1.子宮頸がんについて
子宮頸がんに罹患する人(かかる人)は、わが国の女性のがんの中でも比較的多く、また20~40歳代の女性で近年増加傾向にあります。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papilloma Virus)の感染が関連しています。HPVは、子宮頸がんなどを引き起こすウイルスですが、HPV感染者のほとんどは一過性の感染で、2~3年以内に感染が自然消失します。ごく一部で感染が持続し、数年~数10年の長い時間をかけて、前がん病変(異形成)を経て、子宮頸がんになります。軽度の前がん病変の80%はがんに進展せず、一部は自然に消えてなくなります。
早期の子宮頸がんは自覚症状がないことが多いですが、月経(生理)以外に出血がある、閉経したのに出血があるなどの不正出血がある場合や、月経が不規則などの症状がある場合には検診を受診せず、すぐに医療機関を受診してください。また定期的に婦人科を受診し、経過観察中の方はがん検診ではなく、受診中の担当医の指示を受ける必要があります。
2.科学的根拠に基づく子宮頸がん検診
1)子宮頸がん検診の方法
市区町村が行う対策型検診(住民検診)及び職域検診として、子宮頸がん罹患率減少効果を示す確実な証拠があり、実際の運用方法が確立されている「細胞診」の実施(20歳以上、2年に1度)が科学的根拠に基づいた検診方法として推奨されています。「細胞診」は、子宮頸部(子宮の入り口)を先にブラシのついた専用の器具で擦って細胞を採り、異常な細胞を顕微鏡で調べる検査です。
※月経(生理)中は避けて検査を受けてください。
「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年版」において、HPV検査を用いた子宮頸がん検診(HPV検査単独法、細胞診・HPV検査併用法)のうち、「HPV検査単独法」が、これまでの「細胞診」とともに推奨されています。一方、対策型検診として実施するためには、ガイドラインによる科学的根拠を基に、実際の運用方法(診断までの具体的な方法や精度管理体制など)を検討したうえで、指針に位置づけることが必要となります。「HPV検査単独法」については、厚生労働科学研究において運用方法の検討が続いていることから、現時点において、対策型検診として位置づけられていません。
2)子宮頸がん検診の対象年齢
子宮頸がん検診が推奨される年齢は20歳以上の症状のない女性です。
3)子宮頸がん検診の検診間隔
2年に1度定期的に検診を受診することが推奨されています。
4)子宮頸がん検診の精密検査
検診で「異常あり」という結果を受け取った場合は、必ず精密検査を受けてください。子宮頸がん検診における一般的な精密検査は、コルポスコープ下の組織診・細胞診・HPV検査などを組み合わせて行います。
(1)コルポスコープ下の組織診
コルポスコープ(腟拡大鏡)を使って子宮頸部を詳しく見ます。異常な部位が見つかれば、組織を一部採取して悪性かどうかを診断します。
(2)HPV検査
子宮頸部から細胞を採取し、HPVに感染しているかどうかを調べる検査です。子宮頸がん検診の細胞診の結果によって、コルポスコープ検査が必要かどうかを判断するために実施されることがあります。
3.子宮頸がん検診 Q&A
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Q1ヒトパピローマウイルス(HPV)って何ですか。
A1人の皮膚や粘膜に感染するウイルスで、性交渉で感染することも知られています。100種類以上あり、そのうち15種類ほどが子宮頸がんと関連があるといわれています。HPV感染そのものはまれではなく、感染しても多くの場合症状のないうちにHPVが自然に排除されると考えられています。HPVが排除されずに感染が続くと、一部に子宮頸がんが発生することがあります。HPVは子宮頸がんの前がん病変ではほぼ100%にみられ、子宮頸がんの危険因子の1つです。
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Q2HPVの効果的な予防方法はありますか。
A2性交時のコンドーム使用は、ヒトパピローマウイルスの感染予防に有効とされています。またほかの性感染症予防にも役立ちます。
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Q3妊婦が受けてもよいのですか。
A3妊娠していても受診することはできます。医師と相談の上、検査を受診してください。
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Q4過去に子宮の手術を行いました。その後、検診は受診できますか。
A4子宮筋腫や子宮がんの手術は、病気の部位や進行度によりさまざまな手術方法が選択されます。子宮全摘(子宮を全部取った場合)後は、子宮頸がん検診(細胞診)の必要はありません。子宮体部を摘出し子宮頸部を残す手術を行った場合(分娩時の大出血による緊急手術など)は、残存子宮頸部から子宮頸がんが発生する可能性があり、検診の対象になります。手術後に検診を受けるかどうかは、医師と相談してください。