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症状を知る/生活の工夫

アピアランスケア:がんの治療による外見の変化とケア

がんやがんの治療によって、脱毛や皮膚・爪の変化などで外見が変わることがあります。外見が変わると、仕事や学校、買い物に行くなどの普段の生活を送ることが難しいと感じる人もいます。アピアランスケアとは、外見が変わっても、安心して自分らしく生活を送ることができるよう支えるケアのことです。このページでは、がんの治療による外見の変化と、それに対するアピアランスケアについて紹介します。

1.アピアランスケアとは

アピアランスには「外見」という意味があります。アピアランスケアは、がんやがんの治療によって外見(見た目)が変わっても、心地よく生活を送ることができるように行われるものです。専門知識を持った医療者が行うこともあれば、自分や家族が適切な情報を得て行うものもあります。

がんの治療によっておこる外見の変化には、薬物療法や放射線治療による脱毛や皮膚の変化、手術(外科治療)によってできるきずなどがあります。

このような外見の変化によって、「自分らしくない」という思いを持ったり、「人前に出ることに消極的になる」「病気だということが周りに分かってしまう」という心配やつらさを感じたりする人もいます。そんな気持ちを抱いたときは、アピアランスケア(外見へのケア)を通して気持ちを楽にし、自分らしい生活や社会とのつながり、治療への意欲を保つことを目指せるとよいでしょう。

アピアランスケアは、性別や年齢に関わりなく、子どもから高齢者まで、がんやがんの治療によって外見が変わり、その人自身が必要だと感じたときに行います。外見が変わっても気にならないときには、アピアランスケアにこだわる必要はありません。

自分が受ける治療で起こる可能性がある外見の変化や対処方法、心配なことや不安なことなどについては、治療が始まる前に医師や看護師に相談しておくとよいでしょう。また、がん相談支援センターでも、アピアランスケアについて相談することができます。

子どもががんの治療を受ける家族の方へ

子どもががんの治療を受ける家族は、子どもが外見の変化をどう感じているのか、保育園や幼稚園、学校生活への影響など特に気がかりなこともあるでしょう。

外見の変化に関する心配や悩みは、子どもからも医療者やがん相談支援センターに相談することができますが、年齢や状況などによってはそれが難しいこともあります。子ども自身が相談できない時には、家族が子どもの気持ちを代弁することも考えてみましょう。必要に応じて、保育園/幼稚園や学校とも相談しながら、子どもへの接し方や周囲の友達への説明の仕方などを含めたケアの方法を考えていくことも大切です。

アピアランスケアに関するさらに詳しい情報は、「関連情報」をご覧ください。

アピアランスケアについて詳しい説明が掲載されています。
アピアランスケアの具体的な方法(髪、爪、肌、眉毛、まつ毛など)についてのリーフレットが掲載されています。
男性向けのアピアランスケアに関するガイドブックが掲載されています。
患者のご家族や親しい人、がんの子どもがいるご家族に向けて、サポートするときに気に留めておきたいことが紹介されています。

2.がんの治療による外見の変化とアピアランスケア

がんの治療による外見の変化は、一時的なものもあれば、そうでないものもあります。そして、起こる可能性がある変化も治療によりさまざまです。また、外見の変化による気持ちや生活への影響も人により違います。そのため、アピアランスケアに決められた正解はありません。一人ひとりの状況に合わせて工夫をすることが大切です。

ここからは、薬物療法や放射線治療によって起こることが多い変化(脱毛や皮膚や爪の変化)、手術によって起こる体の変化と対処方法について、概要を紹介していきます。

1)脱毛

薬物療法で使う薬(細胞障害性抗がん薬・分子標的薬)の種類によっては、髪の毛、眉毛やまつ毛、腕や足などの全身の毛が抜けることがあります。髪の毛の脱毛の程度は、治療で使う薬の種類によって、すべて抜ける場合もあれば、薄毛になる程度の場合もあるなどさまざまです。髪の毛は、薬物療法を始めてから2~3週間後に抜け始めます。多くの場合、治療が終わると再び生え始め、2~3カ月で数ミリ程度の長さに伸びてきます。

また、放射線治療では、照射した部位だけ脱毛が起こります。例えば、胸に放射線を当てた場合、胸毛は抜けますが髪の毛は抜けません。脱毛の程度は、放射線の強さ、当てる方向、体質などにより異なります。個人差がありますが、放射線治療を始めてから2~3週間後に脱毛が始まり、多くの場合、治療後3~6カ月くらいするとまた生えてきます。なお、頭部の放射線治療の場合、照射した放射線の量によっては髪の毛が生えてこない場合もあります。

