
また、インターネットを活用して、本島まで出向かなくてもセカンドオピニオンが受けられる仕組みや、離島で専門医の治療が受けられるように人的交流を行うなどの仕組みを整備する重要性についても述べられました。

先のアンケート結果のように、正しい情報が入手しにくい離島の現状に対して、相談支援体制を整備することで、正しい情報を提供し、その上で本人・家族が望む医療を選択できるよう支援することが、問題解決の糸口になると示されました。そして体制整備とともに、相談員は相談室の中だけでなく、相談室から外に出て、困っている人たちに積極的に声をかけていくことにも取り組んでほしいと述べられました。

真栄里さんは最後に、「離島だから仕方ない」と、命を諦めないために、「患者に最も近い位置で寄り添い、支援する相談員が頼りです。」というメッセージで発表を締めくくられました。
参加者のグループワーク 写真
以上5人の発表のあと、休憩をはさんで、参加者のグループワークに移りました。
座長の竹山さんから、「九州・沖縄ブロックの共通の課題として、離島やがん医療の空白地域があることを考え、がんの治療中、あるいは積極的治療が終了する時期の連携について、そして患者さんやご家族が困らないための情報をどのように提供していけばよいのかについてグループで考えましょう。」とグループワークのテーマの説明がありました。

参加者は12グループに分かれ、50分間のグループワークにおいて、5人の発表を通して考えたこと、そして相談員として日々直面している課題を活発に討議し、全体共有を行いました。
連携体制について討議したグループ 写真
連携体制について討議したグループからは、離島の病院や診療所、訪問看護ステーションなどの機関と情報交換する際の手段として、電話での情報交換や診療情報など文書が中心となり、顔の見えない連携をせざるを得ない現状がある中で、相談員が人と人、機関と機関の間に介在することで積極的に調整をしていく取り組みや、離島から病院に出向いて調整を行う取り組みが報告されました。また、今回のフォーラムのように、がんという疾患を中心に広がりつつあるネットワークをきっかけにして、あらゆる疾患を持った患者さんや家族を支える仕組みを作るために、同じ目的を持った支援者たちが連帯し、知恵を出し合って考えていく姿勢が重要であるとの報告がされました。

また、情報提供体制については、情報は置いてあるだけでは伝わらないので、情報が整備されるだけでなく、どうやって伝えるかが重要であり、相談員が情報提供の中心的な役割を担う必要があるとの報告や、相談員をはじめ医療者自身がどこにどのような情報があるかをよく把握し、相談支援センターで来所した相談者に提供するだけでなく、出前講座などを企画してアウトリーチしていく取り組みも重要であるとの報告がされました。

また、今回のフォーラムにオブザーバーとして参加した患者会代表からは、「がんの診断を受けた患者は、自分のことで精いっぱいになっており、自ら相談支援センターにつながりにくい状況があることを理解してほしい。相談窓口の存在自体を知らない、また、知っていてもそこでどんなことが相談できるのかについて、積極的に広報して、必要な人に必要な情報が届くように、さらに体制を整備してほしい。」というコメントが述べられ全体共有が終了しました。
このあと、2日間のプログラムを通して、高山智子部長(国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報提供研究部)は、「がん医療の空白地域において相談支援にできること、というテーマは、平成26年7月に仙台で開催された地域相談支援フォーラム 東北ブロックにおいても議論されたが、この長崎フォーラムで離島ならではの困難さ、そしてその課題の大きさを知ることができた。相談員が明日からできること、行政ができることを地域の支援者と共に考えることができた意義は大きい。県内だけでなく県境を越えた取り組みをさらに発展させていただきたい。」と講評を述べました。

九州・沖縄ブロックにおいては、平成27年度に鹿児島でフォーラムを開催する準備が進められており、鹿児島県の実行委員から案内があり、次回へバトンが手渡されました。

最後に川崎浩二ワーキンググループ長(長崎県がん診療連携協議会相談支援ワーキンググループ)から、「この2日間、刺激し合い、課題を明確にして、他県・他機関の先行事例を知り、顔の見える連携の機会となった。次のステップである“Change”への原動力としてほしい。」と閉会のあいさつがあり、地域相談支援フォーラムin長崎、2日間の全プログラムが終了しました。

また、会場にはNHK長崎支局、長崎新聞の取材が入り、NHKでは2月1日夕方のローカル番組で講演内容や開催者の狙い等が紹介されたほか、長崎新聞では2日目の発表やグループワークの様子が報道されました。
閉会のあいさつ 写真

■資料

資料1 「離島におけるがん患者の現状とがん相談専門員としての課題」(PDF:345KB
資料2 「離島がん医療の実際」(PDF:521KB
資料3 「がん医療空白地域の現状~長崎県松浦市」(PDF:327KB
資料4 「小離島における在宅ターミナルケアへの取り組み」(PDF:1.1MB
資料5 「がん治療と離島の課題」(PDF:1.39MB
用語集
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