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がん検診

子宮けいがん検診について

1.子宮頸がんとがん予防

1)HPV(Human Papillomavirus:ヒトパピローマウイルス)感染と子宮頸がん

子宮頸がんとは、子宮の入り口にあたる「子宮頸部」で発生するがんのことです。子宮頸がんはわが国の女性では罹患りかんする人(かかる人)が多く、年間約11,000人が子宮頸がんにかかり、約3,000人が子宮頸がんで亡くなっています。20歳代後半から増加しはじめ、特に30歳から50歳代で多くなります。最もがんに近い前がん病変であるCIN3(Cervical intraepithelial neoplasia grade 3:子宮頸部上皮内腫瘍グレード3)を含めると、20歳代と30歳代の女性では最も罹患する人が多いがんです。

子宮頸がんの95%以上は、HPVが子宮頸部に2年以上持続して感染していた人から発生します。HPVは性交渉によって感染するウイルスです。そのため、若い人ではHPVの感染率が高いですが、HPVに感染した人が必ず子宮頸がんになるわけではありません。

図1ではHPV感染からどの程度の確率で子宮頸がんに進行するのかを説明します。性交渉をしたことがあると80~90%の人がHPVに感染するといわれています。女性が10,000人いるとしたら(図1の⓪)、8,000人程度がHPVに感染したことがあると考えられます(図1の①)。しかし、HPV感染後約80~90%の方は2年以内に自然にウイルスが排除され、検出されなくなります(図1の⓪’、7,500人程度)。一方、2年を越えてウイルスが検出される場合(図1の②、500人程度)、さらに数年から数十年の時間をかけて、がんになる前の状態図1の③CIN1、80人程度/④CIN2、10人程度/⑤CIN3、2人程度)を経て、子宮頸がん図1の⑥、1人)が発生します。

つまり、HPVに感染しても、免疫によって大部分は自然にウイルスが排除されます。がんになる前の状態になっても進行しないか、改善する場合もあり、全員が子宮頸がんへ進行するわけではありません。

図1 HPV感染から子宮頸がんへの進行
図1 HPV感染から子宮頸がんへの進行

2)子宮頸がんの早期発見のために

子宮頸がんの治療では子宮温存が困難ですが、その手前の前がん病変と呼ばれるCIN3で発見されれば、子宮全摘手術ではなく、病変がある場所のみを切除する円錐えんすい切除手術が行われます。妊娠の可能性を残すことを考える場合には特にがんになる前の状態で発見することが重要です。

そのためには、がん検診を自覚症状がないうちに受けることが大事です。早期の子宮頸がんやがんになる前の状態は自覚症状がないことがほとんどです。

子宮頸がんの大部分は性交渉で感染するHPVが原因ですので、性交渉が1度でもあれば、子宮頸がん検診を受けることが必要です。また、性交渉がない期間が続いていても発病のリスクはありますので検診を受けることが必要です。

性交渉の経験がない場合は、子宮頸がんが発生するリスクは極めて低く、検診を受ける必要性はこれまで示されていません。問診の際に性交渉の経験による検診の必要性について説明されますので、受けるかどうかを相談することができます。

不正出血がある場合(月経(生理)以外に出血がある、閉経したのに出血があるなど)や、月経が不規則などの症状がある場合には、子宮頸がん以外の病気(子宮体がん)の可能性もあるので、検診ではなく、健康保険を使ってすぐに医療機関を受診してください。

3)HPVワクチンによる子宮頸がん予防

子宮頸がん検診での早期発見とともに、HPVワクチンによっていくつかの種類のHPV感染を予防でき、子宮頸がんの多くを予防します。

HPVは性交渉で感染することから、ワクチンは初めての性交渉前に接種することが望ましいと考えられています。日本では小学校6年から高校1年相当の女性が定期予防接種の対象です。半年から1年の間に決められた回数、接種します。しかし、ワクチンで完全に感染を防げるわけではありません。また、HPVワクチンでは1度感染したHPVを排除することはできません。性交渉が1度でもあれば定期的に子宮頸がん検診を受けることが大事です。

2.子宮頸がん検診の方法

これまで子宮頸がん検診は細胞診が用いられてきましたが、2024年4月より、厚生労働省の要件を満たす一部の自治体に限りHPV検査単独法も住民検診で実施することが可能になりました。

