このページには、がんが再発した患者さんの体験談をもとにした、治療の選択にまつわる手記を掲載しています。たくさんの方々のさまざまな向き合い方を通して、今度はあなた自身の向き合い方を見つけてみてください。
痛みの専門治療で気持ちも立て直す
胃がんが再発して、しばらくたったころから痛みが出てきました。主治医に伝えて痛み止めの薬が処方されたのですが、薬をのんでも痛みはひどくなるばかりでした。夜も眠れないくらいつらくなったとき、思い切って緩和ケア外来を受診したところ、麻薬系鎮痛薬を処方され、痛みはずっと楽になって、夜もぐっすり眠ることができるようになりました。このことで主治医がすべてを知っているわけではなく、よく知らないこともあるのだと知りました。
痛みがひどかったころは、外出もままならなかったですし、悪いことばかり考えてしまいひどい精神状態でしたが、今は痛みのコントロールができているので、好きな映画を見にいくこともできますし、気持ちも明るくなりました。
がん診療連携拠点病院には必ず、緩和ケア外来や緩和ケアチームがあります。痛みは我慢しないで、早い段階から専門の医師に診てもらうことを、同じ患者として皆さんにも勧めたいです。緩和ケアは最期に受診するところではなく、少しでも快適に生活していくために必要な治療をしているところなんです。
(北海道、49歳、女性)
臨床試験に参加した私の体験
腎臓がんが再発して、インターフェロンで対応していたが、次第にがんが大きくなり、担当医から臨床試験への参加の話があった。当時、腎臓がんに対しては唯一インターフェロンしか保険適用はなく、抗がん剤は効かないといわれていた。欧米で認可されている分子標的剤への臨床試験参加の話であったが、担当医およびコーディネーターの方から効果および副作用につき、詳細な説明を受けた。それを踏まえて、自らインターネットで欧米の状況等情報を集め、さらに担当医およびコーディネーターの方と相談した上で、最終的には自ら判断をし、臨床試験に参加した。ほかに治療方法がない中での臨床試験への参加であったが、自ら調べたものの、治療効果や副作用の不安はあった。欧米での臨床試験ほどの効果はあるのか、副作用はどれほどのものなのか、心配は尽きなかった。やはり、のみ始めてしばらくして、想像していたより大きな副作用が生じた。医師から明確に説明されていなかった副作用も出てきた。しかしながら、それらも時間の経過とともに何とか対応できるようになった。効果は、のみ始めて3年間がんは特に小さくなっていないが、日常生活を過ごすのは問題ない。自分にとっては、臨床試験に参加したのは幸運ではあったが、医者からの情報提供、相談できる環境により、参加できたと考えている。
(東京都、54歳、男性)
藁にもすがる思いでサプリメントを使用
私も、がんに効くとして日本ではとてもポピュラーだったサプリメントを利用したことがあります。しかしながら、当該商品に添付されていた効能書(こうのうがき)や関連図書を見ても、がんに効くという科学的な根拠は皆無に等しい状態でした。さらに、信頼できる図書によると、当該サプリメントは、害はあっても効能はないという分析でした。まさに「藁(わら)にもすがる」思いで利用したのでしたが、結局、一度も効果を実感したことはありませんでした。
案の定、一時はとても有名だったこのサプリメントやその宣伝のための関連図書は、違法行為として取り締まりが強化されたせいか、最近は見かけることはなくなりました。
(東京都、58歳、男性)
十分説明されても、覚えていなかった
医療のボランティアをしていたこともあって、自分が先生から手術前の説明を聞くときに、後でボランティアをするときに役に立つだろうと、先生に頼んで、医師からの説明の内容を録音させてもらいました。
手術前のインフォームドコンセントもとても理解しやすく丁寧だったので私も納得して手術を受けました。それなのに術後ベッドにいると痛みや不快感などで「こんなこと聞いてなかった!!」「どうして言ってくれなかったの?」など不信感でいっぱいになりました。そんなとき、録音テープを聞き直してみると、担当医からわかりやすくしっかりと説明されていたのです。その後何度も何度もテープを聞きながら自分の状態を確認しながら療養しました。そして自分の状態を受け入れることができました。
