「免疫療法」は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です
私たちの体は免疫の力によって、発生したがん細胞を排除しています。免疫では、免疫細胞と呼ばれる血液中の白血球などが中心的な役割を果たします。このうち「T細胞(Tリンパ球)」には、がん細胞を攻撃する性質があり、免疫療法で重要な役割を担います。
しかし、下の図のようにT細胞が弱まったり、がん細胞がT細胞にブレーキをかけたりしていると、免疫ががん細胞を排除しきれないことがあります。
免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)ことなどにより、免疫本来の力を利用してがんを攻撃する治療法を「免疫療法」といいます。
「効果が証明された免疫療法」は限られています
現在の免疫療法には、治療効果や安全性が科学的に証明された「効果が証明された免疫療法」と、治療効果や安全性が科学的に証明されていない「効果が証明されていない免疫療法」があります。近年研究開発が進められていますが、「効果が証明された免疫療法」は、まだ一部に限られています。また、治療法や薬ごとにがんの種類も限られているものの、保険診療(公的医療保険)で受けることができます。
「効果が証明された免疫療法」で使用する主な薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)薬である「免疫チェックポイント阻害薬」です。
効果が確認され、治療が行えるがんの種類はそれぞれの免疫チェックポイント阻害薬によって異なるので、担当医に尋ねてみましょう。
2020年8月現在、日本において保険診療で受けることができる「免疫チェックポイント阻害薬」は、ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、イピリムマブ(ヤーボイ)、デュルバルマブ(イミフィンジ)、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)です。
薬の名前は「一般名(商品名)」で示しています。記載方針については関連情報をご覧ください。
「効果が証明されていない免疫療法」のうち、「自由診療として行われる免疫療法」は、治療効果・安全性・費用について慎重な確認が必要です
「効果が証明されていない免疫療法」は、治療費を患者が全額自費で支払う「自由診療として行われる免疫療法」と、治療効果や安全性を確認するために行う、臨床試験や治験などの「研究段階の医療として行われる免疫療法」に分けられます。
「自由診療として行われる免疫療法」は、効果が証明されておらず、医療として確立されたものではありません。「自由診療として行われる免疫療法」を考える場合には、治療効果・安全性・費用について慎重な確認が必要ですので、必ず担当医に話しましょう。また、公的制度に基づく臨床試験、治験などの「研究段階の医療として行われる免疫療法」を熟知した医師にセカンドオピニオンを聞くことをお勧めします。セカンドオピニオンを聞きたいときも、担当医に相談しましょう。
担当医との関係が心配で言い出しにくいと感じるときには、看護師や受付などの医療スタッフや、全国の「がん診療連携拠点病院」などに設置されているがん相談支援センターに相談することもできます。がん相談支援センターでは、よくわからないことや困ったことがあるときにも、相談することができます。
「効果が証明された免疫療法」にも副作用があります
「免疫療法」では、従来の化学療法で起こるような副作用は少ないと報告されています。しかし、「効果が証明された免疫療法」であっても、全身にさまざまな副作用が起こる可能性があります。また、個人差が大きく、いつ、どんな副作用が起こるか予測がつかないため注意が必要です。そのため免疫療法は、副作用に十分に対応できる体制が整っている医療機関で受けることが大切です。