白血病〈小児〉について
1.白血病とは
血液の中にある血液細胞には、酸素を運搬する赤血球、外部から体内に侵入した細菌やウイルスなど異物の排除などを役割とする白血球、出血を止める働きをする血小板があり、骨の中にある骨髄でつくられます。白血病はこのような血液をつくる過程で異常が起こり、血球ががん化した細胞(白血病細胞)となって無制限に増殖することで発症します。
白血病は小児がんの中で最も多い病気です。白血病にはさまざまな種類がありますが、発症する割合は急性リンパ性白血病(ALL)が約70%、急性骨髄性白血病(AML)が約25%です(図1)。急性リンパ性白血病・急性骨髄性白血病は、病気の進行が速いために急に症状が出る場合があります。このような場合は、早期に診断して速やかに治療を開始することが重要です。
1)急性リンパ性白血病(ALL)とは
急性リンパ性白血病(ALL:Acute Lymphoblastic Leukemia)は、白血球の一種であるリンパ球に成長途中の段階で遺伝子異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増殖することで発症します。発症原因の多くは不明です。急性リンパ性白血病は、小児がんの中で最もよくみられる疾患です。
2)急性骨髄性白血病(AML)とは
急性骨髄性白血病(AML:Acute Myeloid Leukemia)は、骨髄で血液をつくる過程で、未熟な血液細胞である骨髄球系前駆細胞に何らかの遺伝子異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が無制限に増殖することで発症します。未熟な血液細胞に遺伝子異常が起こる原因は分かっていません。
血液細胞は造血幹細胞からつくられます
血液細胞は、骨の中心部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞から増殖しながら分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)してつくられます。造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれて成長します。骨髄系幹細胞からは、赤血球、白血球の一種である顆粒球や単球、血小板などがつくられ、リンパ系幹細胞からは白血球の一種であるリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)がつくられます(図2)。
2.症状
代表的な症状は、貧血、出血、感染、肝臓や脾臓の腫れ、発熱、骨痛などです。症状が起こる原因は大きく2つに分類されます。骨髄で白血病細胞が増加することによって造血機能が低下し、正常な血液細胞がつくれないことで起こる場合と、白血病細胞が臓器に増殖することで起こる場合です。中枢神経系(脳と脊髄)で白血病細胞が増殖することもあり、頭痛や吐き気・嘔吐などの症状に注意が必要です。
白血病〈小児〉 検査
診断を行い、治療方針を決めるためには、さまざまな検査が行われます。検査は診断目的だけでなく、病型の確認や骨髄以外の臓器への広がり、合併症の有無を確認する目的でも行います。急性リンパ性白血病では、リスク分類の基準となる白血球数、白血病細胞の種類分け(免疫学的分類)、染色体と遺伝子異常、中枢神経系(脳と脊髄)および精巣浸潤の有無を調べる検査を行います。
1.血液検査
血液中の細胞の増減を調べます。赤血球数や血小板数は減少していることが多いですが、白血球数は増加している場合から減少している場合までさまざまです。顕微鏡で詳しく調べると、血液中に白血病細胞が存在していることがあります。
2.骨髄検査
骨髄穿刺は診断と病型分類のために重要な検査で、治療効果の判定にも用います。腸骨(腰の骨)に針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引して採取します。骨髄穿刺で十分な骨髄液を採取できない場合は、骨髄生検を行うことがあります。骨髄生検では、腸骨にやや太い針を刺し、骨髄組織を採取します。骨髄穿刺や骨髄生検は痛みを伴うため、小児では全身麻酔あるいは鎮静薬を使って行います。
治療開始後に、寛解(症状がなくなり検査結果で白血病細胞が確認できない状態)となっても、体内にはまだ白血病細胞がわずかに残存していることがあります。これを微小残存病変(MRD)といいます。治療効果の確認のために骨髄検査でMRDを調べることもあり、検出された場合は白血病細胞を根絶させるために治療強度を上げることがあります。
3.染色体検査・遺伝子検査
