がんと診断された子どもの学校生活に関する質問や疑問を、主に保護者の方に向けてQ&A形式でまとめています。 入院治療中の学習や退院後の学校生活がどのようになるのかは、病気や治療の状況によって異なります。また、どのような支援が受けられるかは、病院やお住まいの自治体・学校によってさまざまです。 具体的な支援の内容が知りたいときは、在籍している学校の先生にお尋ねください。学習についての困りごとや心配ごとは、主治医や看護師、病院のソーシャルワーカーに相談することができます。がん相談支援センターでも相談に応じます。
小児がん拠点病院のがん相談支援センターでは、小児がんに関する専門的な研修を受けた相談員が、学校に関する相談も対応しています。
小児の地域のがん情報では、地域ごとの教育に関する情報のリンクを掲載しています。
学校の先生や同級生に向けた情報を掲載しています。
入院治療後の生活や長期フォローアップなどの情報を掲載しています。
小児がん拠点病院相談支援センターのがん専門相談員向けに、教育支援の基本的な考え方をまとめたものです(2014年発行)。
1.入院中のQ&A
勉強のこと
Q1 病院にある学校に行くメリットを教えてください。 開く
A1
病院にある学校では、体調に応じて授業を受けます。そのため、入院による欠席をしないですむようになります。学校の時間割に合わせて過ごすことで、入院生活にリズムもつきます。また、同じように療養しているクラスメートとの交流によって、安心感や前向きな気持ちになれることもあります。 病院にある学校に行くためには、原則、転学する必要があります。転学とは学籍を別の学校に異動することで、転校とも呼ばれています。転学については病院にある学校や在籍している学校の先生に相談しましょう。
Q2 病院にある学校ではどのように勉強するのでしょうか。 開く
A2
病院にある学校は院内学級とも呼ばれています。病院の一角に教室があり、入院している子どもたちが、病室から通ってきます。学年が違うクラスメートもいますが、一人一人の進度に応じて学習したり、一緒に活動したりすることもあります。体調によっては病室に先生が来て、授業を受ける場合もあります。学校で教える先生は、特別支援学校や病院の近くにある小学校・中学校の病弱・身体虚弱特別支援学級の先生です。
Q3 病室から在籍している学校のオンライン授業に参加できますか。 開く
A3
病室での学習や通信の環境が整い、在籍している学校の協力があれば、情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を活用して、オンライン授業を受けることも可能です。主治医や看護師、在籍している学校の先生に相談してみましょう。 病気で療養している子どもに対する学校教育の制度は整えられてきており、学校の教室との同時双方向型の授業や、あらかじめ撮影された授業を視聴するオンデマンド型の授業も進められつつあります。
Q4 私立学校の小学生(中学生)ですが、病院にある学校に通うことはできますか。 開く
A4
私立の学校の子どもも通えます。病院にある学校に転学する場合は、私立の学校を退学することになります。そのため転学する前に、退院してからの学校について相談しましょう。その際、戻る時期やタイミング、授業料や積み立てなどの費用、戻る際の試験の有無、学習内容なども確認しておきましょう。
入院前の学校の先生や周りの人とのこと
Q5 小児がんが疑われ、入院しました。学校の先生にはどう話せばいいですか。 開く
A5
現時点で分かっていることや、伝えてもよいと思うことから話してみましょう。学校の先生は欠席の理由を把握する必要があります。例えば「貧血の検査のため、○○日ごろまで休みます」と状況を伝えるとよいでしょう。
Q6 小児がんと診断されましたが、病名などの詳細を先生やクラスメートに話したほうがいいのでしょうか。 開く
A6
病気のことを先生やクラスメートに話しておくと、入院中も交流しやすく、子どもにとって心の支えになることもあります。しかし、気持ちの整理がつくまでは、無理に病名や病状を詳細に話す必要はありません。本人や保護者の方の気持ちが落ち着いてから、まずは子ども本人の思いを尊重し、その上で「誰に何をどのように伝えるか」を一緒に考えましょう。
Q7 同じ学校に通うきょうだいに対して、病気の子どものことを学校でいろいろ聞かれて困るのではないか心配です。 開く
A7
病気の子どものことを聞かれたときにどう答えるか、前もってきょうだいと話しておくとよいでしょう。家庭内に病気の子どもがいることで、きょうだいの心や体に影響があるかもしれません。できれば、きょうだいの担任や養護教諭にも病気の子どもの状況を伝え、サポートをお願いしましょう。きょうだいへの説明や対応に困る場合は、医師や看護師、病院にある学校の先生などに相談できます。
入学・進学のこと
Q8 現在は治療中ですが、来春に小学校入学の予定です。学校にはどのように対応すればいいですか。 開く
A8
入学予定の学校、またはお住まいの市町村の教育委員会の就学相談担当者に、病気の治療中であることや入学の時点で予想される状態について、分かる範囲で伝えます。学校側では学級編制や環境整備などが関わってくる場合もあるため、なるべく早い段階で一度相談に行くのがよいでしょう。
Q9 治療中に高校受験をする場合、どのような対応をしてもらえますか。 開く
A9
高校受験をする場合は、事前に主治医に相談します。体に負荷がかかる治療が受験日と重ならないように、受験のスケジュールに合わせて治療計画が調整されます。受験校では、別室での受験や介助者の同行などの対応があるため、入学試験の実施要項で具体的な対応を確認し、受験の手続時に必要な支援の申請(配慮申請)を行います。基本的には在籍している中学校から受験校に申請し、受験校が本人の状況を確認した上で対応を承認します。
Q10 高校に行っても治療が続くのですが、入院や通院などで出席日数が不足することが心配です。 開く
A10
