がんの子どもの心や体のケア、家族へのケア、周りの方ができること、制度やサービス、入院治療後の生活、長期フォローアップなどの情報を掲載しています。併せてご活用ください。
1.入院治療中の療養
子どもにとっての入院生活は、検査や治療に向き合う療養生活に加え、発達を促す遊びや学びの場でもあります。医師、看護師、保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)、薬剤師、管理栄養士、理学療法士やソーシャルワーカー、各専門チーム、院内学級の教員などが連携し、多方面から患者とご家族を支援していきます。また、きょうだいがいる場合には、保護者が患者に付き添う時間がどうしても多くなるため、きょうだいの精神的なサポートも重要になります。入院中のさまざまな不安が軽減できるよう、抱え込まずに、多方面と効果的にコミュニケーションを取ることが大切です。
入院治療と入院治療中の注意点
治療の初期段階では、白血病細胞が体に多く存在する状態で治療を開始するため、治療によって白血病細胞が一気に壊れ、その残骸が体内にあふれて腎臓の処理能力を超えてしまうことがあります(腫瘍崩壊症候群といいます)。それを予防するために、治療開始から約1~2週間は点滴を多めにして、残骸を薄める対策を取ります。残骸の中で「尿酸」という物質は腎臓に対して悪影響があるため、尿酸を分解する薬剤を使うこともあります。
また、白血病細胞によって血液をつくる力が抑えられている状態で血液細胞に影響を及ぼす薬を使うため、合併症が起こりやすく、より慎重に治療を行う必要があります。寛解に至った後も、白血球が少なくなっている期間は、感染症により重症化することがあるため、発熱など感染症が疑われる症状がみられた場合には速やかに抗菌薬(抗生物質)や抗真菌薬の投与を開始します。
また、入院治療中は飲み物や食べ物が制限されることもあります。治療の一環として調節されますので必ず医師や看護師などの指示に従ってください。
どんなに気を使っても、空気中の細菌や自分自身の体にいる細菌によって感染症を発症することはありますが、その確率をなるべく減らすために、体調が悪い方との面会は控える、面会の前後に必ず手洗いをするなどについては普段から気をつけましょう。また、ご家族の中に、みずぼうそうや、おたふくかぜなどの「予防接種をしていない」かつ「かかったことがない」方がいる場合は、必ず予防接種を受けるようにしてください。インフルエンザの予防接種も強くお勧めします。
2.経過観察
治療終了後も、体調の変化や再発、合併症の有無、成長に異常がないかなどの確認のため、定期的に通院して経過観察を行います。治療終了後の経過が長くなるほど通院の間隔は延びていきます。5年以降は1年に1回程度の通院となります。
生活の中の一般的な行動が再発に影響することはありませんので、体力面で問題がない範囲で発症前と同じ日常生活に戻ってください。ただし、入院によって筋力が落ちていることが多いので、通学を再開するときは短い時間から徐々に慣らしていくことをお勧めします。経過観察中は免疫力が回復していないこともあるため、近くでみずぼうそうや、はしかなどの特別な感染症が流行した場合は速やかに担当医にご相談ください。
3.晩期合併症
晩期合併症は、成長や時間の経過に伴って治療の影響によって起こる合併症のことです。どのような晩期合併症が出現するかは、病気の種類・受けた治療・治療を受けた年齢などに関連し、症状の程度も異なります。
身体的晩期合併症には、①成長障害(低身長、やせ)、②内分泌障害(成長ホルモン分泌障害、不妊)、③神経障害(運動障害、けいれん、知能障害、認知能力・記憶力・集中力の障害など)、④心機能障害(心筋症、不整脈、心不全など)、⑤骨・歯の異常(骨密度の低下、歯の欠損)、⑥二次がん(二次性脳腫瘍、二次性白血病)などがあります。
急性リンパ性白血病の治療で使用する抗がん薬による晩期合併症は、プレドニゾロンによる骨密度低下や成長障害、メトトレキサートによる認知機能障害や骨粗しょう症などがあります。急性骨髄性白血病の場合は、アントラサイクリン系薬剤による心機能障害、シタラビンによる認知機能障害などが起こることがあります。
中枢神経系再発や精巣再発では放射線治療を行うことがありますが、晩期合併症を少なくするため腫瘍がある部分に限局して弱い線量で行うなどの工夫がされています。