細胞診もHPV検査単独法も検体を採取する方法は同じですが、対象者や検診間隔が異なります。それぞれの対象者や検診間隔は、検診の利益と不利益(偽陰性、偽陽性、過剰診断、偶発症など)を考慮して決められています。本来2年から5年に1回の受診で効果のある検診を毎年受けても効果は上がらず、かえって偽陽性などの不利益が増える可能性があります。それぞれの検査法の対象年齢と受診間隔を守って、定期的に受けることが大事です。

子宮頸がん検診を受ける時の注意点として、月経(生理)中の受診はなるべく避けるようにしてください。

また、妊娠中の検査は望ましくありませんが、もし受診するのであれば妊娠のごく初期がよいとされています。妊娠が進んだあとの検査では子宮の入り口から出血しやすくなりますし、万が一病気が発見されたあとの治療や検査のスケジュールを考えると、ごく初期の受診が妥当です。事前によく医師とご相談ください。

がん検診の利益と不利益について説明しています。

1)細胞診検査

(1)対象年齢と受診間隔

20歳から、2年に1度定期的に受診してください。

(2)検査の説明

子宮頸部(子宮の入り口)を、医師が専用のブラシやヘラでこすって細胞を採り、異常な細胞がないか顕微鏡で調べる検査です。自己採取法は、細胞が採取できていない場合が多いので、実施は控えてください。

2)HPV検査単独法

(1)対象年齢と受診間隔

厚生労働省の指針では30歳以上を対象者としています。ただし、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」と「対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル」では30歳から60歳の女性を対象者としています。

受診間隔は検診結果により異なりますので注意が必要です。精検不要(HPV検査陰性)であれば5年に1度定期的に検診を受診してください。要追跡精検(HPV検査陽性、細胞診異常なし)と判定された場合は1年後にHPV検査を受けてください。HPV検査は住民検診の枠組みで受けられます。

(2)検査の説明

子宮頸部(子宮の入り口)を、医師が専用のブラシやヘラでこすって細胞を採り、HPVに感染しているか調べる検査です。細胞診と同様に、医師による採取を行います。HPV検査が陽性だった場合はHPV検査を行った残りの検体を使って直ちに細胞診を行います(図2、トリアージ精検)。自己採取法は細胞が採取できていない場合が多く、精密検査の結果が不正確になる可能性がありますので実施を控えてください。

トリアージ精検ではHPV検査で残った検体を使いますので、新たに受診する必要はありません。

3)細胞診検査とHPV検査の違い

(1)細胞診検査とHPV検査の実施方法の違い

細胞診とHPV検査による検診の最も大きな違いは受診間隔です。HPV検査単独法では、HPV検査が陰性だった場合は受診間隔が5年となり、細胞診の受診間隔2年よりも検診を受ける頻度が少なくて済みます。

また、細胞診の対象者は20歳以上に対して、HPV検査単独法の対象者は30歳以上です。

現在HPV検査単独法が推奨されているのは住民検診のみで、厚生労働省の要件を満たす自治体のみで実施されています。お住まいの市区町村でHPV検査を受診できるかどうかは、自治体のホームページや広報等でお確かめください。

(2)細胞診検査とHPV検査で判明することの違い

これまでの子宮頸がん検診で実施されてきた細胞診は、図1の③CIN1/④CIN2/⑤CIN3/⑥子宮頸がんまでを発見し、経過観察してがんに進行する前に治療することを目的に実施されていました。

新しく始まるHPV検査を用いた子宮頸がん検診では、①HPV感染/②持続感染/③CIN1/④CIN2/⑤CIN3/⑥子宮頸がんまでを検出できます。これまでの細胞診より早い段階で、子宮頸がんにかかるリスクが高い人を発見することが可能です。

ただ、HPV検査が陽性になってから子宮頸がんに進行するには長い年数がかかるため、長期間の通院と検査が必要になります。一般的に半年から1年の間隔で通院する場合が多いです。HPV検査が陽性になっても、子宮頸がんまで進行する人は少数ですが、適切なタイミングで治療できるよう通院を続けることが重要です。

