1.禁煙治療
禁煙には多くの効果があります。しかし、たばこには依存性があり、禁煙するためには専門的な支援が必要です。毎年、喫煙者の約3分の1が禁煙を試みていますが、ほとんどの人が自力で行っているため、1年以上の禁煙に成功できる人はわずか1~3%であるという報告もあります。
日本では、要件*を満たす場合は、禁煙治療は保険診療で受けることができます。未成年者や若年の喫煙者、加熱式たばこを使用している人も保険診療で禁煙治療を受けることができます。なお、低年齢からの喫煙は依存症になりやすく、禁煙による将来の疾病予防の効果が大きいと期待されます。そのため、35歳未満は、喫煙本数や喫煙年数に関わらず治療を受けることができます。
禁煙治療は12週間が基本で、その間に医師の診察を5回受けます(図1)。健康保険の自己負担が3割の場合、5回の診療の費用は1万3千円~2万円程度で、治療期間中たばこを1日1箱ずつ吸い続ける金額よりも安くなります。また禁煙に成功すれば、これ以降たばこ代もかからなくなります。
- ①ニコチン依存症のスクリーニングテストで、ニコチン依存症と診断されること
- ②35歳以上では、喫煙指数要件(1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上)を満たすこと
- ③直ちに禁煙を希望すること
たばこ依存症の人が確実に禁煙するためには、禁煙にあたっての問題点の把握とアドバイスを受けることと、禁煙治療薬を使った薬物療法による治療が効果的です。禁煙治療で、5回の診察すべてを受けた人は、治療終了時で約75%、治療終了9カ月後でも約50%の人が禁煙に成功しています。
※1加熱式たばこのみの使用者で、呼気一酸化炭素濃度の上昇がみられなかった喫煙者については、再診での呼気一酸化炭素濃度測定が省略できます
※2治療を受ける人が同意すれば、初回対面から5回目(再診4)までの診療代を、初回に一括して支払う仕組みも導入されました
再診1~4については、情報通信機器を用いた遠隔治療(オンライン診療)を選択することもできます。また、初回診療についても、日常的な診療や診療録等によって病歴や健康状態が把握できるかかりつけ医などの場合は、情報通信機器を用いた遠隔治療(オンライン診療)も可能となっています。また、デジタル機器を使った禁煙治療用アプリおよびCOチェッカーも保険診療として処方されるようになるなど、禁煙治療を受けやすく、成功しやすくする仕組みも取り入れられてきました。
2.参考資料
- 厚生労働省ウェブサイト.喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書;2016年(閲覧日2022年8月25日)https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省ウェブサイト.たばこと健康に関する情報ページ(閲覧日2022年8月25日)https://www.mhlw.go.jp/
- 日本循環器学会 禁煙推進委員会ウェブサイト.禁煙治療のための標準手順書 第8.1版;2021年(閲覧日2022年8月25日)http://j-circ.or.jp/kinen/