染色体検査や遺伝子検査で、染色体・遺伝子の構造や数の異常を調べます。これらは診断や病型分類、治療方針の決定、治療効果や予後の判定などに重要な検査です。急性リンパ性白血病でみられるフィラデルフィア染色体(BCR-ABL融合遺伝子)や、急性骨髄性白血病でみられる8番染色体と21番染色体の各一部が入れ替わる異常(RUNX1-RUNX1T1融合遺伝子)などを調べます。
4.超音波(エコー)検査・CT検査
臓器の異常や合併症の有無、浸潤が疑われる部位の確認などのため、超音波(エコー)検査やCT検査を行うことがあります。
白血病〈小児〉 治療
急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)の治療では、化学療法(細胞障害性抗がん薬を用いた治療)を基本的に行います。
1.急性リンパ性白血病(ALL)の治療
1)急性リンパ性白血病(ALL)の診断
白血病の診断は、骨髄中の白血病細胞の量と性質で決定されます。骨髄でリンパ芽球が全有核細胞数の25%以上まで増加し、顕微鏡で見た形態および特殊染色で急性リンパ性白血病由来のものと判定された場合に診断されます。また、白血病細胞の細胞表面マーカーによって、大きく前駆B細胞性、成熟B細胞性、T細胞性の3つに分けられており、治療方針を決めるための基準の1つとなります。
2)急性リンパ性白血病(ALL)の治療の選択
急性リンパ性白血病の治療の基本は、細胞障害性抗がん薬を用いた治療(化学療法)です(図3)。化学療法は数種類の薬剤を組み合わせた多剤併用療法で行い、寛解導入療法、強化療法、維持療法の3段階に分けて行います。
3)急性リンパ性白血病(ALL)の治療法
(1)寛解導入療法
白血病細胞の減少と症状の軽減を目的に行います。プレドニゾロン(またはデキサメタゾン)・ビンクリスチン・L-アスパラギナーゼ・アントラサイクリン系の4種類の薬剤を4~5週間かけて投与します。また、中枢神経系(脳と脊髄)への白血病細胞の浸潤を予防するため、メトトレキサートなどの薬剤を脳脊髄液(髄液)の中に注射します。
(2)強化療法
寛解導入療法の終了直後から、さらに白血病細胞を減少させることを目的に行います。早期強化療法では、寛解導入療法で使用していない薬剤を投与します。その後、寛解後強化療法として、寛解導入療法と早期強化療法を繰り返し行います。薬剤が届きにくい中枢神経系への浸潤予防として、メトトレキサートを含む薬剤の髄注療法や点滴による投与を行うこともあります。
(3)維持療法
強化療法に続いて、白血病細胞の根絶と再発予防を目的に行います。メルカプトプリンを連日、メトトレキサートを週1回と、2剤の内服が標準的な治療です。この時期は、学校生活などの通常の生活を送ることができます。維持療法も含め、最低2年間行うことが勧められています。
(4)造血幹細胞移植
初診時の染色体分析で、hypodiploid(低二倍体:通常は46本ある染色体数が44本以下)など予後の悪い染色体異常や遺伝子異常がある場合、または初期の治療反応が不良の場合には、通常の治療では再発のリスクが高いと考えられ、同種造血幹細胞移植が検討されます。
また、寛解導入療法開始後1カ月を経ても寛解にならない場合は、救援化学療法などを行い、寛解に到達できた時点で同種造血幹細胞移植が考慮されます。このほか、乳児急性リンパ性白血病で高リスクの場合や再発時に高リスクの場合など、化学療法のみで治療が難しい場合にも検討されます。
1)フィラデルフィア染色体陽性の場合
フィラデルフィア染色体が陽性の場合は、イマチニブなどの分子標的治療薬(病気の原因となっているタンパク質などの特定の分子にのみ作用するように設計された治療薬)と化学療法の併用を行います。寛解導入療法から維持療法終了までの期間、分子標的治療薬の服用を可能なかぎり継続することが重要です。
2)乳児の場合
1歳未満でKMT2A(MLLともいいます)という遺伝子の変化がある場合は、予後が不良な病型のため強力な多剤併用化学療法を行い、さらに高リスク群では同種造血幹細胞移植が検討されます。KMT2A遺伝子の変化がない場合は、通常の多剤併用化学療法を行います。
3)思春期・若年成人の場合
成人の治療法よりも小児の治療法の方が治療成績は良好です。そのため小児の治療法と同じように、寛解導入療法、強化療法、維持療法の3段階に分かれた多剤併用化学療法を行います。
4)急性リンパ性白血病(ALL)の予後因子
これまでの治療成績より、治療効果に影響するさまざまな要因が明らかになっています。これらを予後因子と呼びます。年齢や初診時の白血球数、白血病細胞の染色体・遺伝子異常、免疫学的分類、初期治療の反応性、中枢神経系への浸潤の有無などによって治療効果が異なります。
