1.食欲不振について
がんやがんの治療などによる食欲不振は、多くの人が経験する症状です。その程度や期間には個人差があります。がんや治療などの影響で食欲が下がっていることを自覚しにくい場合もあり、このときは食べる量が減ることが一つの目安になります。食欲がなくても無理に食べている場合などには、食べる量はあまり変化しないこともあります。
2.原因
食欲不振は次のようなさまざまな原因によって起こります。原因は一つに限らず、いくつかが重なっていることもあります。
- がんそのものや、手術、薬物療法、放射線治療などの治療の影響
- 悪液質(がんなどの病気が関係する栄養状態の悪化、筋肉量の減少などが起こった状態のこと)
- 体の症状や心の状態の影響
- 胃炎、吐き気、便秘、下痢などの消化器系の症状
- 痛み、息苦しさ、飲み込みにくさなど
- 味覚の変化、口内炎、口内の乾燥など
- 不安、抑うつ、せん妄、ストレスなど
- 部屋や衣類のにおい、テーブルやベッドの高さなど食事をする環境の影響
3.食欲不振が予想されるとき、起こったときには
食欲不振の原因や期間によって対処法は異なります。そのため、食欲不振が起こったときには問診や血液検査、画像検査などにより原因を調べます。治療が原因の場合には、内容やスケジュールから食欲不振が起こる時期を事前にある程度予測できるため、治療開始前から食事や日常生活を工夫します。
治療が原因の食欲不振として、手術の直後は麻酔や痛みの影響で食欲が出にくく、胃や腸の手術後は腸が動き始めるまでに時間がかかることがあります。薬物療法では使用する薬剤の種類によって、また放射線治療では照射する部位によって、吐き気や嘔吐、口内炎や嚥下痛、味覚・嗅覚等の変化により食欲が低下することがあります。こうした症状は、通常は時間とともに徐々に改善していきますが、治療の詳細によっても異なり、また個人差もあるため、詳しくは担当の医師や看護師、薬剤師に確認しましょう。
悪液質が原因の食欲不振の場合は、食欲を改善する薬を使ったり、十分な栄養をとれるように、栄養補助食品を活用したりすることもあります。これらに加えて、無理のない範囲で体を動かしたり、心や生活面での支えを受けたりすることも効果的だと考えられています。
体の状態が原因と考えられる場合には、原因に対する治療が行われます。また、不安や抑うつが原因と診断された場合には、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。
その他、個人の症状や状況に応じて、栄養や食事、口腔ケア、生活環境など、できる工夫について具体的なアドバイスを受けることもできます。
4.本人や周りの人ができる工夫
毎日十分に食べることができなくても、また1日の中で栄養のバランスが取れなくても、心配しすぎることはありません。栄養や量、規則正しさにこだわらず、食べたいとき、食べられそうなときに、そのとき食べたいものを口にしましょう。
食べ物の工夫
冷たいもの、のど越しのよいもの、やわらかいものなどが比較的食べやすいとされています。麺類や茶わん蒸し、アイスクリーム、ゼリー、果物などを取り入れてみてもよいでしょう。
少量でも栄養価の高いもの(高カロリー・高タンパク・ビタミンの多いもの)を選ぶこともお勧めです。栄養ゼリーなどの栄養補助食品を試してみるのもよいでしょう。

食べ方の工夫
「1日3回」というような食事のパターンにこだわる必要はありません。食べたくなったらいつでも食べられるように、保存のきくものを小分けしておいたり、手早く調理できるものを準備しておいたりして、少量ずつ数回に分けて食べてみましょう。糖尿病などがん以外の病気がある場合には、担当の医師や看護師、栄養士に相談してください。
さまざまな料理を少量ずつ彩り良く盛りつけるなど食事の見た目を工夫したり、食べやすい姿勢を取れるように机や椅子を見直したりすることもお勧めです。可能であれば、食事前にストレッチをするなど、体を軽く動かしてみるのもよいでしょう。

食欲不振の原因に応じた工夫
薬物療法の影響で食欲がないときには、酢の物やすし飯、果物など酸味のあるものを食べやすいと感じることが多いようです。食べやすいものを選んで少しずつ食べてみましょう。
放射線治療の影響で唾液の量が減っているときや、唾液が出にくい朝の時間帯には、のどを通りやすいスープや汁気の多い食べ物などがお勧めです。
食べ物のにおいが気になるときには、冷やす、室温程度に冷ますなどの工夫で食べやすくなることがあります。吐き気などの症状があるときには無理に食べる必要はありません。落ち着いたときに口にするとよいでしょう。

周りの人ができる工夫
周りの人は心配して、「何とか食べてほしい」という気持ちになるかもしれません。しかし、食べてほしいという強い気持ちや期待、言葉などが、食べたほうがよいと分かっていても食べられない本人の負担になることもあります。また、料理に手間やお金をかけすぎると、食べてもらえなかったときの落胆も大きくなりがちです。簡単な調理法、手軽な市販品、冷凍食品などを取り入れながら、食べられるものを本人と一緒に探していきましょう。

5.こんなときは相談しましょう
食べ物や水分をとることができない場合や、1日に何度も吐いてしまうような場合には、すぐに担当の医師や看護師に相談することが大切です。食欲が落ち、体重が減っていると感じる場合には、体重を定期的に量って記録しておき、診察のときなどに医師や看護師に伝えましょう。
栄養状態に不安があるときや、不安やストレスから食欲が出ないと感じるときなどには、ひとりで抱え込まず、担当の医師に相談して管理栄養士や心理職(公認心理師、臨床心理士)などの専門家を紹介してもらいましょう。
栄養士は、栄養状態を確認したうえで、食材の選び方や調理法の工夫などの具体的なアドバイスをしてくれます。自分にあった工夫をすることで、症状が改善してくることもあります。また、心理職や精神科医のような心のケアの専門家と話をすることで、気持ちが楽になることもあります。
相談先や相談の仕方がわからないときには、まずは相談支援センターに相談してみましょう。
6.関連情報
7.参考資料
- 日本緩和医療学会 ガイドライン統括委員会編.がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン 2017年版.2017年,金原出版.
- 日本緩和医療学会編.専門家をめざす人のための緩和医療学 改訂第3版.2024年,南江堂.
- 森田達也ほか監.緩和ケアレジデントマニュアル 第2版.2022年,医学書院.
- 日本栄養治療学会編.がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版.2025年,金原出版.
- National Cancer Instituteウェブサイト. Eating Hints: Before, during, and after Cancer Treatment;2022(閲覧日:2025年10月18日)https://www.cancer.gov/
- National Cancer Instituteウェブサイト. Weight Changes, Malnutrition, and Cancer;2024(閲覧日:2025年10月18日)https://www.cancer.gov/
- Cancer Research UKウェブサイト. How cancer causes diet problems;2023(閲覧日:2025年10月18日)https://www.cancerresearchuk.org/
- American Cancer Societyウェブサイト. Loss of Appetite (Anorexia) and Cachexia;2025(閲覧日:2025年10月18日)https://www.cancer.org/
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