自分は冷静なつもりでいましたが、実際には、聞けていなかったり、覚えていない、聞いたつもりでも理解していないということが本当にあるんだなあと思いました。
(広島県、59歳、女性)
自分に適した治療法の選択は担当医との対話から
肺機能を維持して肺がんの手術が終わったころ、これまでのように山歩きもできそうと、有頂天でした。しかし、浸潤(しんじゅん)などのため抗がん剤治療の薬を組み合わせる段階で、肺機能の維持にあれほどこだわっていたのに、「脱毛が少ない、値段が半分」を理由に間質性肺炎(かんしつせいはいえん)のリスクの高い組み合わせを選んでしまいました。先生が、点滴直前に間質性肺炎のことを詳しく話してくれました。「いまの状態を維持したくて、追加の抗がん剤治療を受けるのではなかったのか。間質性肺炎の危険性のある組み合わせなどもってのほか」とうかがい、慌てました。懸命に別の選択肢を探しました。そして間に合いました。
「脱毛のこと」「価格のこと」は、一過性の問題で時間が解決してくれますが、間質性肺炎は逆戻りのない症状、いったん発症すれば取り返しがつきません。この関係を急場で的確に気付かせてくれた先生に本当に感謝しています。
治療を始めてある程度進むと、目的や動機があいまいになることがあります。病状が変化したり、治療法が変わるときなどは緊張しそれなりに対応できたとしても、自分がなぜそれを選ぶのかを、自分に問い続けることが大事だと思います。そして日ごろから自分の気持ちを担当医に率直に伝える努力の継続が、いざというときに役立つと感じました。
(群馬県、69歳、男性)
セカンドオピニオンで深まった主治医への信頼
再発がんの治療のために抗がん剤治療を受けていたとき、初発のときは6クール行った治療を、主治医は4クールで終わりにしようと言い出しました。私は6クール以上やるべきだと思っていたので納得できず、セカンドオピニオンを受けることにしました。紹介状に加えて血液検査データやCT画像、私のがん細胞の病理標本まで用意してもらい、静岡と東京の病院へ母と一泊旅行で出掛けました。
2つの病院でそれぞれの観点から意見を聞いて、私は4クールで治療を終えることに納得しました。納得しないまま4クールで止めるのと、納得して4クールで止めるのでは全然違ったと思います。静岡と東京の医師が主治医あてに報告の手紙を書いてくださり、主治医自身も別の医師の意見を知ることができたのはよかったようです。この件を通して私と主治医は意見を言い合える関係になれました。そして、それまで以上に主治医を信頼できるようになりました。
セカンドオピニオンを受けるために主治医には事務的な手間をかけたし、自分には諸費用の負担があったけれど、治療方針に納得ができたのは重要だったと思います。
(岐阜県、27歳、女性)
自宅での緩和治療を選択した自分
私は胃がんの再々発を告知されてから、1カ月の間にセカンド、サードオピニオンを受け、知り合いの医師に話を聞いたが、結論は延命治療しか残されていなかった。考えた末に病院での治療を受けないことにした。延命するための治療は断ったけれど、今後痛みが出たときや、何かあったときにはフォローしてほしいと思っていた。けれども、3年半お世話になった病院から、「治療をしない患者は診られない」ということで追い出されてしまった。その後、痛みが出てきてから緩和的な治療を受け入れてくれる病院を探すのは本当に大変だった。医師は患者に治療法を選択させるようになった。けれど、治療しないという選択は医師にとっては受け入れ難いもののようだ。私は今は抗がん剤などの治療をしないで、鎮痛剤で痛みはコントロールできているので、自宅で自分の生活を楽しんでいる。この状態がいつまで続くのかは、神のみぞ知ることなのだろう。
医師の予測(余命宣告)は気にしないでいこうと思う。
(北海道、49歳、女性)