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がんの発生要因と予防

科学的根拠に基づくがん予防

がんになるリスクを減らすために

1.がん研究から「がん予防」へ

日本では毎年、たくさんの人ががんになっており、日本人の2人に1人が一生のうち一度はがんになるというデータがあります。がんは日本人にとって身近な病気で、その予防は多くの人の関心を集めるテーマです。がん予防についての研究からは、がんと生活習慣病・環境との間に深い関わりがみられていますので、生活習慣を改善することで誰でもがん予防に取り組むことができます。

このページでは、日本人を対象とした研究結果から定められた、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法(5+1)」についてまとめています。

1人でも多くの方がこのページをご参照いただき、より健康的な生活習慣を生活に取り入れていただけるように願っています。

このページの内容は、令和4年8月時点でのエビデンスに基づいて作成しております。今後新しい研究知見の報告などにより、推奨される内容に変更が生じる可能性があります。最新情報については、下記のサイトをご参照ください。

2.日本人におけるがんの要因

図1は、日本人のがんの中で、原因が生活習慣や感染であると思われる割合をまとめたものです。「全体」の項目に示されている、男性のがんの43.4%、女性のがんの25.3%は、ここにあげた生活習慣や感染が原因でがんになったと考えられています。

図1 日本人におけるがんの要因
図1 日本人におけるがんの要因
Inoue M, et al. Burden of cancer attributable to modifiable factors in Japan in 2015. Glob Health Med. 2022; 4(1): 26-36. より作成
棒グラフ中の項目「全体」は、複数のリスク要因が組み合わさってがんになった場合を調整しているため、各項目の単純合計値ではありません。

3.科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法(5+1)」

国立がん研究センターをはじめとする研究グループでは、日本人を対象としたこれまでの研究を調べました。その結果、日本人のがんの予防にとって重要な、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの改善可能な生活習慣に「感染」を加えた6つの要因を取りあげ、「日本人のためのがん予防法(5+1)」を定めました。

科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法(5+1)

これから紹介する5+1のがん予防法を実践することで、あなた自身の努力でがんになるリスクを低くしていくことが可能です。5+1のがん予防法をどのように実践すればよいのか、具体的に説明していきます。

1)禁煙する

(1)たばこは吸わない

日本人を対象とした研究から、たばこは肺がんをはじめ、食道がん、膵臓すいぞうがん、胃がん、大腸がん、肝細胞がん、子宮頸がん、頭頸部がん、膀胱ぼうこうがんなど、多くのがんに関連することが示されました。
たばこを吸う人は吸わない人に比べて、何らかのがんになるリスクが約1.5倍高まることが分かっています。

(2)他人のたばこの煙を避ける

受動喫煙でも肺がんや乳がんのリスクは高くなります。たばこは吸う本人のみならず、周囲の人の健康も損ねます。

禁煙はがん予防の大きく確実な一歩。
吸っている人は禁煙し、吸わない人はたばこの煙をなるべく避けて生活しましょう。

禁煙の方法~ひとりでやろうとせず専門医に相談~

まずは喫煙のリスクを理解することから始めましょう。
禁煙外来など専門家と共に取り組むことも成功への近道です。要件を満たしていれば、保険診療で禁煙補助薬を使った禁煙プログラムなどの禁煙治療を受けることができます。地域の医療機関を探し、ぜひ禁煙に取り組んでみましょう。

2)節酒する

日本人男性を対象とした研究から、1日あたりの平均アルコール摂取量が、純エタノール量換算で23g未満の人に比べ、46g以上の場合で40%程度、69g以上で60%程度、がんになるリスクが高くなることが分かりました。

特に飲酒は、肝細胞がん、食道がん、大腸がんと強い関連があり、女性では男性ほどはっきりしないものの、乳がんのリスクが高くなることが示されています。女性の方が男性よりも体質的に飲酒の影響を受けやすく、より少ない量でがんになるリスクが高くなるという報告もあります。

お酒を飲む場合は純エタノール量換算で1日あたり23g程度までとし、飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。

飲酒量の目安(1日あたり純エタノール量換算で23g程度)

お酒を飲む場合は、以下のいずれかの量までにとどめましょう。

  • 日本酒 … 1合
  • ビール大瓶(633ml) … 1本
  • 焼酎・泡盛 … 原液で1合の2/3
  • ウィスキー・ブランデー … ダブル1杯
  • ワイン … グラス2杯程度

3)食生活を見直す

これまでの研究から、「塩分や塩辛い食品のとりすぎ」「野菜や果物をとらない」「熱すぎる飲み物や食べ物をとること」が、がんの原因になるということが明らかになっています。塩分を抑え、野菜と果物を食べ、熱い飲み物や食べ物は少し冷ましてからとるという3つのポイントを守ることで、日本人に多い胃がんや、食道がん、食道炎のリスクが低くなります。