2.急性骨髄性白血病(AML)の治療
1)急性骨髄性白血病(AML)の診断
治療方針を決定する上で重要となる分類は病型分類と呼ばれます。治療成績の蓄積や比較のために統一した分類で診断することが重要となるため、国際的にWHO分類(表1)が用いられています。
1) | 特異的染色体異常を有する急性骨髄性白血病 | |
---|---|---|
(a) | t(8;21) (q22;q22.1)、RUNX1-RUNX1T1を有する急性骨髄性白血病 | |
(b) | inv(16) (p13.1q22)またはt(16;16) (p13.1;q22)、CBFB-MYH11を有する急性骨髄性白血病 | |
(c) | PML-RARAを有する急性前骨髄球性白血病 | |
(d) | t(9;11) (p21.3;q23.3)、MLLT3-KMT2Aを有する急性骨髄性白血病 | |
(e) | t(6;9) (p23;q34.1)、DEK-NUP214を有する急性骨髄性白血病 | |
(f) | inv(3) (q21.3q26.2) またはt(3;3) (q21.3;q26.2)、GATA2、MECOMを有する急性骨髄性白血病 | |
(g) | t(1;22) (p13.3;q13.3)、RBM15-MKL1を有する急性骨髄性白血病(巨核芽球性) | |
(h) | 暫定分類:BCR-ABL1遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病 | |
(i) | NPM1遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病 | |
(j) | 両アレルのCEBPA遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病 | |
(k) | 暫定分類:RUNX1遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病 | |
2) | 骨髄異形成関連の変化を有する急性骨髄性白血病 | |
3) | 治療に関連した急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群 | |
4) | 上記以外の急性骨髄性白血病 | |
(a) | 急性骨髄性白血病最未分化型 | |
(b) | 急性骨髄性白血病未分化型 | |
(c) | 急性骨髄性白血病分化型 | |
(d) | 急性骨髄単球性白血病 | |
(e) | 急性単球性白血病および急性単芽球性白血病 | |
(f) | 純赤芽球性白血病 | |
(g) | 急性巨核芽球性白血病 | |
(h) | 急性好塩基球性白血病 | |
(i) | 骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症 | |
5) | 骨髄肉腫 | |
6) | ダウン症候群に関連した骨髄増殖症 | |
(a) | 一過性骨髄異常増殖症(TAM) | |
(b) | ダウン症候群関連骨髄性白血病 | |
*染色体異常の記号の説明
|
Swerdlow SH, editors. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. 2017, IARC. より作成
大きくは、①ダウン症候群に合併した急性骨髄性白血病、②急性前骨髄球性白血病、③それ以外の急性骨髄性白血病の3つの病型に分かれており、それぞれ異なった治療が行われます(図4)。
2)急性骨髄性白血病(AML)の治療の選択
急性骨髄性白血病の治療の基本は、細胞障害性抗がん薬を用いた治療(化学療法)です(図4)。化学療法は、数種類の薬剤を組み合わせた多剤併用療法で行い、寛解導入療法と強化療法に分けて行います。予後因子に基づいて低リスク群・中間リスク群・高リスク群に分類され、それぞれに適した強さの治療を行います。
3)急性骨髄性白血病(AML)の治療法
(1)寛解導入療法
白血病細胞の減少と症状の軽減を目的に行います。アントラサイクリン系の薬剤を3~5日間とシタラビンを7~10日間投与します。また、この2剤にエトポシドを併用する場合もあります。
(2)強化療法
寛解導入療法の終了直後から、さらに白血病細胞を減少させることを目的に行います。アントラサイクリン系の薬剤と大量シタラビン療法を含んだ多剤併用化学療法を行います。寛解導入療法と併せて5~6コース行います。通常、急性リンパ性白血病と異なり維持療法は行いません。
