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有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)

更新日:2016年12月20日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2016年12月20日 タブ形式への移行と、「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」より、内容の更新をしました。
2007年09月03日 更新しました。
1996年09月13日 掲載しました。

1.有棘細胞がんとは

有棘細胞がんは、日本人に多い皮膚がんの1つです。

皮膚は表面に近い部分から表皮、真皮、その深部の皮下組織の3つの部分に大きく分かれます(図1)。表皮はさらに表面側から順に、角質層、顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層(きていそう)の4層に分けられます。表皮最下層である基底層は真皮と接しています。真皮には、血管、神経、毛嚢(もうのう)、脂腺、汗腺、立毛筋などの組織があります。

有棘細胞がんは、表皮の中間層を占める有棘層を構成する細胞から発生するがんです。

皮膚がん(皮膚悪性腫瘍)は、このような皮膚を構成する細胞から発生するがんのことで、発生した場所やがん細胞の種類によって区分されます。
図1 皮膚の構造
図1 皮膚の構造
図2 表皮の構造と細胞
図2 表皮の構造と細胞

2.有棘細胞がんの原因

有棘細胞がんの誘因として一番に考えられるのは紫外線の関与です。特に中波長紫外線(UV-B:ultraviolet B)は皮膚がんの発生に大きな影響を与えています。短期間に大量の紫外線を浴びるのはもちろん、子どものころからの蓄積の影響でもがんが発生しますので、人口の高齢化に伴って、顔や首、手の甲など日光のあたる部分の有棘細胞がんは増えています。

日本人の有棘細胞がんの約60%が日光露出部に発生するとされています。したがって、日焼け止め(サンスクリーン剤)を使用し、過度の日焼けを避けることが有棘細胞がんの予防につながる可能性があると考えられています。特に、色白で、色素沈着を起こしにくい人(日焼けで黒くなりにくい人)や小児は、こうした紫外線予防が推奨されます。

また、発症誘因の1つとして、ヒト乳頭腫ウイルスがあります。ヒト乳頭腫ウイルスは、子宮頸がんなどの発症誘因として知られていましたが、皮膚の有棘細胞がんの発症にも関わっている場合があることがわかっています。

その他に、有棘細胞がんには以前から知られている発生母地(ぼち)といわれるものがいくつかあります。やけどや外傷の瘢痕(はんこん)、慢性膿皮症といわれる完治しにくいお尻のおでき、膝から下にできる治りにくい皮膚潰瘍(かいよう)、長期間にわたる褥瘡(じょくそう:とこずれ)や、放射線治療後に起こる慢性放射線皮膚炎などです。さらに、化学物質の砒素(ひそ)化合物、タール類、切削油に用いられる鉱物油などが発生に関与する場合があります。

3.症状

有棘細胞がんの症状は、発生部位や発生原因によってさまざまです。

一般に、比較的大きく、ふぞろいな形の紅色をした皮膚の盛り上がりで肉のかたまりの崩れたもののように見え、表面にびらんや潰瘍を伴って出血しやすく、つまむとしこりを触れるような場合は要注意です。大きくなると腫瘍の形はカリフラワーに例えられることもあります。それ以外に自覚症状は特にありませんが、有棘細胞がんは腫瘍(がん)の表面が弱くなっているので一般細菌による感染を起こしやすく、膿をもったり悪臭を放ったりします。

4.有棘細胞がんを生じやすい前駆症・表皮内がん(日光角化症・ボーエン病)

放置すると皮膚がんへと変化する皮膚がん前駆症と呼ばれるものがあります。その中で、発生頻度の高く、放置すると有棘細胞がんになる病変として、日光角化症、ボーエン病があります。
【皮膚がん前駆症・表皮内がんについて、もっと詳しく】
皮膚科では、以前から皮膚がん前駆症という言葉は以下2つの意味で使われます。
1つ目は、悪性の細胞、つまりがん細胞をもってはいるのですが、これが表皮の中だけにとどまっている疾患を指す使い方です。これは皮膚がんの病期分類の0期と同じ状態で、表皮内がんと呼ばれるものです。これを皮膚がん前駆症・表皮内がんと記載しています。これを放置しているとがん細胞はやがて真皮の中へ入り、本物の皮膚がんになりますので、表皮内がんのうちに治療してしまうことが大切です。日光角化症、ボーエン病もこれに該当します。

2つ目は、もっと広い意味で皮膚がん発生の母地(ぼち)になるものを指します。この中には、慢性放射線皮膚炎や、熱傷瘢痕(ねっしょうはんこん)などが含まれます。現在はどこにもがん細胞はないのですが、正常の健康な皮膚に比べて将来がん細胞が出現しやすいため、注意深く皮膚を観察する必要のある状態のことです。すぐに治療をしなければならないわけではありません。

日光角化症、ボーエン病は表皮内がんですので、完全に切除すれば治ります。
しかしながら、ボーエン病は、内臓がんが体の中に潜んでいることを示すサインのひとつであるともいわれており、胃がんや肺がんなどの内臓がんが見つかることもあります。
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【日光角化症について、もっと詳しく】