(1)減塩する

いくら、塩辛などの塩分濃度の高い食べ物をとる人は男女ともに胃がんのリスクが高いという結果も報告されています。
塩分を抑えること、すなわち減塩は、胃がんの予防のみならず、高血圧、循環器疾患のリスクの低下にもつながります。

食塩摂取量の目安

日本人の食事摂取基準(厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)では、1日あたりの食塩摂取量を男性は7.5g未満、女性は6.5g未満にすることを推奨しています。塩辛い食品、食塩の摂取は最小限にするよう心がけましょう。

(2)野菜と果物をとる

食道がんについては、野菜と果物をとることで、がんのリスクが低くなることが期待されます。また、胃がんおよび肺がんも、リスクが低くなる可能性があります。なお、食道がんは喫煙・飲酒との関連が強いことが分かっていますので、禁煙と節酒を心がけることがまず重要となります。野菜と果物をとることは、脳卒中や心筋梗塞をはじめとする生活習慣病の予防にもつながるので、できるだけ毎日意識的にとり、不足しないようにしましょう。

野菜と果物の摂取について

野菜や果物不足にならないようにしましょう。
厚生労働省策定「健康日本21(第二次)」では、1日あたり野菜を350gとることを目標としています。果物もあわせた目安としては、野菜を小鉢で5皿分と果物1皿分を食べることで、おおよそ400gが摂取できます。

(3)熱い飲み物や食べ物は冷ましてから

飲み物や食べ物を熱いままとると、食道がんのみならず、食道炎のリスクを上げるという報告が数多くあります。飲み物や食べ物が熱い場合は、少し冷まし、口の中や食道の粘膜を傷つけないようにしましょう。それにより、食道のがんのリスクが低下することが期待できます。

熱い飲食物について

熱い飲み物や食べ物は、少し冷ましてから口にするようにしましょう。

4)身体を動かす

仕事や運動などで身体活動量が高い人ほど、がん全体の発生リスクが低くなるという報告があります。
身体活動量が高い人では、がんだけでなく心疾患のリスクも低くなることから、普段の生活の中で無理のない範囲で可能なかぎり身体を動かす時間を増やしていくことが、健康につながると考えられます。

(1)活発な身体活動によりがんになるリスクは低下します

国立がん研究センターの研究報告によると、仕事や運動などで身体活動量が高い人ほど、何らかのがんになるリスクが低下していました。

がんの部位別では、男性では大腸がん、女性では乳がんにおいて、身体活動量が高い人ほどリスクが低下しました。

(2)推奨される身体活動量

では、実際にどれくらい身体を動かすとよいのでしょうか?
厚生労働省は、「健康づくりのための身体活動基準2013」の中で、18歳から64歳の人の身体活動について、“歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと”、それに加え、“息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと”を推奨しています。

同様に、65歳以上の高齢者については、“強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと”を推奨しています。また、すべての世代に共通で、“現在の身体活動量を少しでも増やすこと”“運動習慣をもつようにすること”が推奨されています。

推奨される身体活動量の目安

18歳から64歳:
歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行いましょう。
また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に60分行いましょう。
65歳以上の高齢者:
強度を問わず、身体活動を毎日40分程度行いましょう。

5)適正体重を維持する

これまでの研究から、肥満度の指標であるBMI値が、男性は21.0~26.9で、女性は21.0~24.9で、がん死亡のリスクが低いことが示されました。

※ BMI(Body Mass Index):肥満度を表す指標です。値が高くなるほど、肥満度が高いことを表します。

BMI値=(体重kg)/(身長m)2

(1)太りすぎ、痩せすぎに注意

中高年の日本人を対象に行われた研究報告をまとめ、がんによる死亡のリスクと、総死亡(すべての原因による死亡)のリスクが、BMI値によって、どう変化しているかをBMI値23.0~24.9を基準(1.0)としてグラフに表すと、図2のようになりました。

図2 BMI値と死亡リスクとの関連(日本の7つのコホート研究のプール解析)
図2 BMI値と死亡リスクとの関連(日本の7つのコホート研究のプール解析)
国立がん研究センター.がん対策研究所 予防関連プロジェクト.肥満指数(BMI)と死亡リスク;2011年.より作成

図2をみると、男女とも、がんを含むすべての原因による死亡リスクは、太りすぎでも痩せすぎでも高くなることが分かります。

がんの死亡リスクに関しては、男性では肥満よりも痩せている人の方が高くなりました。ただし、たばこを吸わない場合には、痩せていてもがんの死亡リスクは高くならないことが報告されています。
女性においては、がんによる死亡リスクはBMI値30.0~39.9(肥満)で25%高くなりました。特に閉経後は肥満が乳がんのリスクになることが報告されていますので、太りすぎに注意しましょう。

