1.禁煙による健康への効果
禁煙には、健康上のメリットが多くあります。短いものでは、禁煙してから20分以内に健康上の好ましい変化が現れます。また、長期的な健康被害の可能性も大幅に下がります(表1)。
がんについては、禁煙してから10年後には、肺がんのリスクが喫煙者に比べて約半分に下がり、口腔がん、咽喉頭のがん、食道がん、膀胱がん、子宮頸がん、膵臓がんのリスクも下がることが報告されています。
がん以外の病気では、禁煙してから1年程度で咳や息切れが減り、狭心症や心筋梗塞などの病気のリスクが大幅に下がることが示されています。
表1 禁煙による健康へのメリット ファクトシート
A. すべての喫煙者にもたらされる禁煙の効果(禁煙後すぐ、また長期的に現れる健康へのメリット)
禁煙してからの 経過時間 |
健康上の好ましい変化 |
---|---|
20分以内 | 心拍数と血圧が低下する |
12時間 | 血中一酸化炭素値が低下し正常値になる |
2-12週間 | 血液循環が改善し肺機能が高まる |
1-9カ月 | 咳や息切れが減る |
1年 | 冠動脈性心疾患のリスクが喫煙者の約半分に低下する |
5年 | 禁煙後5-15年で脳卒中のリスクが非喫煙者と同じになる |
10年 | 肺がんのリスクが喫煙者に比べて約半分に低下し、 口腔、咽喉頭、食道、膀胱、子宮頸部、膵臓がんの リスクも低下する |
15年 | 冠動脈性心疾患のリスクが非喫煙者と同じになる |
B. 全年齢層ですでに喫煙関連の健康問題が生じている人にもたらされるメリット(それでも禁煙のメリットはある)
禁煙の時期 | 喫煙を続けている人と比較したメリット |
---|---|
30歳頃 | 寿命が約10年長くなる |
40歳頃 | 寿命が9年長くなる |
50歳頃 | 寿命が6年長くなる |
60歳頃 | 寿命が3年長くなる |
生命に関わる 疾患の発症後 |
心臓発作の発症後に禁煙すれば、 次の心臓発作が起きる可能性を50%低下させるなど、 迅速な効果がある |
C. 禁煙によって、呼吸器疾患(喘息など)や中耳炎など、子どもの受動喫煙に関連する多くの病気の過度のリスクを減らすことができる
D. 禁煙によって、性的不全、不妊、早産、低出生体重児、流産の可能性が低下する
World Health Organization. A Guide for tobacco users to quit ; 2014. より作成
一方で喫煙者は、生涯たばこを吸わない人より、10年程度余命が短くなるという報告があります。ほかにも、喫煙によって日常生活での活動量が低下したり、認知症になるリスクが高まったりすると考えられています。
ただし、35歳未満で禁煙すれば、たばこが原因で亡くなるリスクが下がることも報告されています。禁煙によって健康に長生きできる可能性が高まるのです。また、禁煙は、喫煙している本人だけでなく、受動喫煙による周りの人の健康への影響も減らすことができます。
日本では、保険診療で禁煙治療を受けることができます。詳細は「禁煙治療」をご覧ください。
2.参考資料
- 厚生労働省ウェブサイト.喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書;2016年(閲覧日2022年8月25日)https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省ウェブサイト.たばこと健康に関する情報ページ(閲覧日2022年8月25日)https://www.mhlw.go.jp/
- World Health Organization. A Guide for tobacco users to quit ; 2014(閲覧日2022年8月25日)https://www.who.int/