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腟がん(ちつがん)

更新・確認日:2015年03月11日 [ 履歴 ]
履歴
2015年03月11日 タブ形式に変更しました。「国際産科婦人科連合(FIGO)による病期分類」「米国国立がん研究所(NCI)ウェブサイト」より、内容を更新しました。
2006年10月01日 内容を更新しました。
1996年10月16日 掲載しました。

1.経過観察

治療後は、経過観察のために、定期的に通院します。外来で継続して化学療法や放射線治療を行うこともあります。化学療法の塗り薬を処方された方で、がんが腟の奥にあるため自分で塗れない場合は、通院時に持参して病院で塗ってもらう場合があります。また、放射線治療(腟内照射)を行った場合は、腟内壁同士が癒着していないかも確認します。

経過観察のための通院間隔は、病状や治療後の経過などによって異なります。治療後1年目から2年目は1カ月から3カ月ごと、3年目は3カ月から6カ月ごと、4年目から5年目は6カ月ごと、6年目以降は1年ごとの通院が一般的です。体調に合わせて、検査や治療を継続していきます。体調の変化や後遺症についての問診に続き、必要に応じて触診、内診、直腸診細胞診組織診、場合によっては胸部のX線検査腫瘍マーカーCT検査MRI検査PET検査などを行います。

また、排泄(はいせつ)について、泌尿器科などの医師の診察を受けたり、必要な治療を受けたりすることもあります。

2.治療後に日常生活を送る上で

1)食事について

手術や放射線治療などで卵巣の機能が失われると、女性ホルモンが減少することにより骨密度が低くなるため、骨粗しょう症を引き起こしやすくなります。カルシウムやビタミンDを多く含む食べ物を積極的にとるとともに、適度な運動を心がけましょう。心配であれば骨密度を測定するのもよいでしょう。

  • カルシウム(健康な骨と歯をつくります)は、乳製品、煮干しや干しえびなどの魚介類、ひじきや昆布などの海藻類、ゴマなどに多く含まれています。
  • ビタミンD(カルシウムの吸収をよくし、骨や歯を強くします)は、魚類全般に多く含まれています。
手術後、特に開腹手術の後は、便秘になりやすくなっているため、腸に負担がかかると詰まってしまうこと(腸閉塞[へいそく]/イレウス)があります。このようなトラブルを防ぐために、腸に負担をかけない食べ方をしましょう。

  • 一度にたくさん食べ過ぎないことが大切です。まずは消化のよいものを腹7分目にとどめましょう。特に、食物繊維の多い食べ物については、ゆっくりよくかんで、食べ過ぎないように注意しましょう。柔らかく煮たり、細かく切ったり、調理法を工夫するのも大切です。
  • 炭酸の入っている飲み物(ビール、炭酸飲料など)は腸に負担をかけるため控えめにしましょう。また、お酒も控えめにしましょう。
全般を通じて、栄養のバランスを考え、楽しく気持ちよく食べることが大切です。

2)運動・日常での過ごし方について

退院直後は想像以上に体力が低下しているので、体力の回復を第一に考えることが大切です。しばらくは、疲れたらすぐに横になり、足を高くして休むなど、無理をしないようにしましょう。家事や買い物なども、すべてを急に始めるのではなく、家族に協力してもらいながら、徐々に体を慣らしていきましょう。

おなかに力がかかる動作にも注意が必要です。重いものを持ったり動かしたりするような、腹筋にぐっと力が入る動作は好ましくありません。

運動は体力の回復に合わせて、まずは散歩などの軽い運動から始め、あせらず、少しずつ運動量を増やしていきましょう。運動を始めるのは、家事などの日常生活が元どおりにできるようになってからです。

リンパ節を切除した場合でも運動の制限はありませんが、リンパ液の流れが促進されてリンパ浮腫(ふしゅ)が出たり悪化したりする場合があるので、運動後には必ずリンパマッサージを行いましょう。

