1.膵・消化管神経内分泌腫瘍について
1)膵・消化管神経内分泌腫瘍とは
膵・消化管神経内分泌腫瘍は、膵臓と消化管に発生する神経内分泌腫瘍(NEN:Neuroendocrine neoplasm)の1つです。消化管では、直腸に発生するものが最も多いとされています。
膵・消化管神経内分泌腫瘍は、発生する部位のほか、腫瘍細胞の形や増え方(病理組織学的な所見)や、ホルモンによる症状により分類されます。
(1)病理組織学的な分類(WHO分類)
NENは腫瘍細胞が正常な細胞の形態と類似する度合いである分化度により、分化度が高い神経内分泌腫瘍(NET:Neuroendocrine tumor)と、分化度が低い神経内分泌がん(NEC:Neuroendocrine carcinoma)に分けられます。高分化型のNETは悪性度が低く、低分化型のNECは悪性度が高い腫瘍です。
NETはさらに、NET G1、NET G2、NET G3に分けられ、数字が大きくなるほど悪性度が高くなります(図1)。なお、NECはNET G3よりもさらに悪性度の高い腫瘍です。
(2)ホルモン症状の違いによる分類
膵・消化管の神経内分泌腫瘍は、ホルモンが過剰に作られ、そのホルモンによる症状がある機能性と、ホルモンによる症状がない非機能性に大きく分かれます。また、機能性は、関連するホルモンの種類によって、さらに細かく分類されます(表1)。
また、まれに遺伝的な素因がNETの発生に関与していることがあります。具体的な素因としては、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)、神経線維腫症Ⅰ型などがあります。
2)症状
膵・消化管神経内分泌腫瘍の症状は、機能性と非機能性で異なります。
(1)機能性神経内分泌腫瘍
機能性神経内分泌腫瘍は、過剰に作られるホルモンの種類によって症状が異なります(表1)。
機能性 神経内分泌腫瘍の種類 |
症状 | 過剰に作られるホルモン |
---|---|---|
インスリノーマ | 低血糖症状(めまい、空腹感、手足のふるえなど) ※食事の摂取で症状が回復する特徴があります |
インスリン |
ガストリノーマ | 胃酸の分泌亢進による、腹痛や胸やけ、なかなか治らない消化性潰瘍、食道炎、下痢など | ガストリン |
グルカゴノーマ | 壊死性遊走性紅斑、貧血、体重減少、糖尿病など | グルカゴン |
VIPオーマ | 大量の水様性の下痢(1日3L以上の水のような下痢)、低カリウム血症(手足のだるさ、こわばり、脱力感、筋肉痛、呼吸困難感など) | VIP(血管作動性腸管ペプチド) |
ACTHオーマ | クッシング症候群(顔が丸くなる満月様顔貌など) | ACTH(副腎皮質刺激ホルモン) |
セロトニン産生腫瘍 | カルチノイド症候群(皮膚の赤み、下痢、喘息、心疾患など) | セロトニンを含むアミンやペプチド |
(2)非機能性神経内分泌腫瘍
ホルモンによる症状はありませんが、腫瘍が大きくなるにつれて腹部に腫瘤(しこり)が触れることがあります。腹痛のほか、胆道(胆汁の通り道)をふさぐ場所にできた場合には黄疸(皮膚や白目の部分が黄色に染まる状態)などの症状が出てくる人もいます。
3)さらに詳しい情報
膵・消化管神経内分泌腫瘍は、診断される人が人口10万人あたり6例(人)未満のがんです。このように、診断される人が少ないがんのことを希少がんといいます。膵・消化管神経内分泌腫瘍や治療に関する詳しい情報は、国立がん研究センター希少がんセンターのウェブサイトで公開されています。
2.相談先・病院を探す
希少がんの電話相談窓口や病院の探し方に関する情報は下記のページをご覧ください。
なお、がんに関する相談窓口「がん相談支援センター」は、全国の「がん診療連携拠点病院」「小児がん拠点病院」「地域がん診療病院」に設置されています。がんや治療、仕事やお金、生活の工夫や利用できるサポートなど、困ったときにはどのようなことでも相談できます。情報や病院などが見つからないときにもご相談ください。
3.検査・治療や療養などに関する一般的な情報
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作成協力
国立がん研究センター希少がんセンター