高校は義務教育ではないため、単位の取得については学校に確認する必要があります。学校によっては、出席日数の不足や評点不足、試験日の欠席に対して、追試や補習授業、別課題などの対応がなされることもあります。通院の予定は事前に学校に伝え、欠席分の授業をどうするか、相談しておきましょう。主治医には同じ教科の欠席が続かないよう、通院の曜日を調整してもらうとよいでしょう。 最近は、病気療養中の高校生を対象とした教育の制度が整いつつあり、オンデマンド配信による授業も含め、情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を活用した学習活動の成果が、成績評価に反映されるようになりました。
自治体によっては、病気療養中の高校生に対する教育支援の情報を教育委員会のホームページなどに公開しています。小児の地域のがん情報では、地域ごとの教育に関する情報のリンクを掲載しています。
2.退院後のQ&A
勉強のこと
Q11 入院中は病院の学校に転学したのですが、退院後は入院前の学校へ戻ることができますか。 開く
A11
退院後は入院前の学校に戻ることができます。入院中から前もって病院の学校の先生と退院後の学校について、情報共有しておきましょう。すぐにもとの集団生活に戻ることが難しい場合は、自宅で訪問による指導や情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を利用した通信教育が受けられる場合もあります。病状によっては、小学校・中学校の病弱・身体虚弱特別支援学級や病気の子どもを対象とする特別支援学校で学ぶ場合もあります。
Q12 学校に戻って間もないころの授業の受け方について教えてください。 開く
A12
治療の状況や入院期間にもよりますが、段階的に慣らしていきます。例えば、最初の2週間は授業を2時間まで受け、次の2週間は昼食前まで、次は昼食後まで、そして最後まで受けます。学校にいる間は元気でも、家に帰るとすぐに昼寝してしまうなどの場合は、もう1週間、同じ段階で様子をみます。反対に思ったよりも元気であれば、早めに次の段階に進めてもよいでしょう。家に帰ってからの過ごし方を疲れの目安にして、学校の先生と保護者で連絡を取りながら進めていきます。
Q13 運動制限はないのですが、体育はどうしたらいいですか。 開く
A13
主治医に体育の授業にはいつからどの程度参加できるか、気を付けることは何かなどを確認し、その内容を学校の先生と共有しておきましょう。本人の気持ちを確かめながら、どの運動にどのように参加するか、参加についてクラスメートへどのように説明するかも、体育を担当する先生と本人、保護者で一緒に決めておくとよいでしょう。
Q14 長期の入院により学習に遅れが出てしまった場合、補習をしてもらえますか。 開く
A14
学校に戻るにあたっては、各科目の学習の内容や取り組みについて、入院している時の学校の先生から退院後に通う学校の先生に伝えてもらいます。そのあとに、退院後の学校の先生と学習の進め方について、どのように遅れを取り戻していくか、補習が可能かなど具体的な相談をするとよいでしょう。
Q15 だんだんと勉強についていけなくなってきたのですが、これは「晩期合併症」の症状なのでしょうか。 開く
A15
晩期合併症は小児がんの治療後、数年~十数年、あるいはそれ以上がたってから、がんそのものや治療の影響によって起こる合併症のことで、症状はさまざまです。勉強についていけない状況が晩期合併症によるものかどうかの判断は難しいです。晩期合併症かも、と思うことがあれば、主治医に聞きましょう。勉強について気になることは、学校の先生にも相談してみましょう。
学校の先生や周りの人とのこと
Q16 学校に戻るときは、先生に病気のことを話さなければいけないですか。 開く
A16
すべてを話す必要はありませんが、安全に学校生活を送るにあたっては、病状や具体的な注意事項を伝えておくとよいでしょう。本人の思いを尊重しながら、前もって伝える内容を本人と話し合い、決めておきましょう。子どもの年齢が低いなどの理由で、本人が理解している内容以上のことを学校に伝える必要がある場合は、本人が理解している内容も共有しておきます。
Q17 入院前と比べて体形や見た目が変わったため、何か言われないか心配です。 開く
A17
子どもが傷つくような言動を受けないためには、周囲の人に治療による変化だと分かってもらうことが必要です。しかし、最も大事なことは学校生活を送る本人が、自分の体の変化を誰にどこまで知ってほしいと思っているかです。その思いを尊重しながら本人と話し合い、周囲に伝える場合は、誰に何をといった具体的な内容も決めておきましょう。学校の先生には本人と話し合った内容を伝え、その上でクラスメートへの対応も相談するとよいでしょう。
学校での生活のこと
Q18 退院してからの学校での生活において、注意することはありますか。 開く
A18
学校生活で注意することは、治療や病状によっても異なるため、退院前に主治医に確認します。注意点があれば、学校の先生に伝えて共有しておきましょう。
Q19 学校に行って疲れ、体調が悪くなることが心配です。 開く
A19
入院中は多くの時間を病室のベッドで過ごしているため、入院生活が長くなると、自覚している以上に体力が落ちている場合もあります。退院後は焦らずに過ごし、特に退院直後や治療中・治療直後は体の様子をみながら、学校の先生と連絡を取り合って授業を受けていきましょう。休息を取っても疲れが回復しない場合は、主治医に相談しましょう。
Q20 学校でインフルエンザなどの流行性感染症がはやっているときは、学校を休んだほうがいいのでしょうか。 開く
A20
子どもの病状や治療の状況、感染症の種類によって対応は異なります。出欠について迷う場合は、主治医やかかりつけの病院に連絡して相談しましょう。
更新・確認日:2024年08月26日 [
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