散歩で体力に自信がついてきたら、ウオーキングやプールの中で歩くといった軽い運動を始めるとよいでしょう。リンパ浮腫の予防にも役立ちます。

3)性生活・妊娠について

腟を切除することによる性交障害が起こることもあります。

腟がん 治療の選択-3.自分に合った治療法を考える」もご参照ください。

4)女性としてのつらい気持ち

腟がんのような女性特有のがんでは、病気や治療の後遺症、副作用などに加えて、性や妊娠・出産のこと、家族や夫婦関係のことなど、女性としてのつらい気持ちや悩み、心配事が重なることは少なくありません。こうすれば必ずつらい気持ちが軽くなる、らくになるという方法はありませんが、今の自分の気持ちを落ち着いて整理する、担当医や看護師などの医療スタッフに伝える、自分と似た経験をした患者さんの話を患者会などで聞くといったことなどが役に立つかもしれません。パートナー(配偶者・恋人)や家族と一緒に、解決方法を話し合うのもよいでしょう。前向きな気持ちになれない日々が続くのも自然なことととらえて、否定的になりすぎないようにしましょう。

5)治療後の後遺症とその対策

局部切除やレーザー治療では副作用はありませんが、それ以外の外科治療や放射線治療によってさまざまな後遺症が起こることが考えられます。
【後遺症とその対策について、さらに詳しく】

(1)腟全摘出を行った場合

腟はほとんどなくなるため腟内性交はできなくなります。なお、再発のない場合に限り、腟再建手術が行われることもありますが、日本ではほとんど行われていません。性生活は、単に身体的な結びつきにとどまらず、精神的なコミュニケーションの1つとして考えてみてください。まずは性交渉にこだわらず、「抱きしめてもらう」「手をつないで眠る」といったことで不安な気持ちを少しずつ解消していくことをお勧めします。

(2)外陰切除を行った場合

外陰の変形が生じることがあります。それにより、排尿の際に、尿がまっすぐ前ではなく思いもよらない方向へ排出されることがあるので注意しましょう。

(3)子宮を含めて広範囲にわたって切除する手術(広汎子宮全摘出術)を行った場合

●排尿に関する後遺症について

直腸や膀胱(ぼうこう)の排泄を調節する神経がうまく働かなくなることによって、排便や排尿に関わる後遺症が起こることがあります。中でも、尿が出にくくなる、尿がたまっても尿意を感じない、尿が漏れるなどの排尿についての後遺症が多くみられます。

手術の際には、尿道から膀胱に排尿用の管が挿入されます。手術後、症状が落ち着いたら管を抜いて、その後は自分で排尿できるように訓練します。自分で排尿できるようになるまでの時間は個人差がありますので、根気よく訓練することが大切です。尿が出にくいときは腹圧を使い自力で排尿しますが、それだけでは排尿しきれないことが多いので、尿道に管を入れて膀胱に残った尿(残尿)をとります(導尿)。慣れるまでは、遠慮なく看護師に方法を確認してみましょう。神経の回復を待ちながら、徐々に自力で排尿できるようにしていきます。尿意を感じないときには、多めに水分をとって、決まった時間にトイレに行く習慣をつけるようにします。トイレで下腹部をさする程度に軽く押したり、温水洗浄便座のビデで尿道口を刺激したり、自分なりの排尿法を工夫して見つけることが大切です。強くおなかを押して腹圧をかけすぎると、膀胱をいためたり尿が腎臓に逆流したりする可能性があるので注意しましょう。

尿漏れがあるときは、尿漏れ用のパッドなどを利用するとよいでしょう。尿漏れを放っておくと、臭いや皮膚のかゆみ、かぶれなどの症状が出ることもあります。気にかかる症状があるときには、担当医や看護師に相談してみましょう。

●便秘、便が出にくい後遺症について

排尿障害と同じように、神経がうまく働かなくなることによって便秘になる場合があります。放射線治療を行った場合にも、しばらくしてから腸の動きが悪くなり、便秘になることがあります。

朝起きたら1杯の冷たい水を飲むなど、排便を促す工夫をしましょう。食物繊維が多すぎる食事は、イレウス(腸閉塞)の原因になるので注意しましょう。適度な運動も、腸を動かすためには必要です。場合によっては、担当医から、緩下剤が処方されることもあります。