(3)造血幹細胞移植
初診時の染色体・遺伝子異常で、予後が不良な型であった場合や、初期治療の反応性から再発のリスクが高いとされる高リスク群に対しては、寛解が得られた時点で同種造血幹細胞移植が検討されます。
移植のドナーはHLA(白血球の型)が一致するきょうだいの骨髄が第一選択ですが、ドナーがみつからない場合はHLAが一致する非血縁骨髄移植や、非血縁臍帯血移植を行います。これらの治療でも良好な成績が得られています。
1)急性前骨髄球性白血病(APL)の場合
急性前骨髄球性白血病のほとんどで、t(15;17)という染色体異常がみつかります。播種性血管内凝固症候群という重篤な合併症を伴うことがあるため、診断後すぐに治療を開始することが重要です。
寛解導入療法は、全トランスレチノイン酸(ATRA)とアントラサイクリン系の薬剤にシタラビンを加えた多剤併用化学療法です。完全寛解に到達した後は、ATRAとアントラサイクリン系の薬剤を中心とした複数回の強化療法、ATRAによる維持療法を行います。
最近は、ATRAと、ATRAと類似の効果をもつ三酸化ヒ素(ATO)を組み合わせた治療を行うことも多くなってきています。
2)ダウン症候群の患者にAMLが発症した場合
ダウン症候群の患者に発症したAMLは、4歳以下での発症や急性巨核芽球性白血病が多いなどの特徴があります。治療による合併症が起こりやすい一方で治療の反応性は良いことから、アントラサイクリン系の薬剤とシタラビンを中心とした、通常の急性骨髄性白血病の治療より強度を弱めた多剤併用化学療法を行います。
3.緩和ケア/支持療法
1)緩和ケアについて
痛みには身体的な痛みと精神的な痛みがありますが、両方が入り混じって、どちらとも区別できない場合もあります。医療者と家族は子どもが訴える痛みを受け止め、よく話し合って対処することが大切です。
最近は新しい鎮痛薬が次々に開発され、身体的痛みはうまくコントロールされるようになってきました。飲み薬や点滴注射のほか、貼り薬や坐薬などもあります。細胞障害性抗がん薬を上手に使うことで、痛みがやわらぐことももちろんあります。モルヒネなどの医療用麻薬はあまり使いたくないという人もいますが、適当な時期に適切に使えば決して怖い薬ではありません。
2)支持療法について
支持療法とは、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くするための予防、治療およびケアのことを指します。
細胞障害性抗がん薬を使うと、血液をつくる力が一時的に抑制されます(骨髄抑制)。その回復を待つ間、赤血球や血小板の減少に対しては輸血を行って対処します。また、白血球が減少している間は免疫力が低下しているため、外泊はできません。熱が出た場合はたとえ元気であっても重篤な感染症になってしまう可能性があるため、抗菌薬(抗生物質)を早めに使うことになります。また、免疫力の低下している状態が長く続くと「ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)」という肺炎になってしまうことがあり、予防するために「ST合剤(バクタ、ダイフェン)」を飲むこともあります。また、細胞障害性抗がん薬は吐き気を引き起こすことがあるため、吐き気止めを使って症状の緩和を手助けします。
4.再発
再発とは、治療によって検査上がんが認められなくなった後、再びがんが出現することをいいます。治療後は、定期的に通院して経過をみることが大切です。
1)急性リンパ性白血病(ALL)の再発時の治療
再発時期、部位、白血病細胞の免疫学的分類に基づいて、リスク分類(低リスク・中間リスク・高リスク群)し、それぞれに応じた治療を行います。
初発時と同様に多剤併用の化学療法が基本です。中間リスク群では、寛解導入療法後に寛解かつ微小残存病変(MRD)が陰性化した場合は化学療法を継続します。中間リスク群で寛解導入療法後のMRDが残存する場合や、高リスク群の場合は、救援化学療法などで寛解に到達できた時点で同種造血幹細胞移植が検討されます。ブリナツモマブやイノツズマブ・オゾガマイシンといった抗体薬が使用されることもあります。また、再発後に寛解が得られない場合や、造血幹細胞移植後の再発の場合は、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法(CAR-T)が行われることがあります。
低リスク群は、中枢神経や精巣などの骨髄外のみの晩期再発である場合に該当します。中枢神経再発では、多剤併用化学療法と髄注による中枢神経治療の後、局所放射線照射と維持療法を行います。精巣単独再発では、局所治療(放射線治療や手術)と多剤併用化学療法を行います。