HPVの感染と無関係の子宮頸がん(頸部腺がんの一部)については細胞診やHPV検査による検診でも検出できません。

3.子宮頸がん検診の判定後の流れと精密検査

細胞診とHPV検査単独法による子宮頸がん検診では、図2のように検診の結果判定と精密検査が異なります。

図2 子宮頸がん検診(細胞診検査、HPV検査)の流れと検診結果の判定
図2 子宮頸がん検診(細胞診検査、HPV検査)の流れと検診結果の判定

1)細胞診検査の判定

(1)がんの疑いなし(精密検査不要)と判定された場合

「がんの疑いなし(精検不要)」と判定された場合、次回(2年後)のがん検診を受けてください。不正出血や月経が不規則などの症状があらわれた場合は、次回の検診を待つのではなく、すぐに医療機関を受診しましょう。

(2)がんの疑いあり(要精密検査)と判定された場合

「がんの疑いあり(要精検)」と判定された場合には、必ず精密検査を受けてください。子宮頸がんがあっても症状が出ないことがよくあります。「次回の検診まで待とう」、「症状がないから大丈夫」などと自己判断せず、必ず精密検査を受けてください。

2)細胞診検査の精密検査の方法

細胞診を用いたがん検診の精密検査は、コルポスコープ(ちつ拡大鏡)と組織診・HPV検査・細胞診などを組み合わせて行います。精密検査で前がん病変が見つかった時には、状態によって治療を行う場合もありますし、治療をせずに医療機関で経過観察になる場合もあります。治療や経過観察中で通院中であれば、婦人科への受診を続けてください。経過観察の人ががん検診を再開するのは経過観察終了後になりますので、医師に終了を確認してください。

(1)コルポスコープ検査と組織診検査

コルポスコープを使って子宮頸部を詳しく見ます。異常が疑われる部位の組織を採取して、がんやがんになる前の状態がないかどうかを診断します。

(2)HPV検査

子宮頸部から細胞を採取し、HPVに感染しているかどうかを調べる検査です。細胞診の判定結果がASC-US(意義不明な異型扁平へんぺい上皮細胞)だった場合にのみ、コルポスコープが必要かどうかを判断するために行われることがあります。

(3)細胞診検査

細胞診を半年ごとに繰り返して(異常がなければ3回、1.5年)様子をみる場合があります。1回で終わることはありません。また、コルポスコープと組織診を同時に行う場合もあります。

3)HPV検査単独法の判定

(1)精検不要と判定された場合

HPV検査が陰性のとき、「精検不要」という判定になります。HPVに感染していないため、今後5年間の子宮頸がんにかかるリスクは低いです。そのため、次回は5年後にがん検診を受けてください。HPV検査が陰性と判定されてから5年間に子宮頸がんが発見される確率は、細胞診が陰性と判定されてから2年間に子宮頸がんが発見される確率とほぼ同じです。

ただし、不正出血や月経が不規則などの症状があらわれた場合は、次回の検診を待つのではなく、すぐに医療機関を受診しましょう。

(2)要追跡精検と判定された場合

HPV検査が陽性だった場合には、全員HPV検査に用いた検体の残りを使って細胞診(トリアージ精検)を行います。2つの検査結果が出てから、本人に初めて結果が通知されます。

「要追跡精検」は、HPV検査は陽性(HPVに感染している状態)ですが、細胞診では子宮頸がんを疑うような細胞の変化は起きていない状態です。直ちに医療機関を受診する必要はありませんが、必ず1年後のHPV検査(追跡精検)を受けてください。追跡精検を受けるとHPVの一時的な感染なのか、持続感染なのかを判断することができます。持続感染に進行すると、HPV検査で陽性だった人は陰性の人に比べて子宮頸がんを発症するリスクが高くなりますので、忘れずに1年後のHPV検査(追跡精検)を受けてください。

なお、追跡精検は住民検診の枠組み内で受けられますので、個人で医療機関を受診する必要はありません。1年後に市区町村から受診の案内が届きます。

(3)要確定精検と判定された場合

「要確定精検」は、HPV検査が陽性、さらにトリアージ精検で前がん病変や子宮頸がんを疑うような細胞の変化が発見された状態です。直ちに指定された専門医療機関でコルポスコ―プと組織診査(確定精検)を受けてください。