(4)骨盤内や足の付け根(鼠径[そけい]部)のリンパ節を取り除いた場合

●足のむくみ(リンパ浮腫)について

両足から骨盤を通って心臓に戻るリンパ液の流れが滞り、下半身がむくむことがあります。リンパ浮腫のむくみは一般に、太ももの付け根から始まり、大腿(だいたい)部、膝の下、足首、足の甲へと末端に向かって広がっていきます。治療後早期にあらわれることもありますが、数年たってから症状が出ることも少なくありません。リンパ節を取り除いた後に、放射線治療を追加した場合は、いっそうむくみが出やすくなります。

リンパ浮腫を起こさないように、寝るときや椅子に座るときには、できるだけ足を下ろしたままにせず、高めの位置(お尻より少し足を高くする)に保つようにします。また、なるべく、立ったままや座ったままの仕事を避けたり、休みを小まめにとったりする配慮も必要です。

リンパ浮腫によるむくみが出ると足が動かしにくくなりますが、適度に足を動かすことも、むくみの解消に役立ちます。

リンパの流れをよくするための用手的(手を使った)リンパドレナージも効果があります。用手的リンパドレナージとは、腕や足にたまったリンパ液を正常に機能するリンパ節へと誘導して、リンパ浮腫のむくみを改善させるための医療用のマッサージ方法です。一般的に行われているマッサージや、美容目的のリンパドレナージとは異なります。看護師や専門家の指導を受けて、正しくマッサージを行う必要があります。

リンパの流れをよくするマッサージ機器などを利用する場合にも、担当医や看護師に確認した上で、使用方法について説明を受けてからにするとよいでしょう。

昼間は弾性ストッキングをはき、長時間にわたる同じ姿勢や正座を避けます。弾性ストッキングは、足全体に圧力をかけることにより、下に落ちていくリンパ液を圧迫して抑えるものです。就寝中以外、一日中着用するものですから、形を整えて正しく着用することが大切です。サイズもいろいろありますので、医師や看護師に相談してみてください。

医療機関によっては、リンパ浮腫を専門に診療する外来を設けているところもあります。また、リンパ浮腫があるときに細菌感染すると、足が赤く腫(は)れ上がったり、高熱が出るリンパ管炎を引き起こしたりしやすいので、皮膚は清潔に保つ必要があります。足の小さなけがも化膿(かのう)しないように消毒します。気がかりな症状があらわれたときにはマッサージは避け、早めに受診しましょう。

リンパ浮腫によるむくみについて詳しくは「リンパ浮腫」をご参照ください。

(5)閉経前に両側の卵巣を切除する手術や、放射線治療で卵巣の機能が失われた場合

●更年期障害のような症状について

女性ホルモンが減少し、卵巣欠落症状が起こりやすくなります。この症状は、更年期障害に似たもので、ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸(どうき)、不眠、腟分泌液の減少、骨粗しょう症、高脂血症などがみられます。症状の強さや期間は人によって異なりますが、特に若い年齢では症状が強くなります。

血行をよくしたり、精神的にリラックスしたりすることで、症状が軽くなると感じられる方が多いようです。入浴や軽い運動をしたり、音楽を聴いたりするなど、自分に合う方法を探してみましょう。時間とともに症状は徐々に消えていきますが、つらいときは我慢しないで担当医に伝えましょう。必要な場合は、ホルモンを補充する薬が処方されます。
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3.社会復帰

仕事や生活リズム、手術の方法にもよりますが、手術後1カ月半から3カ月ほどでこれまでの生活に戻ることが可能です。

リンパ節郭清を伴わない部分腟壁切除術の場合は、術後2週間程度で退院し、1カ月ほど自宅療養してから社会復帰となります。手術後1カ月半から2カ月程度が社会復帰の目安です。

リンパ節郭清を伴う広汎子宮全摘出術や広汎外陰切除術を行った場合は、下肢のむくみに対処するため、術後3週間程度で退院した後、自宅療養もやや長めに時間をとります。手術後3カ月程度が社会復帰の目安です。

