1.ほてり・のぼせ・発汗(ホルモン低下による症状)について
ホルモンの分泌が少なくなることによって起こる症状には、ほてり・のぼせ・発汗があります。
これらの症状はホットフラッシュとも呼ばれ、時や場所を選ばず1日にたびたび起こることがあり、その症状が数年間続くこともあります。乳がんの治療で行う内分泌療法(ホルモン療法)に伴う症状については、数カ月程度で落ち着くことが多いとされています。また、うつ症状や不安、いらいら、やる気が出ないなどのさまざまな症状を伴うこともあります。
2.原因
女性ホルモンや男性ホルモンは、脳にある体温を調節する機能と関わりがあります。がんの治療によってホルモンが低下し、体温調節に関わっている自律神経のバランスが崩れることが原因となって、ほてり・のぼせ・発汗などの更年期障害と同様の症状が起こることがあります。
ほてり・のぼせ・発汗の原因になるがんの治療には、以下のようなものがあります。
- 手術で両方の卵巣や精巣を摘出する。
- 薬物療法で、卵巣や精巣の機能に影響を与える種類の薬を使う。また、乳がんや前立腺がんの治療で、女性ホルモンや男性ホルモンの分泌を抑えたり働きを妨げたりする内分泌療法薬(ホルモン療法薬)を使う。
- 放射線治療で、全身・骨盤内・脳に放射線を照射する。
3.ほてり・のぼせ・発汗が起きたときには
症状が重く日常生活に支障がある場合は、薬で症状を和らげます。
低下したホルモンを薬で補充するホルモン補充療法を行うことがあります。ほてり・のぼせ・発汗の症状を和らげる効果があり、婦人科がんや精巣がん、白血病などの血液がん、脳腫瘍などの治療のあとに行うことがあります。ただし、肝臓の状態が悪い場合や、血栓ができやすい場合、がんの増殖にホルモンが関連するタイプのがんである場合は、医師と相談して慎重に検討します4)。
なお、乳がんや前立腺がんの場合はホルモン補充療法は勧められないため、それ以外の対処方法を検討します。
※ホルモン補充療法は、乳がんや前立腺がんの治療で行われる内分泌療法(ホルモン療法)とは異なります。
また、症状があっても軽い場合や、血液中のホルモン濃度が保たれている場合は、数カ月で症状がなくなる可能性もありますが、どのように対処したらよいのかについては、医師に相談してみましょう3)。
4.ご本人や周りの人ができる工夫
1)外出するときには脱ぎ着しやすい服装を選び、汗を拭くためのタオルを持ち歩く
外出するときには、カーディガンなど脱ぎ着しやすい洋服を選びましょう。症状が出たときに汗を拭くためのタオルや汗拭きシートを持ち歩くとよいでしょう。また、冷却材が入ったスカーフを首に巻くことや、市販のクーリング作用のある制汗スプレーを使うことで、体温を調節することもできます。
2)体に熱がこもらない環境を整える
吸湿性が高い木綿のゆったりした洋服を着たり、窓を開けて室内の換気を促したりして、体に熱がこもらない環境を整えましょう。
3)適正体重の維持を心がける
食事はバランスよく摂取するとともに、長時間座り続けることを避けたり、普段から階段を使ったりするなどして、できる限り運動を取り入れましょう。生活習慣を見直して、適正体重の維持を心がけることが大切です。
4)ストレスをため込まないようにする
症状が出るのは心理的な状態も影響しているといわれています。リラックスしたり、心の専門家に相談したり、できる限りストレスをため込みすぎないような生活を心がけることが大切です。
5.こんなときは相談しましょう
症状が始まる時期には個人差があります。そのため、これは病気や治療とは関係ないのかなと思ってしまう場合があります。また、「がんが治ったのだからこれくらいは仕方がない」「がんの治療のためだから我慢しよう」などと症状の改善をあきらめてしまう場合もあります。
しかし、ほてり・のぼせ・発汗は日常生活に支障を来すこともある症状です。「こんなことを聞いても大丈夫かな」と悩まず、症状が頻繁にあり過ごしにくい、寝汗が気になり眠れない、気分がコントロールできないなど、気になる症状があれば担当の医師に相談しましょう。
相談するときには以下のような内容を医師に伝えるとよいでしょう。
- 1日に何回程度症状が出るか
- どのようなときや時間帯に多いか
- 症状が自分にとってどれくらい不快であるか
6.「ほてり・のぼせ・発汗(ホルモンの症状)」参考文献
- 日本婦人科腫瘍学会編.患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第2版.2016年,金原出版
- 日本泌尿器科学会編.前立腺癌診療ガイドライン2016年度版.メディカルレビュー社
- 日本乳癌学会編.乳癌診療ガイドライン1 治療編 2018年版 第4版.金原出版
- 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会編.ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版.日本産科婦人科学会事務局
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編.産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2017.日本産科婦人科学会事務局
7.その他の関連情報
※本ページの情報は、「『がん情報サービス』編集方針」に従って作成しています。
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