4)HPV検査単独法の精密検査(追跡精検・確定精検)の方法

「要追跡精検」と判定された場合、1年後にHPV検査(追跡精検)を行います。

「要確定精検」と判定された場合、直ちにコルポスコープ(腟拡大鏡)と組織診を行います。検査内容は2)細胞診検査の精密検査の方法をご覧ください。

4.HPV陽性と判定された場合の注意点

1)日常生活の注意点

HPVは性交渉によって感染します。HPVはごくありふれたウイルスであり、一生涯で80~90%の男女がHPVに感染すると推測されています。

HPVは外陰部や肛門などコンドームでは防げない場所にも存在します。そのため、コンドームを使用しても、他の性感染症に比べると予防効果は低いです。HPVはごくありふれたウイルスですから、生涯HPVに感染しないようにすることはほぼ不可能です。それでも、性感染症の可能性を減らすためのさまざまな対策(セーファーセックス)を行うことが大切です。

一方で、日常生活で注意することは特にありません。会話、握手、食器の共用、洗濯、入浴などで感染することはありません。

一番大切なことは、がん検診の検診結果区分に従って検査を受けることです。「要追跡精検」と判定されたら自覚症状がなくても、必ず1年後の追跡精検を受診し、持続感染が起きているのか確認しましょう。「要確定精検」と判定されたら、直ちに専門医療機関で精密検査を受けましょう。

2)HPV感染の治療について

HPVを排除する薬剤は開発されていません。HPVワクチンはHPV感染を防ぐ効果がありますが、すでに感染しているHPVを排除することはできません。そのため、HPV陽性と判定されたら、がんを早期発見できるよう定められたスケジュールに従って検査を継続することが非常に大事です。

5.子宮頸がんの治療後と子宮の手術後の検診について

子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がんなどの悪性腫瘍で子宮を摘出した場合は、経過観察が終了しても、子宮頸部がないため検診の検査自体ができません。気になる症状がある場合には、検診を受けるのではなく、治療を担当した主治医にご相談ください。

前がん病変で子宮頸部の手術(円錐切除手術など)を行った場合は、詳しい検査のための通院が必要で、経過観察中はがん検診の対象になりません。いつ検診を再開してよいかは主治医とご相談ください。

子宮筋腫や子宮内膜症などの良性の病気で子宮全摘出術を受けた場合、その後は子宮頸がん検診の対象になりません。一方、子宮体部を摘出し子宮頸部を残す手術(外科治療)を行った場合分娩ぶんべん時の大出血による緊急手術など)は、残存子宮頸部から子宮頸がんが発生する可能性があり、検診の対象になります。

こちらのちらしでは、がん検診について知っていただきたいポイントを、コンパクトにまとめています。

<HPV検査単独法を実施する自治体担当者の方へ>

2024年4月より、厚生労働省の要件を満たす一部の自治体に限りHPV検査単独法も住民検診で実施することが可能になりました。国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部では受診者に印刷して配布するリーフレットの見本を2種類作成しました。

  • HPV検査単独法による子宮頸がん検診リーフレット(全員向け):検診対象となる方に、細胞診による検診との違いや子宮頸がん検診を受診する意義を理解していただくためのリーフレット
  • HPV検査単独法による子宮頸がん検診リーフレット(陽性者向け):HPV検査陽性かつ細胞診(トリアージ精検)で異常がない方に、検診結果の意味や一年後にHPV検査を受ける重要性を理解していただくためのリーフレット

詳細は下記のホームページを参照してください。

リーフレット利用申請フォームはこちらにあります。

こちらのちらしと動画では、働く世代の方に向けて、適切ながん検診の受け方とその内容について解説しています。

作成協力

こちらのページは、国立がん研究センター研究開発費「働く世代におけるがん検診の適切な情報提供に関する研究(2021-A-22)」の研究成果をもとに作成されました。

更新・確認日:2024年09月20日 [ 履歴 ]
履歴
2024年09月20日 HPV検査単独法の内容を追加、更新して、ちらし「子宮頸がん検診(HPV検査単独法)」を掲載しました。
2024年04月01日 ちらし「子宮頸がん検診」「がん検診の適切な受け方」を更新しました。
2023年12月25日 内容を更新しました。
2023年03月27日 「2.科学的根拠に基づく子宮頸がん検診」の「1)子宮頸がん検診の方法」の内容を更新しました。
2021年10月04日 「最新がん統計」にあわせて、(子宮頸がんに罹患する人の)女性で近年増加傾向にある年代を更新しました。
2019年09月02日 「子宮がん検診の勧め」「子宮がん検診Q&A」を統合し、内容を更新しました。
2012年01月20日 更新しました。
2004年05月17日 掲載しました。
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