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がんの子どもの療養

入院治療後の生活

1.退院後の生活

退院後は、すべての治療を終えて経過を観察するのみの場合や、通院して薬物療法や放射線治療を継続する場合があります。いずれにしても、可能な範囲で入院前と同じような⽣活を送ることが⽬標になります。退院が決まると、喜びと同時に身近にいた担当医や看護師がいない家庭での⽣活に、不安を覚えることがあります。まずは、家庭での⽣活に慣れるようにしていきましょう。

1)退院後の⽣活の注意について

がん(腫瘍)の種類や治療の内容によって、退院後の⽣活の注意点は異なります。わからないことはそのままにしないで、担当医に聞きましょう。また保育所・幼稚園、学校に通える時期や、本人が楽しみにしていることがあれば、それができるようになる時期などを確認しておきましょう。

2)感染予防について

退院後の⽣活では、感染を予防することが重要です。特に⾎液のがんや薬物療法の後は、免疫機能が低下することによって、肺炎などの感染が起こりやすくなります。そのため、食事の前や排せつ後の手洗い、毎⾷後の歯みがき、排便後はお尻を洗うなど、体をきれいにしておきましょう。引っかき傷をつくらないように⽖を短めに切っておくことも大切です。また、家から出るときはマスクをつけ、戻ったらうがいをさせましょう。普段、遊んでいた公園や店などへ出掛けてもよいか、外出の範囲について担当医に聞いておきましょう。

予防接種は、受けた治療によってはしばらくの間、接種できないことがあります。予防接種の予定があるときは、接種してよいかを担当医に確認しましょう。また、学校などで集団生活を送る際は、⽔痘すいとう(⽔ぼうそう)や⿇疹ましん(はしか)などの流⾏の情報があった場合、すぐに連絡してもらうよう、前もって担任や養護教諭に伝えておきましょう。

インフルエンザ感染症に対しては、 家庭内での感染を防ぐために、家族も予防接種を受けましょう。特に、治療中や治療終了後1年以内、同種造⾎幹細胞移植後の免疫抑制剤(シクロスポリンやタクロリムスなど)を内服中のときは、家族も予防接種を受け、感染を予防しましょう。

3)復学について

学校に戻るにあたって

具体的な準備は、退院の⾒通しが立ったときから始まりますが、入院治療中も学校とつながりを続け、治療の⾒通しや今後の予定について、担任や養護教諭などと連絡をとっておきましょう。

学校に戻るまでには、いろいろな準備があります。退院後も定期受診や治療の継続によって、学校を遅刻したり早退したりすることになります。また、治療に伴う体⼒や抵抗⼒の低下がある場合には、登校や運動の制限が必要なこともあります。治療の影響で、脱⽑など外⾒の変化が生じることもあります。このような状況に、本人が気おくれせず学校生活を送れるよう、学習の遅れや友達との関係なども含めて少しずつ準備していきましょう。

まずは、体の状態や学習の状況、本人の思いなどを踏まえて、学校に戻るための課題を明らかにします。その上で、学校と調整を図ることになります。本人の希望を聞きながら、いつ、どのように復学するか、家族、担当医、看護師、院内学級の教師、学校の担任、養護教諭、管理職の教師(校⻑、教頭)、地域の教育委員会などと話し合って決めていきます。医療機関によっては連絡の仕⽅や対応について、担当者がいる場合もあります。

学校に戻るとき

担当医からの服薬や感染予防行動などの指⽰に応じて、⾃宅や学校で気をつけることについて話しておきましょう。運動などが制限される場合には、必要に応じて担当医に診断書を発⾏してもらい、学校に提出します。自分なりにできること、支援を受けながらできることについて、本⼈を交えた話し合いの機会をもてるよう、学校に申し入れるとよいでしょう。

学校に戻ってから

学校に戻ったすぐは、友達と同じようにすべての活動に参加させるのではなく、できることから徐々に慣らしていくようにします。活動の範囲や普段の過ごし⽅などで気になったことは、担任や養護教諭、学校医などに相談しましょう。

引っ越しなど⽣活環境の変化への対応

家族の仕事の都合や、進学や就職などにより、引っ越しをすることがあるかもしれません。小児がんは、治療後数年に症状があらわれる晩期合併症の可能性があるため、がんが治ってからも定期的に診察や検査を受ける必要があります。引っ越しをするときには、担当医に相談して、がんのことや、これまでに受けた治療についても説明を受け、引っ越し先の病院でも情報を引き継いでもらうようにしましょう。

通院の間隔と検査

治療後の通院の間隔は、病気の種類、治療の内容とその効果、合併症や副作⽤の内容、治療後の回復の程度など、状態によって異なるので、担当医によく確認しておきましょう。⼀般的な通院の間隔は、最初は1週間から2週間ごと、その後、1カ⽉ごと、2カ⽉ごとと延ばしていきます。継続した治療を行わない場合、それ以降は3カ⽉から6カ⽉ごとに通院します。

問診や診察に続いて、検査としては、⾎液検査、尿検査のほか、超⾳波(エコー)やX線、CT、MRIなどの画像検査が⾏われます。症状や検査の結果によっては、⾻髄検査、⾻シンチグラフィーの検査が⾏われることもあります。