薬物療法でも放射線治療でも、最初は柔らかく、くせのある毛が生えてきますが、数カ月経つと元の毛質に近い毛が生えてくることがほとんどです。また、人によっては再び毛が生えても毛量が減ることや毛が細くなることもあります。同じ治療でも、抜け方や生え方、またその時期は個人差があります。

髪の毛が脱毛したときの工夫

脱毛後は、ウィッグ(かつら)や帽子、スカーフなどを使ってカバーする人もいれば、そのままの姿で過ごす人もいます。髪の毛が抜けることが予想される治療を受けるときに、慌ててウィッグなどを準備する必要はありません。まずはウィッグや帽子を使いたいのかどうかを考えてみましょう。

治療前はウィッグや帽子は必要ないと考えていても脱毛が始まると気持ちが変わることや、あった方がよいと思っていても使わないこともあります。脱毛してから慌てないように、種類や値段、選び方などの情報を事前に集めておくとよいでしょう。

ウィッグの価格は数千円~数十万円まで幅があり、手頃な価格のものはインターネット等でも販売されています。高額であれば使う人に合った自然な感じになるというわけでは必ずしもありません。仕事や外出など使う場面や着用時間、通気性や重さ、つけ心地、デザインの好み、予算などを検討して選びましょう。

なお、ウィッグの購入費用の助成制度がある自治体もあります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口またはがん相談支援センターにお問い合わせください。

脱毛中・脱毛後の洗髪・ヘアケアの工夫については、関連情報をご覧ください。

眉毛・まつ毛が脱毛したときの工夫

薬物療法の種類によっては、髪の毛と同様に眉毛やまつ毛も脱毛します。眉毛が脱毛して薄くなったことが気になるときはアイブロウペンシルやパウダーで書き足す、まつ毛の脱毛にはアイシャドーやアイライナーなどで目元を際立たせることで対応できます。特別な道具でなくとも、一般的な化粧品を使うことでカバーできます。

まつ毛が抜けて眩しい、ゴミが入りやすいといったときはメガネを利用してもいいでしょう。フレームにデザインがあるメガネや、色味のあるメガネを使うと、眉毛やまつ毛が抜けていることが目立たなくなります。

証明書等の写真について

運転免許証やパスポート、各種福祉手帳などの写真撮影の際に、がんの治療によって髪の毛が脱毛している人が帽子等を着用することが認められました。詳しくは、お住まいの地域の担当部署にご確認ください。担当部署が分からない場合は、がん相談支援センターで相談することもできます。

証明書の担当部署の例

  • 運転免許証:運転免許試験場、運転免許センター、警察署 等
  • パスポート:都道府県の旅券事務所、市役所・町村役場の窓口 等
  • 各種福祉手帳:市区町村の担当窓口 等
髪やウィッグ、爪や肌、眉毛やまつ毛への影響や対処法がまとめられているリーフレットが紹介されています。
男性向けのアピアランスケアに関するガイドブックが掲載されています。
髪の毛の脱毛、眉の描き方について詳しく説明したリーフレットが紹介されています。
薬物療法や放射線治療による脱毛に対する具体的なケア方法が紹介されています。
外見の変化と同時に起こることがあるさまざまな症状への対処については、以下のページもご覧ください。

2)皮膚や爪の変化

薬物療法や放射線治療によって、皮膚が黒ずむなどの色素沈着がおこることがあります。薬物療法の種類によっては、ざ瘡様皮疹そうようひしん(にきびのようなぶつぶつができる)や手足症候群(手のひらや足の裏の一部が赤くなったり腫れたりする)などになる場合があります。そのため、これらの症状が軽いうちまたは出る前からケアすることが大切です。

薬物療法や放射線治療を受けたあとは、皮膚を清潔に保つこと、保湿すること、傷をつくらないように気を付けること、紫外線によるダメージを抑えるなどして保護することが大切です。皮膚を洗う際はこすりすぎて肌に負担をかけないように、石けんやボディーソープなどを泡立てて丁寧に洗いましょう。そして、保湿はいつもよりしっかり行うよう心がけるのがよいでしょう。また、日焼け止めを塗るなどして、無防備に日焼けをしないよう気を付けましょう。

