1.晩期合併症
⼩児がんは治癒する病になってきました。しかし、子どもは発育途中であることなどから、成⻑や時間の経過に伴って、がん(腫瘍)そのものや、薬物療法、放射線治療など治療の影響によって合併症が起こることがあります。これを「晩期合併症(晩期障害)」といいます。晩期合併症は、⼩児や若年のがんで特に問題となる現象です(表1)。
主な晩期合併症には、成⻑発達の異常(内分泌異常を含む)【⾝⻑発育障害、無⽉経、不妊、肥満、やせ、糖尿病】、中枢神経系の異常【⽩質脳症、てんかん、学習障害】、その他の臓器異常【⼼機能異常、呼吸機能異常、肝機能障害、肝炎、免疫機能低下】、続発腫瘍(⼆次がん)【⽩⾎病、脳腫瘍、甲状腺がん、その他のがん】などがあります。
晩期合併症の多くは、がんの種類、治療の内容、その治療を受けたときの年齢などに関係します。ほとんどの晩期合併症は、年齢に伴って発症しやすくなり、治療終了後何⼗年も経過してから症状があらわれることもあります。
成⻑・発達への影響 | ⾝⻑の伸び、⾻格・筋・軟部組織、知能・認知⼒、⼼理的・社会的成熟、性的成熟 |
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⽣殖機能への影響 | 妊娠可能か、⼦孫への影響 |
臓器機能への影響 | ⼼機能、呼吸機能、腎機能、内分泌機能、消化管機能、視⼒・聴⼒ |
⼆次がん(腫瘍) | 良性腫瘍、悪性腫瘍 |
2.長期フォローアップ
晩期合併症に適切に対処するためには、定期的な診察と検査による⻑期間のフォローアップが必要です。診察で異常がみられた場合には各診療科の医師と連携して治療が⾏われます。
⼩児がんは、患者である子ども⾃⾝が治療の内容を理解するには困難であることが多いです。しかし、晩期合併症は成長発達の過程においてあらわれるため、適切なタイミングでの告知やアドバイスが必要です。理解力に応じた⾔葉を使って繰り返し説明した⽅がよい場合もあります。治療の影響については分かってきており、晩期合併症への予防や治療も進歩しています。子ども自身が将来に対して必要以上に心配することのないように、正確な知識や情報を得ることが大切です。
まずは、治療を受けた病院の担当医やがん相談⽀援センターなどに、⻑期フォローアップをどこで受けたらよいか相談しましょう。
⼩児がん患者を継続してケアする医療体制が整えられつつあります。⼩児がんの診療を⾏っている医療機関の中に⻑期フォローアップ外来が設けられたり、⻑期フォローアップ拠点病院などもできはじめたりしています。また、将来的に患者本人がいつでも⾃⾝の治療の記録を⼊⼿できるような仕組み作りも進められているところです。
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