1.乳がんについて
乳がんは、わが国の女性のがんの中で罹患する人(かかる人)が多く、死亡原因の上位に位置するがんです。
早期の乳がんは自覚症状がないことが多いですが、しこり、乳房のひきつれ、乳頭から血性の液が出る、乳頭の湿疹やただれなどの気になる症状がある場合には検診を待たず、すぐに医療機関を受診する必要があります。
2.科学的根拠に基づく乳がん検診
1)乳がん検診の方法
乳がんの死亡率を減少させることが科学的に認められ、乳がん検診として推奨できる検診方法は「乳房X線検査(マンモグラフィ)単独法」です。
「視触診単独」や「超音波検査(単独法・マンモグラフィ併用法)」は死亡率減少効果を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診(住民検診)として実施することは勧められていません。
(1)マンモグラフィ検査
乳房を片方ずつプラスチックの板で挟んで撮影することで、小さいしこりや石灰化を見つける検査です。乳房が圧迫されるため痛みを感じることもありますが圧迫時間は数十秒ほどです。また放射線被ばくによる健康被害はほとんどありません。
2)乳がん検診の対象年齢
乳がん検診が推奨されるのは40歳以上の症状のない女性です。
3)乳がん検診の受診間隔
2年に1度定期的に受診することが推奨されています。
4)乳がん検診の精密検査
検診で「異常あり」という結果を受け取った場合は、必ず精密検査を受けてください。乳がん検診における一般的な精密検査はマンモグラフィの追加撮影、超音波検査、細胞診、組織診などで、これらを組み合わせて行います。詳しくは、精密検査実施機関にお問い合わせください。
(1)マンモグラフィ検査
疑わしい部位を多方向から撮影します。
(2)乳房超音波検査
超音波を使用して、疑わしい部位を詳しく観察します。
(3)針生検下の組織診
疑わしい部位に針を刺して細胞や組織を採取し、悪性かどうか診断します。
3.乳がん検診 Q&A
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Q1どのような人が乳がんにかかりやすいですか。
A1体内のエストロゲンレベルが高いこと、経口避妊薬の使用、閉経後のホルモン補充療法などによってリスクが高くなる可能性があります。また、閉経後の肥満、飲酒、喫煙によりリスクが高くなることはほぼ確実とされています。
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Q2放射線(X線)被ばくによる健康影響はないのですか。
A21回の撮影で乳房が受ける放射線量(0.05~0.15ミリシーベルト)は、一般の人が1年間に受ける自然放射線量(約2.4ミリシーベルト)よりはるかに低く、ほとんど健康被害はありません。また、放射線被ばくによる白血病の発生、不妊症、胎児への影響などはほとんど心配ありません。
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Q3豊胸術(シリコン挿入など)をしている場合も受診できますか。
A3豊胸術後の検査は不可能ではありませんが、検査の精度の低下、安全性の問題から、無症状者と同じ検診を受けることは望ましくありません。また、何らかの症状などがある場合には、病院を受診する必要があります。
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Q4ブレスト・アウェアネスとは何のことですか?
A4ブレスト・アウェアネスは、『乳房を意識する生活習慣』です。
女性が乳房の状態に日頃から関心をもつことにより、乳房の変化を感じたら速やかに医師に相談するという正しい受診行動を身につけることです。ブレスト・アウェアネスの4つのポイントは
1)ご自分の乳房の状態を知る
2)乳房の変化に気をつける
3)変化に気づいたらすぐ医師へ相談する
4)40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける
です。