なお、ざ瘡様皮疹や手足症候群の症状があらわれたときには、皮膚科の医師の診察を受け、ステロイド外用薬を使うなどの治療が必要になることもあります。このような場合は、医療者からの指示を守りましょう。薬物療法で使う薬の種類によっては、爪が変色する・変形する・もろくなるなどのさまざまな変化が起こることがあります。皮膚や爪の変化について気になることがあるときや変化がみられたとき、何らかの症状がある場合のケアの方法などで分からないことがあるときにはまず医師や看護師に相談しましょう。

皮膚が変化したときの工夫

皮膚の黒ずみが気になるときには、化粧品でカバーすることができます。市販のファンデーションや、気になる箇所を部分的にカバーするコンシーラーなどと呼ばれる製品を試してみるとよいでしょう。あざややけどを隠すための化粧品も市販されています。

爪が変化したときの工夫

爪の変色が気になるときには、市販のネイルカラー(マニキュア)を塗ってカバーする方法があります。ネイルカラーは、市販されているものを使用してかまいません。なお、水溶性やノンアセトンなどの製品などの製品がよいとする情報もありますが、それがよいという明らかな科学的根拠は今のところありません。ただし、ジェルネイルは着脱時に爪を削ることが多く、爪に負担をかけやすいこと、長期間着けることで爪の下に炎症が起こることもあるため、勧められていません。

爪がもろく、薄くなってきたときは、爪切りよりも爪やすりを使うと長さを整えやすいです。 乾燥すると亀裂が入りやすくなるので、爪の保湿も心がけましょう。爪が浮いてきたり、亀裂が入ったときは、絆創膏等でとめておくとよいでしょう。

髪やウィッグ、爪や肌、眉毛やまつ毛への影響や対処法がまとめられているリーフレットが紹介されています。
薬物療法による皮膚障害に対する具体的な対処法が紹介されています。
外見の変化と同時に起こることがある、さまざまな症状への対処については、以下のページもご覧ください。

3)手術を受けたことによるからだの変化

手術の影響により、顔や首など、目立つところにきず跡ができることもあります。時間が経つと、創は徐々に目立たなくなることが多いです。創は必ずカバーしなければならないわけではありませんが、気になるときは、衣服や眼帯、大判の絆創膏、医療用のテープなどを使ってカバーすることもできます。自分が安心して過ごせる方法を医療者と相談するとよいでしょう。

乳がんでの乳房切除や、舌がん・唾液腺がんといった頭頸部がんなどの手術では、外見が大きく変化する場合があります。このような場合には、形成手術などの治療が行われることがあります。これらのがんの治療を受けるときには、医師や看護師などの医療者に治療後の変化や対応について事前によく相談しておきましょう。がん相談支援センターの相談員に相談することもできます。

3.アピアランスケアに関する相談先

がんやがんの治療に伴う外見の変化は、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)に大きな影響を与えることがあり、アピアランスケアは大切な支持療法(がんそのものに伴う症状や、治療による副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療、およびケア)のひとつです。アピアランスケアについてもっと詳しく知りたい、相談したいと思ったときには、まず医師や看護師などの医療者や、お近くのがん相談支援センターにご相談ください。

また、同じ経験を持つ患者さんの話を聞くことで気持ちが軽くなったり、体験者だからこそ分かる療養生活を快適に送る知恵を得られることがあります。担当医や専門家からの情報とともに上手に利用するのもよいでしょう。患者会に関する情報が欲しいときにも、がん相談支援センターで相談することができます。

がんの治療を受けている人のウィッグ購入や乳がんの手術を受けた人の補整下着購入に対して助成制度を持つ自治体もあります。助成制度については、お住まいの地域の市区町村の窓口やがん相談支援センターで確認することができます。

多くの場合、アピアランスケアには特別な製品だけが必要なわけではなく、身近なものを工夫して用いることもできます。しかし、インターネット等の情報では、「医療用」「がん患者用」などと称することで高額な製品に誘導する例も見受けられますので、ご注意ください。製品の購入を検討していて気になること、心配なことがあるときは、実際に購入する前に気軽に医療者やがん相談支援センターの相談員に相談しましょう。

4.参考文献

  1. 日本サポーティブケア学会編.がん治療におけるアピアランスケアガイドライン.2021年版,金原出版.
  2. 国立がん研究センター研究開発費がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班編.がん患者に対するアピアランスケアの手引き2016年版.東京,金原出版,2016
  3. 野澤桂子・藤間勝子編.臨床で活かすがん患者のアピアランスケア.東京,南山堂,2017

作成協力

更新・確認日:2024年03月18日 [ 履歴 ]
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2024年03月18日 掲載しました。
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