がんと診断されたとき、「仕事はどうしよう」「治療に専念しなければならないのでは」「これまで通りには働けなくなるのでは」と考える人も多くいるでしょう。しかし、ここで早まって仕事を辞めることを決断しないようにしましょう。最近は、治療と仕事を両立するための制度などが整えられています。
1.がん治療と仕事の両立
仕事を辞めずに、治療と仕事を両立する人が増えています。仕事を続けることは、生活や治療に必要な収入を得るだけでなく、生きがいや達成感につながることもあります。まずは、治療の内容や体調の見通しについて把握し、自分の状況に合った選択を考えていくことが大切です。
治療と仕事の両立など就労に関することは、会社員や自営業など就労形態に関係なく、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている「がん相談支援センター」に相談することができます。ご自身が通院していない病院のがん相談支援センターでも相談することが可能です。最寄りのがん相談支援センターでご相談ください。治療や診察を主に担当する医師(担当医)や看護師、社会福祉士(ソーシャルワーカー)といった医療スタッフ、家族や職場の人への相談も大切です。
また、厚生労働省は「治療と就業の両立支援指針」を作成し、治療しながら仕事を続けるための環境整備をよびかけています。2026年度からは、「治療と仕事の両立支援」は事業主の努力義務となり、制度的な位置づけが進められています。治療と仕事を両立するための支援や制度の利用も検討しましょう。
2.仕事を続けるために必要な情報を担当医等に確認
どのように仕事を続けていくか検討するために、病状、治療の内容、入院が必要かどうか、治療のスケジュール、治療によって起こりうる合併症や副作用などを確認し、仕事への影響や注意点を考えるとよいでしょう。
現時点での治療の見通しや副作用、体の状況などを確認したうえで、職場で配慮してもらいたいことなどを整理していきます。就労(就業継続、休職、転職など)に加え、医療費や生活費などお金に関する不安についても、がん相談支援センター等で相談できます。
担当医に確認すること
- 治療の期間
- 治療のスケジュール
- 入院か外来、どちらで治療するか
- 副作用など体に起こる変化について
- 現在の仕事内容についての主治医からの意見、注意点
- どのような業務内容なら続けることができるか
3.利用できる職場の制度を確認
職場によっては、1日の労働時間を短縮する短時間勤務(時短)制度、時間単位で取得できる有給休暇、休職から復職をスムーズにするためのリハビリ出勤(試し出勤)制度などを設けているところもあります。労働者が10人以上の職場では、就業規則の作成・周知が義務付けられています。まずは、ご自身の職場の制度や就業規則を人事・総務担当者に確認してみましょう。
病状や治療によって仕事に影響することや自分の希望を伝えるため、職場との話しあいの場を設けてもらいましょう。産業医がいる場合は、相談するとよいでしょう。通院のための時間を確保したり、体調にあわせて働いたりするために必要な情報を共有することが大切です。
テレワーク

テレワーク(在宅勤務)を可能としている職場もあります。
ご自身の職場で、テレワークが認められている場合には、化学療法(抗がん剤による治療)中などで免疫力が低下しているときや外見が変わったとき、手術後など体力が落ちているとき、食事の量や回数を調節する必要があるとき、排便や排尿の調整が必要なときなどには、積極的に活用できるとよいかもしれません。
時差出勤

時差出勤とは、始業や終業の時間を通常とはずらして働く方法です。
治療の影響で体力が低下している場合や、体調が安定しないときには、通勤時間帯を避けることで、体の負担を軽減できる場合があります。ご自身の職場で時差出勤が可能であれば、満員電車での通勤がつらいときや、長距離の車通勤で渋滞の影響を受けやすい場合などに活用できるとよいでしょう。また、通院の予定に合わせて利用できることもあります。
時間単位の有給休暇、フレックスタイム勤務

時間単位の有給休暇やフレックスタイム勤務は、働く時間を柔軟に調整できる制度です。
放射線治療などで短時間の通院が頻回に必要な場合や、診察・検査、治療に伴う体調の変化への対応などで、数時間単位での休みの調整が必要な場合に活用できることがあります。働く時間を調整できると、治療と仕事の両立がしやすくなる場合があります。
なお、仕事を休んでいる間の収入を支える制度については、関連情報「がんとお金」で紹介しています。
4.治療と仕事を両立していくためには
がんの治療を受けながら働き続けるためには、ご自身の病状や体調の把握、周囲の理解に加え、さまざまな支援が大切です。
就労に関する相談先を知る
治療と仕事の両立など就労に関することは、会社員や自営業など就労形態に関係なく、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている「がん相談支援センター」に相談することができます。労働に関する法律や職場の労務管理に詳しい社会保険労務士(社労士)と連携するがん相談支援センターの数も増えており、病院内で社労士に相談できる場合もあります。まずは、最寄りのがん相談支援センターでご相談ください。

また、治療と仕事の両立支援を専門的に支える役割を担う「両立支援コーディネーター」がいます。両立支援コーディネーターは、本人・医療機関・会社など両立支援にかかわる関係者との間での情報共有や調整を行います。病院の相談窓口(がん相談支援センターなど)や、産業保健総合支援センター、職場の人事・総務部門などで、少しずつ配置が広がっています。
事業主や人事労務担当者を支える機関としては、「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」があります。人事労務担当者などに産業保健に関する相談、研修、情報を提供したり、両立支援・職場復帰支援プランの作成を助言・支援したりしています。また、「地域産業保健センター(地さんぽ)」では、労働者からの相談にも応じています。
以下には、仕事のことについて相談できる場所を紹介しています。どこに相談すればよいか迷う場合は、病院の相談窓口で案内してもらうこともできます。
仕事のことについて相談できる場所
ハローワーク
相談者の同意を得て、がん相談支援センターと連携し、治療状況・経過・今後配慮すべき点などの情報を共有しながら、希望や状況に応じた職業相談・職業紹介を実施しています。
社会保険労務士会
全国47都道府県の社会保険労務士会では、安心して利用できる相談窓口として、総合労働相談所を設置しています。休業、職場復帰や再就職などの相談に社労士が対応します。
担当医に診断書を依頼し、職場と情報を共有
制度を利用したり、職場などからの十分な理解を得るうえで、担当医の診断書は大切な役割を果たします。 担当医に「診断書」を依頼するときは、提出する目的を伝えましょう。
休暇取得のために依頼する場合は、入院期間や通院頻度、治療の影響など、必要な情報をまとめてもらいます。
復職のために依頼する場合は、症状や治療状況の説明に加え、いつから復帰が可能か、治療の影響で避けたほうがいい業務はあるかなどを含めることが重要です。
仕事と治療の両立のための「両立支援プラン」(下記参照)や、両立支援カードもあります。厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」に、提出書類のフォーマットが公開されています。
両立支援プラン作成までの手順

- (1)「勤務情報提供書」を作成し、主治医に渡す
- (2)担当医が「主治医意見書」を作成
- (3)本人が会社に「主治医意見書」を提出
- (4)両立支援プランを作成
「主治医意見書」をもとに、会社側は産業医などの意見を確認しながら、職場で必要な配慮をまとめ、両立支援・職場復帰支援プランを作成します。
5.さらに詳しく知りたいあなたへ
以下には、さらに詳しく知りたい方に向けて、制度や支援の仕組み、職場での対応や支援の事例を紹介するウェブサイトへのリンクを掲載しています。
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