2.将来に向けて

医学の進歩に伴って、⼩児がんの治癒率は⾶躍的に向上してきました。現在、20歳代の約180⼈に1⼈が⼩児がん経験者であるといわれています。

治癒率の変化は最近50年ほどのことであり、⼩児がん経験者の成⻑過程での状況や、⽣活習慣病を発症する年齢になった時点での治療によるリスクなどについては、データが蓄積されている途中です。不安なことがある場合には、治療時の経験だけで判断せず、担当医に相談しましょう。

1)治療の概要を知っておきましょう

⼩児がんを経験した人は、治療が終わった後も必ず定期健診を受けてください。治療後にあらわれる合併症に対しても、早期発⾒、早期治療が⼤切です。詳しくは「晩期合併症/⻑期フォローアップ」をお読みください。

また、⾃分がいつ頃どんな治療を受けたか、具体的な情報を知っておきましょう。⻭科や内科など、ほかの科で治療を受けるときにも、⼩児がんの治療を経験していることを担当医に話し、必要に応じてこれまでの治療の内容などを提出できるよう用意しておきましょう。

2)健康管理について

体質や治療の内容によって異なりますが、さまざまな病気へのリスクが高いことを想定して、普段から健康管理に気を配るようにしましょう。バランスのよい⾷事を心がけ、感染を予防して体調を崩さないようにしましょう。また、喫煙や飲酒可能な年齢になっても、喫煙は避け、お酒も適度に楽しむ程度にとどめましょう。

3)周りの⼈に説明できるように

⾃分が経験した⼩児がんについて、周りの⼈に話したいと思う⼈もいれば、話したくないと思う⼈もいます。その⼀⽅で⼩児がんにかかわらずどんな⼈にも、学校や就職先、公的機関などにおいては、周りの⼈や担当者に、⾃分の置かれている状況や経験したことを説明した⽅がよい場⾯が起こりえます。

⼈は他者の⾔動について、原因がわからないことには不安を持ちますが、原因がわかれば、その経験を分かち合いたいという気持ちもあります。最善の⽅法を選択するにあたっては、周りの人に説明をすることが大事になることもあります。そのため、病気の経験や今の状況を、必要に応じて適切に説明できるようにしておきましょう。

4)⾃分らしく⽣きるということ

社会的な⾃⽴は、その⼈の状況や置かれている環境によって変化します。病気を経験したことで、親や周りの⼈に気を使い過ぎることのないよう、『⾃分らしい⾃⽴』を焦らずゆっくり考えましょう。

⼩児がんを経験した⼈同⼠が出会える場に参加して、ほかの⼈の経験談を聞いたり、家族以外に相談できる窓⼝を知っておいたりすると、自立の際に役立つ場合もあるでしょう。進路や経済的なことで困ったときには、公的機関の⽀援制度や社会資源を利⽤しましょう。

3.生活と療養のQ&A

  • Q1治療を終えた後に、親の仕事の都合で引っ越しをすることになりました。何かあったときにはどうすればよいでしょうか?

    A1
    担当医に相談して、引っ越し先の病院に診療情報を引き継いでもらいましょう。親の仕事の都合以外にも、進学や就職などにより、引っ越しがあるかもしれません。小児がんの場合、治療後数年たってから症状があらわれる晩期合併症などの問題があるため、がんが治ってからも定期的に診察や検査を受ける必要があります。引っ越しをするときには、担当医に相談して、がんのことや、これまでに受けた治療についても説明を受け、引っ越し先の病院でも情報を引き継いでもらうようにしましょう。
  • Q2娘は小さいころにがんの治療を行いましたが、よく覚えていないようです。がんの治療を行っていたことを話した方がよいでしょうか?

    A2
    子どもが自分の病気を理解していることは重要です。幼いときにがんになった子どもの中には、治療の記憶があまり残っていない場合があります。しかし、がんが治っていても定期的な検査が必要であるため、自分の病気を理解していることは重要です。子どもから尋ねてきたら、担当医にも相談して、病名を含めて説明するとよいでしょう。その際には、「小さいころに病気になったけれど、現在は克服していること」、「今後も定期的な受診を続ける必要があること」を話しましょう。
  • Q3小児がんの子どもと家族の療養生活におけるケアを支援してくれるところはありませんか?

    A3

    小児がん治療をサポートする専門家たちに相談しましょう。子どもががん治療や療養生活を送るうえでは、治療以外にもさまざまな悩みや問題が生じてきます。そのためには、医療関係者をはじめとして福祉、教育、行政、ボランティアなど、患者・家族を精神的・経済的にサポートする多方面からの協力が不可欠です。

    医療機関によっては、小児がんを支援するための「小児看護専門看護師」などの専門職がいる場合があります。担当医や看護師に確認してみましょう。いない場合にも、担当医や看護師、がん相談支援センターのスタッフが相談に応じますので、困ったことがあれば遠慮しないで相談しましょう。

    小児看護専門看護師は、子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他のスタッフと連携して水準の高い看護を提供する看護師です。小児がんの治療の過程で出会う困難なことや悩みについて、担当医や看護師、スタッフと協力しながら子どもと家族の療養生活を支援します。

作成協力

更新・確認日:2023年03月10日 [ 履歴 ]
履歴
2023年03月10日 タイトルを「入院治療後の生活」に変更しました。
2021年12月24日 全体の内容を更新し、タイトルを「がんの子どの入院治療後の生活」として、ウェブページで掲載しました。
2021年07月01日 小児がん情報サービスから移動し、PDFで公開しました。
2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、「退院後の生活」「将来への不安について」「生活と療養のQ&A」を小児がん情報サービスに掲載しました。
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