健康全体のことを考えると、男性はBMI値21~27、女性は21~25の範囲になるように体重を管理するのがよいようです。

BMI値の目安

男性はBMI値21~27、女性はBMI値21~25の範囲になるように体重を管理するのがよいでしょう。

自分のBMIを計算してみよう図

6)「感染」もがんの主要な原因です

日本人のがんの原因として、女性で1番、男性でも2番目に多いのが「感染」です。表1のようなウイルス・細菌感染と、がんの発生との関連があるとされています。

表1 ウイルスや細菌の感染が原因となるがんの種類
表1 ウイルスや細菌の感染が原因となるがんの種類

いずれの場合も、感染したら必ずがんになるわけではありません。それぞれの感染の状況に応じた対応をとることで、がんを防ぐことにつながります。

  • 地域の保健所や医療機関で、一度は肝炎ウイルスの検査を受けましょう。感染している場合は専門医に相談し、特にC型肝炎の場合は積極的に治療を受けましょう。
  • 機会があればピロリ菌の検査を受けましょう。定期的に胃がんの検診を受けるとともに、除菌については利益と不利益を考えた上で主治医と相談して決めましょう。
  • 肝炎ウイルスやピロリ菌に感染している場合は、肝細胞がんや胃がんに関係の深い生活習慣に注意しましょう。
  • 子宮頸がんの検診を定期的に受け、該当する年齢の人は子宮頸がんワクチンの定期接種を受けましょう。
  • これらの感染について心配なことは、医療機関やがん相談支援センターに相談しましょう。
    ウイルス・細菌感染と、がんの発生に関する詳しい情報は、「がんの発生要因」をご覧ください。

4.5つの健康習慣の実践の効果

実際に、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの改善可能な生活習慣に気を付けて生活している人とそうでない人では、将来がんになる確率はどれくらい違うのでしょうか。

国立がん研究センターでは、日本全国の11の保健所の協力を得て、調査開始時点で年齢40歳から69歳の男女、総計140,420人を対象に、生活習慣とがんやほかの病気の罹患りかんについての追跡調査を実施してきました。その結果、この5つの健康習慣を実践する人は、0または1つ実践する人に比べ、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低くなるという推計が示されました(図3)。

5つの健康習慣を実践することでがんリスクはほぼ半減します。できそうなことから取り組み、1つでも多くの健康習慣を身につけていきましょう。

図3 「5つの健康習慣」の実践数とがん罹患リスクの関係
図3 「5つの健康習慣」の実践数とがん罹患リスクの関係
Sasazuki S, et al. Combined impact of five lifestyle factors and subsequent risk of cancer: the Japan Public Health Center Study. Prev Med. 2012; 54(2):112-6. より作成

5.参考資料

  1. 国立がん研究センター.がん対策研究所 予防関連プロジェクト.日本人のためのがん予防法,エビデンスの評価,多目的コホート研究(JPHC Study),肥満指数(BMI)と死亡リスク;2022年(閲覧日2023年2月10日)https://epi.ncc.go.jp/index.html
  2. Inoue M, et al. Evaluation based on systematic review of epidemiological evidence among Japanese populations: tobacco smoking and total cancer risk. Jpn J Clin Oncol. 2005; 35(7): 404-11.
  3. Inoue M, et al. Burden of cancer attributable to modifiable factors in Japan in 2015. Glob Health Med. 2022; 4(1): 26-36.
  4. Sasazuki S, et al. Combined impact of five lifestyle factors and subsequent risk of cancer: the Japan Public Health Center Study. Prev Med. 2012; 54(2): 112-6.
更新・確認日:2023年04月07日 [ 履歴 ]
履歴
2023年04月07日 冊子「科学的根拠に基づくがん予防」を更新しました。
2023年02月28日 内容を更新しました。
2022年07月21日 「2.がん研究から「がん予防」へ 1)日本人におけるがんの要因」の「図1 日本人におけるがんの要因」を更新しました。
2020年10月29日 「8.「感染」もがんの主要な原因です」に関連情報「厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」へのリンクを追加しました。
2018年08月13日 「5.食生活を見直す」2)野菜と果物をとる【野菜と果物の摂取について】に文言を追加し、「6.身体を動かす」2)推奨される身体活動量【推奨される身体活動量の目安】の文言を差し替えました。
2018年04月19日 「8.「感染」もがんの主要な原因です」の内容の一部(ウイルス・細菌感染とがんの発生に関する表)を「がんの発生要因」に移動しました。
2017年11月09日 「冊子 科学的根拠に基づくがん予防」を基に「日本人のためのがん予防法」の内容を再構成し、タイトルを「科学的根拠に基づくがん予防」と変更しました。
2017年10月16日 「がん予防」から「がんの発生原因と予防」に移動しました。
2016年08月31日 「日本人のためのがん予防法」の表3(喫煙)、推奨1(喫煙)を更新しました。
2015年12月24日 「日本人のためのがん予防法」の推奨3(食事)を更新しました。
2015年01月27日 「日本人のためのがん予防法」の推奨6(感染)を更新しました。
2014年09月25日 「日本人のためのがん予防法」の推奨3(食事)、4(身体活動)、5(体形)を更新しました。
2013年09月13日 内容を更新しました。
2011年01月05日 内容を更新しました。
2006年10月01日 掲載しました。
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