1)日光角化症とは

日光角化症とは、慢性的に日光や紫外線を浴びることによって発生する上皮内がんです。中年以降、頭、顔、うなじ、手の甲、前腕などの日光(紫外線)のよくあたる部位に、大きさ1cm~数cmで、淡い褐色から紅褐色の表面ががさがさと乾燥したような、輪郭のぼやけた円に近い形の皮疹(ひしん)ができます。
老人性角化症とも呼ばれ、高齢になるほど発生頻度は高くなります。この腫瘍は近年増加傾向にありますが、その原因としては、社会の高齢化の他に、地球の環境破壊によるオゾン層の減少のためであるという説もあり、今後もさらに増え続けることが予想されます。
日光角化症を放置すると、進行して有棘細胞がんになります。

2)日光角化症の診断

肉眼的な所見に加え、組織診断が行われます。

3)日光角化症の主な治療法

日光角化症の治療法として、手術(外科治療)、薬物療法凍結療法、光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)があります。
がんが単発であれば、通常、外科療法や凍結療法が選択されます。多発している場合には、その他の治療法が選択されることが一般的です。また、角化が強い場合やほかの治療に反応しなかった場合、真皮内への浸潤(しんじゅん)が疑われる場合などには手術を選択するという方針が一般的です。

(1)手術(外科治療)

角化が顕著な場合や、真皮内への浸潤が疑われる場合、手術以外の治療で効果が得られなかった場合には、手術が行われます。手術で切除した組織を調べて、診断を確定します。
日光角化症では、腫瘍の辺縁から0.5cm離し、深部は腫瘍が露出しない程度に皮下脂肪組織を含めて切除すれば十分とされています。

(2)薬物療法

手術や凍結療法を行いにくい場合や、多発する病変がある場合に行われます。以下に、日光角化症で用いられる薬の代表例を示します。
・イミキモド:外用剤で、手術や凍結療法を行いにくい病変などの治療として勧められます。1回約7時間塗布(とふ)、週3回、16週間にわたって外用することで、病変は5割くらいの確率で消えるといわれています。日本では顔面と禿頭部(とくとうぶ)のみに保険適応があります。
・フルオロウラシル(5-FU)軟膏:多発する薄い病変に対して用いられます。

(3)凍結療法

液体窒素(-196℃)を綿棒などに浸して病変に押しつけ、組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、細胞を凍結壊死(とうけつえし)させる方法です。凍結療法は治療時や治療後の体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために体の具合の悪い方にも適した治療法です。

(4)光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)

腫瘍親和性光感受性物質(がんに特異的に集まる物質)を投与した上で、光感受性物質の集積したがん細胞にレーザー光を照射し、がん細胞を選択的に攻撃する方法です。広範囲に存在する多発性の日光角化症に対する治療として勧められています。
ただし、PDTは2016年11月現在、日光角化症に対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。
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【ボーエン病について、もっと詳しく】

1)ボーエン病とは

形がふぞろいの斑状(はんじょう)、または軽く盛り上がった皮疹で、正常皮膚との境界がはっきりしています。色は淡い紅色から褐色調であることが多く、表面には白色や黄白色のがさがさと乾燥してはがれ落ちやすい皮膚が付着しています。一部にびらんがあったり、かさぶたがついていたりすることもあります。ボーエンというのは発見者の名前です。

日本人では約80%が胸、腹、背、上腕、太ももなどの日光にあたらない部位に発生し、がんこな湿疹と間違われることもしばしばあります。

ボーエン病も、日光角化症と同じように、進行すると有棘細胞がんになります。全身にこの皮疹ができる多発性ボーエン病は砒素の摂取と関連があることが知られています。

2)ボーエン病の診断

肉眼的な所見に加え、組織診断が行われます。

3)ボーエン病の主な治療法

ボーエン病の主な治療法として、手術(外科治療)、凍結療法、光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)、薬物療法があります。病変部位や個数によって、治療が選択されます。一般には、小型の病変に対しては手術および凍結療法が、大型もしくは多発する病変に対してはPDT、フルオロウラシル(5-FU)およびイミキモドによる薬物療法が勧められています。

(1)手術(外科治療)

ボーエン病に対する最も一般的な治療です。採取した組織について、病理学的な評価が行われます。
ボーエン病では、腫瘍の辺縁から0.5cm離し、深部は腫瘍が露出しない程度に皮下脂肪組織を含めて切除すれば十分とされています。

(2)凍結療法

液体窒素(-196℃)を綿棒などに浸して病変に押しつけ、組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、細胞を凍結壊死(とうけつえし)させる方法です。凍結療法は治療時や治療後の体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために体の具合の悪い方にも適した治療法です。
軽症例を中心に広く実施されます。

(3)薬物療法

大型もしくは多発する病変に対しては、薬物療法が検討されます。以下に、ボーエン病で用いられる薬の代表例を示します。
・フルオロウラシル(5-FU)軟膏:多発する病変に対して用いられます。
・イミキモド:顔面などに限り用いられるクリーム状の塗り薬です。ただし、2016年12月現在、ボーエン病に対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。

(4)光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)

腫瘍親和性光感受性物質(がんに特異的に集まる物質)を投与した上で、光感受性物質の集積したがん細胞にレーザー光を照射し、がん細胞を選択的に攻撃する方法です。
ただし、PDTは2016年12月現在、ボーエン病に対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。
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5.疫学・統計

正確な年間発生数は不明ですが、皮膚がんの中では基底細胞がんに次いで多く生じます。

また、男性に多く、加齢とともに増加し、通常のがん年齢よりも高い70歳以上が過半数を占めています。
【参考文献】
  1. 日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版
  2. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版,日本皮膚科学会誌,2015;125(1):35-48
  3. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);(金原出版)
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