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ユーイング肉腫〈小児〉

ユーイング肉腫〈小児〉 治療

ユーイング肉腫の治療は、薬物療法、手術、放射線治療が重要な三本柱です。

ユーイング肉腫は、診断時のX線写真などに、明らかな遠隔転移が映っていない限局例においても、小さな転移(微小転移)があると考えておく必要があるといわれています。

治療方針としては、まず、薬物療法として抗がん剤による微小転移に対する治療(化学療法)を行い、原発巣げんぱつそう腫瘤しゅりゅう縮小を図ります。その後、手術および放射線治療で、腫瘍に対する治療を行います。

骨や骨髄こつずいへの転移が認められた場合は、造血幹細胞移植を併用した大量化学療法が行われることもありますが、無病生存率(再発がなく生存している割合)を改善するというエビデンス(科学的根拠)は得られていません。

現在のところ、骨や骨髄への転移例に対しても、肉腫が領域リンパ節を越えて転移していない限局例に用いられている薬物療法の治療を行うことが、標準とされています。

1.腫瘍の分類

ユーイング肉腫に関しては、一般的に用いられている腫瘍の進展度(病期)分類は使われておらず、主に「限局性」と「転移性」に分類されています。

「限局性」とは、症状や画像検査により腫瘍が原発部位(原発巣)、または領域リンパ節を越えて広がっていない場合をいいます。

「転移性」とは、臨床的および画像診断により遠隔部に転移がある場合をいいます。転移で多いのは肺、骨、骨髄であり、リンパ節転移や中枢神経系(脳や脊髄せきずい)への転移はあまり見られません。

2.薬物療法

現在、利用可能な薬剤のうち、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)に対して有効性が高いものは、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、イホスファミド、エトポシド、アクチノマイシンの6剤です。腫瘍が限局している限局例に対しては、これら薬剤の4~6剤を組み合わせた多剤併用たざいへいよう化学療法を行います。

米国の研究グループは、ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチンとイホスファミド+エトポシドを組み合わせ、3週ごとに交互に治療を行うことにより5年無病生存率(治療開始から5年間経過した時点で再発がなく生存している割合)が69%という結果を報告しています。

国内でも、いくつかの小児がん研究グループの報告があります。2004年から日本ユーイング肉腫研究グループ(JESS:Japan Ewing Sarcoma Study Group)が発足し、参加施設を限定した臨床試験が⾏われており、米国と同様の研究結果が示されました。

現在では顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)を用いて、化学療法の治療間隔を3週間から2週間に縮めることにより、治療効果が向上することが海外で示されたため、国内でもJESSによりその治療の安全性を確認する試験が進行中です。

3.手術(外科療法)

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)では、四肢に発生した場合は手術が推奨されます。しかし、体幹に発生した場合は、肋骨ろっこつなどの胸壁であれば手術(広範切除)が推奨されますが、脊椎の場合など、切除が難しいケースもあります。手術を行うか行わないかを含め、肉腫が発生した部位により判断が異なります。

4.放射線治療

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)は、放射線感受性が高い(放射線による影響を受けやすい)腫瘍として知られています。放射線治療は、薬物療法が発達する以前から、ESFTに対する標準治療の⼀環として用いられてきました。

放射線治療の線量は、50~60Gy(グレイ:放射線の吸収線量を表す単位)が完全に治るために必要な線量(根治量こんちりょう)と考えられていますが、施設や症状により幅があります。照射する部位(正常組織への影響)、手術での切除の範囲(周りの正常組織も含めて切除する広範切除なのか、限定的な辺縁切除なのか)、または、抗がん剤の効き具合によって、照射線量を変更します。照射時期について、手術の前と後のどちらに放射線治療を施行したほうがよいかに関しては、一致した見解はありません。

肺転移が認められた場合は、肺の全域に放射線を当てる全肺ぜんはい照射しょうしゃを行うことで、腫瘍をそれ以上広げない効果があるといわれています(局所制御)。全肺照射を行う場合は、12~14Gyが照射線量として推奨されています。ただし、放射線を照射することによって肺機能に異常が出るという報告もあり、⼗分注意する必要があります。

5.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、学校のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケアは、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげます。がんと診断されたときから始まり、がんの治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができます。

支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。

子どもの素晴らしい点は、適応能力がすぐれていることです。周りの人が障害を理解できれば、子どもは障害を克服する、すぐれた資質をもっています。

本人にしか分からないつらさもありますが、幼い子どもの場合、つらさを我慢したり、あるいは自分で症状を上手く表現できなかったりすることもあります。そのため、周りの人が本人の様子をよく観察したり、声に耳を傾けたりすることが大切です。気になることがあれば積極的に医療者(医師、看護師、薬剤師、理学療法士など)へ伝えましょう。

6.再発した場合の治療

腫瘍が領域リンパ節を越えて広がり転移が認められる場合、発症部位が骨盤や肋骨などの体幹の場合、腫瘍容積が100mL以上、年齢が15歳以上、診断時から2年以内の再発などは、治りにくい因子としてあげられています。

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)の予後はずいぶん改善してきましたが、再発したときの予後は不良であるといわれています。今のところ、再発したあとの治療法は確⽴していません。複数の薬剤を組み合わせた化学療法が行われることがあります。

更新・確認日:2022年10月28日 [ 履歴 ]
履歴
2022年10月28日 「小児がん診療ガイドライン 2016年版」および「原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022」より内容を更新し、ウェブページで公開しました。
2021年07月01日 小児がん情報サービスから移動し、PDFで公開しました。
2014年04月22日 小児がん情報サービスで掲載しました。
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