小児がんは、手術治療、薬物療法、放射線治療、造血幹細胞移植などを組み合わせて治療します。小児がんは、患者の数は少ないものの、種類が多いため、症例数の多い病院で治療を受けることが勧められます。治療後には、体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するため、検査が行われます。治療が終わった後も入院を続けて経過を観察することもあります。
1.治療にあたって
治療を始めるにあたって、これまでの生活を変化させる必要があるかもしれません。これからどのように治療に向き合っていったらいいのか。子ども自身は保育所・幼稚園や学校のこと、友だちのことなど、ご家族はきょうだいや家のこと、仕事のことなど、悩みはつきません。子どももご家族も気持ちが落ち込んでしまうのは無理もありません。
しかし、あまり思い詰めてしまっては心にも体にもよくありません。自分だけで抱え込まず、周りの人の力も借りながら、がんと向き合い、現実的かつ具体的に考えて行動していきましょう。大切なのは、「信頼できる情報を集めること」と「病気に対する心構えを決めること」です。
まずは、「がんの診療の流れ」を確認しながら情報を集め、治療法のこと、病院選びのこと、これまでの生活との兼ね合いなど、子ども自身やご家族がどうしたいか、何を大事にしたいかを一つ一つ考えていきましょう。
2.小児がんの診療の流れ
この図は、がんの「受診」から「長期フォローアップ」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。子どもやご家族が、その人らしく過ごすためにお役立てください。
-
がんの疑い
「⾵邪のような症状が治らない」「顔⾊が悪い」「いつもと様⼦が違う」など子どもの体調がおかしいなと感じたら、まず、かかりつけの小児科を受診しましょう。
-
受診
受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
-
検査・診断
担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。検査が続くことや結果が出るまで時間がかかることもあります。
-
治療法の選択
がんや体の状態に合わせて、担当医が治療方針を説明します。悩みがあるときは、担当医や周りの方と話し合い、子どもの希望に沿う⽅法を⾒つけましょう。
-
治療
治療中に気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。困ったことやつらいこと、小さなことでも構いません。よい解決方法が見つかるかもしれません。子どもにとって、よりよい⽅法を⼀緒に考えていきましょう。
-
長期フォローアップ
治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、治療が終わった後も通院します。検査を行うこともあります。治療が終わって長い時間が経過してからあらわれる副作⽤や成⻑への影響に対応するために、⻑期のフォローアップを⾏います。
がんの進⾏の仕⽅は、がんの性質やはじめにできた場所によって異なります。再発は、はじめにがんが発⽣した場所で起こることもあれば、体の別の場所に転移して起こることもあります。進⾏・再発あるいは転移した⼩児がんは、がんの広がり、これまでの治療内容と効果、現在の症状などを考慮して、治療やその後のケアを検討していきます。
これまで受けてきた治療の効果がみられず、治癒を望むことが難しいと医師が判断した場合、その後の治療や療養について、子どもやご家族とともに話し合いながら決めていきます。子どもの尊厳を守り、できるだけ子どもとご家族の希望に沿うように、よりよい過ごし⽅を考えていきます。
あなたの近くに信頼できる誰か、頼りになる人はいますか。⼩児がん拠点病院やがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでは、がんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談を受け付けています。その病院にかかっていなくても、誰でも無料で利用できます。また、対面だけでなく、電話などでも相談することができるので、わからないことや困ったことがあったら気軽に連絡してみましょう。
作成協力