体力が回復するまで時間がかかるので、徐々に体を慣らしてから社会復帰を目指すのが現実的でしょう。また復帰後も、体に負担の大きい仕事はしばらく控えましょう。

退院後はまめに体を動かすことを心がけましょう。まずは、簡単な家事や家の周りの散歩から始め、外出の回数を増やす、体調に合わせて水泳などの軽い運動をしてみるなど、少しずつ行動範囲を広げていきます。痛みがある程度調整できて、体力が回復してくると、これまでの生活リズムに戻したいという意欲がわいてくるので、徐々に社会復帰していきましょう。

なお、退院後1カ月は、腹圧のかかる動作(例:重い荷物を持つ、長時間の立ち仕事・電車通勤、など)は避けることが大切です。

例えば、リンパ節を切除した場合、腹圧がかかるとリンパ浮腫が悪化する恐れがあります。リンパ節を切除していない場合でも、腹圧がかかるとヘルニアになる恐れがあります。また、通勤時の満員電車はできるだけ避け、席に座れる時間帯に通勤するようにしてください。当分は、腹筋を使ったり腹圧がかかったりする動作を避けるために、仕事内容を変更したり、通勤時間をずらしてもらったり、職場と交渉してみましょう。

社会復帰については「働く世代の方へ」もご参照ください。

4.家族や親しい人の理解を得る(治療前・後)

治療前
治療の前は、医師から病状の説明を受ける機会が何度かあります。自分ひとりでは気が動転し、聞き漏らしてしまうこともあるかもしれません。説明のときにはなるべく家族や親しい人に同席してもらい、メモをとりながら話を聞くとよいでしょう。

できれば腟がんについて、パンフレットや本などに目を通しておき、どのような病気か、治療の流れについて大まかに知っておくと担当医の説明がわかりやすくなるはずです。

治療後
治療の後は、体力が低下しており、食生活や日常生活、性生活、職場での活動について注意が必要なこともあるため、不安が生じる場合もあるでしょう。

治療後は、体力の回復が第一です。家事などもすべてを急に始めるのではなく、家族に協力してもらいながら徐々に体を慣らしていきましょう。また、腹圧がかかることを避けるため、お米やしょうゆなど、重いものを買うときは、家族に一緒に出かけてもらい、荷物を持ってもらうとよいでしょう。

食事については、退院祝いなどの機会もあるでしょうが、治療後しばらくの間は、腸に負担のかからない食べ方をしなければならないことを説明して、理解を得ることが大切です。

性生活については、女性器の手術を受けた方の多くが不安を感じているようです。不安を軽減するため、まずは、性交渉にこだわらず、「抱きしめてもらう」「手をつないで眠る」といったことをパートナーと相談してみましょう。また、治療の内容にもよりますが、腟分泌物が少ない、性交痛がつらい、という場合に潤滑剤を使いたいと思ったり、悩んだりしたときは、ひとりでかかえこまずにパートナーに話してください。お互いの心の不安をまず伝え合いましょう。

また、将来の妊娠について気になることがあるときは、パートナーと一緒に担当医に相談に行くのもよいでしょう。

職場では、腹圧がかかる仕事を腹圧のかからないような内容に変更したり、減らしたりしてもらえるように相談することをお勧めします。また、電車通勤で長時間立たなければならない場合は、通勤時間をずらしてもらうなども交渉してみましょう。

卵巣の切除や、放射線治療により卵巣機能が失われた場合は、女性ホルモンの減少に伴い、ほてり、発汗、食欲低下、だるさ、イライラ、頭痛、肩こり、動悸(どうき)、不眠、腟分泌液の減少といった不快な症状が起こりやすくなります。これらの症状が、周囲の人とのコミュニケーションや日常生活に大きく影響する場合は、そのことを説明しておくと、理解が得られやすくなるでしょう。これらの症状がひどい場合は、女性ホルモン剤を補充する場合もありますので、担当医に相談しましょう。

どうしても周囲の理解が得られなかったり、理解が得られるか不安に感じたりする場合などは、心理療法士や精神科医との連携によるサポートを行う場合もありますので、ひとりで悩まずに担当医に相談しましょう。
【参考文献】
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