1.乳がん検診とがん予防
わが国の女性では、乳がんはがんによる死亡原因の上位に位置しており、罹患する人(かかる人)は30歳代後半から増加します。40歳以上の女性では最も罹患する人が多いがんです。
検診で早期に発見して治療することにより、乳がんで亡くなることを防ぐことができます。検診は自覚症状がないうちに受けることが大事です。早期の乳がんは自覚症状がないことが少なくありません。
しこり、乳房のひきつれ、乳首から血性の液が出る、乳首の湿疹やただれなどの気になる症状がある場合には、検診ではなく、すぐに医療機関を受診してください。
現在乳がんで治療中の方は、治療終了後に、いつ検診を再開するかを主治医とご相談ください。またその他の乳房の疾患で現在治療中の方は、がん検診を受診するかどうかを主治医とご相談ください。
2.乳がん検診の方法
1)対象年齢と受診間隔
40歳から、2年に1度定期的に受診してください。
検診の利益(乳がんで亡くなることを防ぐ)と、不利益(偽陰性、偽陽性、過剰診断、偶発症など)のバランスの観点から、上記の対象年齢と受診間隔を守って、以下の「2)の検診項目」にある検査を定期的に受けることが大事です。
2)検診項目
マンモグラフィ検査
- 乳房を片方ずつプラスチックの板で挟んで撮影することで、小さいしこりや石灰化を見つける乳房専用のX線検査です。
- 乳房を圧迫して薄く伸ばすことで乳腺が広がり、少ない放射線で、より鮮明に病変が観察できます。
- 圧迫時間は数十秒ほどですが、痛みを感じることもあります。月経前1週間を避けて受診すると、痛みが比較的少ないと言われています。
- 受診時の年齢や頻度が適切であれば(40歳から2年ごとの受診)、放射線被ばくによる健康被害はほとんどありません。1回の撮影で乳房が受ける放射線量(0.05~0.15ミリシーベルト)は、一般の人が1年間に受ける自然放射線量(約2.4ミリシーベルト)よりはるかに低いです。
- 胸壁にペースメーカーなどの埋め込みがある場合には、検診での撮影は、圧迫による装置の損傷などを考慮し、原則として行っていません。豊胸術(シリコン挿入など)後の検査は不可能ではありませんが、正確な判定が難しい場合がありますので、事前に検査担当者に伝えてください。
※視触診や超音波検査は、乳がんで亡くなることを防ぐ科学的根拠が不十分なため、推奨されていません。現時点で、マンモグラフィと超音波検査を同時に受けることや、2年ごとのマンモグラフィ検査の間に超音波検査を受けることも推奨されていません。
3.乳がん検診の判定後の流れと精密検査
1)検診の判定
(1)がんの疑いなし(精密検査不要)と判定された場合
「がんの疑いなし(精検不要)」と判定されたら次回(2年後)のがん検診を受けてください。普段から乳房を意識する生活習慣をつけ、しこり、乳房のひきつれ、乳首から血性の液が出る、乳首の湿疹やただれなど、何か気になる症状があらわれた場合は、次回の検診を待つのではなく、すぐに医療機関を受診しましょう。
(2)がんの疑いあり(要精密検査)と判定された場合
「がんの疑いあり(要精検)」と判定されたら、必ず精密検査を受けてください。乳がんがあっても症状が出ないことがよくあります。「次回の検診まで待とう」、「症状がないから大丈夫」などと自己判断せず、必ず精密検査を受けてください。
2)精密検査の方法
一般的な精密検査はマンモグラフィの追加撮影、超音波検査、細胞診、組織診などで、これらを組み合わせて行います。
(1)マンモグラフィ検査
必要に応じて、検診で行われたマンモグラフィに追加して特殊な撮影方法を行うことがあります。
(2)乳房超音波検査
超音波を使用して、疑わしい部位を含め詳しく観察します。
(3)針生検下の細胞診や組織診など
必要に応じて疑わしい部位に針を刺して、細胞や組織を採取し、悪性かどうか診断します。
こちらのちらしでは、働く世代の方に向けて、各がん検診について知っていただきたいポイントを、コンパクトにまとめています。
こちらのちらしと動画では、働く世代の方に向けて、適切ながん検診の受け方とその内容について解説しています。
作成協力
こちらのページは、国立がん研究センター研究開発費「働く世代におけるがん検診の適切な情報提供に関する研究(2021-A-22)」の研究成果を基に作成されました。