このページは、書籍『患者必携 がんになったら手にとるガイド(2013年)』より一部抜粋して作成しました。
まず、自分のがんの状態を知ることから始まります。
担当医の説明をよく聞き、十分理解した上で治療法を選ぶようにしましょう。
1.まず、がんの状態を知ることから
がんの治療を考える上でまず大切なことは、がんの状態を知ることです。体調はどうか、気になっていることはないか、という自覚症状を担当医に伝えます。そして、がんの大きさ、性質、広がりを把握するためのさまざまな検査が行われます。検査が続き、診断結果が出るまで時間がかかることもあります。その後、担当医から検査結果や診断について説明があります。このとき、検査や診断についてよく理解し、記録しておくことは、治療法を決める際に大切です。
次に診断結果をもとに治療の方針を決めていきます。多くのがんでは、がんの進行の程度を「病期(ステージ)」という言葉で示します。病期によって最もよい効果が期待される治療を選択することになりますが、実際には年齢や体調、がん以外の病気がないかなど、総合的に判断されます。このときに「標準治療」という言葉が使われることがあります。
標準治療とは、科学的根拠(エビデンス)に基づいた視点で、現在利用できる最良の治療であることが示されており、ある状態の一般的な患者さんに行われることが勧められている治療のことです。多くの場合、医師の勧める治療法は、この標準治療に基づいています。
2.それぞれの治療法のよい面と悪い面の確認を
治療法を決めるに当たっては、あなたが治療を受けたとき「どのような効果が期待できるのか」「どのような副作用や後遺症が、どのくらいの可能性で起こるのか」「再発の可能性は、どの程度なのか」などを担当医に確認します。複数の選択肢がある場合には、それぞれの治療法の自分にとってよい面と悪い面を書き出してみると、問題点を整理できるでしょう。
例えば、手術をすることで、体の機能や器官を部分的に損なう可能性がある場合には、手術ではなく放射線治療や薬物療法(抗がん剤治療)を受けたいと思うことがあるかもしれません。
治療後の療養生活、定期的な通院や治療の予定まで視野に入れた上で、担当医をはじめとする医療者から情報を集め、納得した上であなたにとって最適な治療法を選ぶようにしましょう。自分ひとりで決めるのではなく、家族とよく相談するとよいでしょう。
3.担当医と相談しながら治療法を選択する
がん治療法の大きな柱は、手術治療、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療の3つです。手術だけ、あるいは薬物療法だけを行うこともあれば、2つ以上の治療法を組み合わせる場合もあります。また、がんの種類や進行度、初めての治療か2回目以降かなどによって、治療法の選択肢が複数あることもあります。担当医は、あなたの病気の進行度や状態に合わせて、最適と考えられる治療法やほかの治療法を選択肢として提示し、説明します。
説明を理解し、納得した上で、どの治療法を選ぶかを決めるのはあなたと家族です。わからないことがあれば理解できるまで担当医に質問したり、自分で調べることが大切です。
治療方針について別の医師の意見を聞きたいときには、セカンドオピニオンを参考にすることができます。
中には、告知を受けた衝撃からまだ立ち直れないうちに治療法を選ぶように言われて混乱したり、どの治療法も怖く感じたりすることがあるかもしれません。そんなときは、家族や担当医、看護師、がん相談支援センターなどに、今の気持ちを話してみるとよいでしょう。
自分の病気についての情報を集める
がんの部位や種類によっては、診療(治療)ガイドラインが発行されています。これはさまざまな病状に対して個々の現場が適切な治療決定を行うのを助けるために、診療に関する標準的推奨事項とその根拠がまとめられたものです。ガイドラインの多くは医療従事者を対象として書かれていますが、最近では一般の方向けの「ガイドラインの解説」も発行されるようになってきました。自分にとって最善の治療を担当医と相談して決めていくための参考資料の1つとして活用するとよいでしょう。