このページには、がんが再発した患者さんの体験談をもとにした、社会とのつながりにまつわる手記を掲載しています。たくさんの方々のさまざまな向き合い方を通して、今度はあなた自身の向き合い方を見つけてみてください。
職場の理解は、大変ありがたい
がんになって治療を終えた後、定期的に毎月病院で検査をすることが決まっていましたが、見た目は元気なので当時の職場では理解がなかなか得られませんでした。元気なのに病院に行くということが理解されず、通院の間が空いたために再発の発見が遅れてしまいました。私自身もそのとき新入社員でしたし、見た目も元気で仕事ができていたから休みたいと強く言えませんでした。現在では転職をし、通院の必要性を理解してもらえる職場環境で働いています。再発する可能性は誰にでもあるわけなので、定期的な通院や検査が必要な場合は周りの人にきちんと伝えて、医師の指示どおりに行ってほしいと思います。
(岐阜県、27歳、女性)
立場を代えて考えてみると
がんを宣告され、治療のため仕事を頻繁(ひんぱん)に休むことはとても心苦しいものでした。治療を優先するため人事的に特別な配慮をしてもらった場合は、特にそうです。それゆえ、治療が完結し職場に復帰したときは心から安堵(あんど)し喜びました。だからこそがんが再発したときの職場にかかわる感情は、自分に対する失望感、無力感、疎外感(そがいかん)、さらには絶望感に近いものがありました。おそらくがんの再発を経験した多くの人が同じように感じていると思います。
私の場合は、「もしも、私の職場の同僚ががんを再発したら、私はその同僚のことを迷惑に感じるだろうか?」そのように考えてみたとき、心の安らぎを感じることができました。
(東京都、58歳、男性)
社会とつながっていたい思いは誰でも持っている
私の場合、がん告知から1年もたたないうちに局所再発が見つかり、また入院や頻繁な通院治療を余儀なくされてしまいました。ちょうど初めの治療が一段落しようというときだっただけに、再発のショックに加え、復帰するはずだった仕事に戻れなくなったことで「いらない人間になってしまった」と感じ、喪失感に苦しめられました。
実際、私の担当だった仕事を同僚がしているのを見たり聞いたりすると、「それは私の仕事なのに……」と自分の居場所を奪われたようなひがみっぽい気持ちになったこともありました。頭では「代わりに引き受けてくれてありがとう。迷惑かけて申し訳ない」と思うのですが、元気な同僚の姿に接すると疎外感や孤独感でいっぱいになったのです。
しかし、それも「どんな状況にあっても、社会とつながっていたい。社会や家族の中で役割があるはずだ」と願う患者の自然な思いからのこと。だって、患者は治療するためだけに生きているのはでないのだから。ひがみっぽくなっているときの自分も「案外かわいい」と思って否定しないことで、心の葛藤を乗り切るようにしています。
(東京都、43歳、女性)
がんサバイバーの集まりに行って心の中の澱が洗われました
乳がんの術後4年、おっかなびっくり「がんサロン」の戸をたたいた日のことは忘れ難い。私はサバイバーたちからの闘病経験をむさぼるように聞き、気が付くと自分のつらさを無我夢中で話していた。そこには代謝の早い独特の空気があった。もらい泣きをしたり爆笑したり、自分のよそ行きの仮面がドロドロに溶けていくのを感じた。ひとり抱え込んでいた心の中の澱(おり)が、真水に洗われてゆくようだった。
(群馬県、52歳、女性)
患者会に行って気づかされたこと
私ががん患者であると知ったら、友人が私との接し方に困るような気がして、ほとんどの友人には病名を打ち明けられませんでした。変に気を遣われたり、同情されたりして、今までと同じ付き合いができなくなるのを恐れていました。
がん罹患(りかん)から数年たって初めて患者会やリレー・フォー・ライフ*に参加しました。そこで、さまざまな部位・年代・性別のがん患者さんと出会い、話すことができました。病気や治療や人生について一人一人が考えを持っていて、誰もかわいそうな人には見えませんでした。私もかわいそうな人ではないはず、もっと堂々と生きてよいのではないか?と気付きました。今では少しずつ友人に病名を打ち明けられるようになりました。
*リレー・フォー・ライフとは
リレー・フォー・ライフ(Relay For Life)とは、アメリカがん協会(American Cancer Society)が主催するチャリティーイベントで、日本では2006年に始まりました。日本対がん協会の主催で、委員会や地元ボランティアが中心になって、全国各地でイベントが行われており、2010年時点で、延べ40,000人以上の人が参加しています。
(岐阜県、27歳、女性)
介護疲れはためないで
夫はピリピリと神経質になっている。痛みも浮腫(ふしゅ)も出て以前のように外出もままならない。歯がゆさもあってか家族に当たる。無理もないと思う。状態が少しずつ悪くなってから夫の様子を常に気にかけている私がいる。夜中でもコトッと音がしただけで慌てて駆け寄ってしまう。常に神経が張り詰めてギリギリの状態が続く。1週間・半月・1カ月だんだん疲れ私にも限界が……。
つい夫に当たってしまった。「私だって頑張ってる。一生懸命やってる」と言いながら自己嫌悪におちいる。そんなとき主治医が「検査入院してみませんか?」と夫に言ってくださった。正直ほっとした。2日間のんびりショッピングしてゆっくり食事して、しっかりリフレッシュしたら、また元気な私が戻ってきた。夫にも今までどおりに接することができるようになった。家族にも休養が必要なことが身にしみてわかった。
(広島県、59歳、女性)