2)急性骨髄性白血病(AML)の再発時の治療
多くの場合は骨髄中のみの再発です。初発時と同様、アントラサイクリン系の薬剤とシタラビンなどを組み合わせた寛解導入療法が行われます。寛解が得られた時点で、同種造血幹細胞移植を行うことが勧められます。
2022年06月06日 | 構成を変更し、内容を更新しました。 |
2021年11月08日 | 関連情報に「小児白血病・リンパ腫の診療ガイドライン 第1章急性リンパ性白血病 ALL」「小児白血病・リンパ腫の診療ガイドライン 第2章急性骨髄性白血病 AML」を追加しました。 |
2018年03月07日 | 4タブ形式に変更し、「臨床試験」の項目を追加しました。 |
2017年02月01日 | 「小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版」「造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版)」より内容を更新しました。 |
2016年07月08日 | 特殊なタイプに対しての治療「PL」を「APL」に修正しました。 |
2014年04月22日 | 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。 |
白血病〈小児〉 療養
がんの子どもの心や体のケア、家族へのケア、周りの方ができること、制度やサービス、入院治療後の生活、長期フォローアップなどの情報を掲載しています。併せてご活用ください。
1.入院治療中の療養
子どもにとっての入院生活は、検査や治療に向き合う療養生活に加え、発達を促す遊びや学びの場でもあります。医師、看護師、保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)、薬剤師、管理栄養士、理学療法士やソーシャルワーカー、各専門チーム、院内学級の教員などが連携し、多方面から患者とご家族を支援していきます。また、きょうだいがいる場合には、保護者が患者に付き添う時間がどうしても多くなるため、きょうだいの精神的なサポートも重要になります。入院中のさまざまな不安が軽減できるよう、抱え込まずに、多方面と効果的にコミュニケーションを取ることが大切です。
入院治療と入院治療中の注意点
治療の初期段階では、白血病細胞が体に多く存在する状態で治療を開始するため、治療によって白血病細胞が一気に壊れ、その残骸が体内にあふれて腎臓の処理能力を超えてしまうことがあります(腫瘍崩壊症候群といいます)。それを予防するために、治療開始から約1~2週間は点滴を多めにして、残骸を薄める対策を取ります。残骸の中で「尿酸」という物質は腎臓に対して悪影響があるため、尿酸を分解する薬剤を使うこともあります。
また、白血病細胞によって血液をつくる力が抑えられている状態で血液細胞に影響を及ぼす薬を使うため、合併症が起こりやすく、より慎重に治療を行う必要があります。寛解に至った後も、白血球が少なくなっている期間は、感染症により重症化することがあるため、発熱など感染症が疑われる症状がみられた場合には速やかに抗菌薬(抗生物質)や抗真菌薬の投与を開始します。
また、入院治療中は飲み物や食べ物が制限されることもあります。治療の一環として調節されますので必ず医師や看護師などの指示に従ってください。
どんなに気を使っても、空気中の細菌や自分自身の体にいる細菌によって感染症を発症することはありますが、その確率をなるべく減らすために、体調が悪い方との面会は控える、面会の前後に必ず手洗いをするなどについては普段から気をつけましょう。また、ご家族の中に、みずぼうそうや、おたふくかぜなどの「予防接種をしていない」かつ「かかったことがない」方がいる場合は、必ず予防接種を受けるようにしてください。インフルエンザの予防接種も強くお勧めします。
2.経過観察
治療終了後も、体調の変化や再発、合併症の有無、成長に異常がないかなどの確認のため、定期的に通院して経過観察を行います。治療終了後の経過が長くなるほど通院の間隔は延びていきます。5年以降は1年に1回程度の通院となります。
生活の中の一般的な行動が再発に影響することはありませんので、体力面で問題がない範囲で発症前と同じ日常生活に戻ってください。ただし、入院によって筋力が落ちていることが多いので、通学を再開するときは短い時間から徐々に慣らしていくことをお勧めします。経過観察中は免疫力が回復していないこともあるため、近くでみずぼうそうや、はしかなどの特別な感染症が流行した場合は速やかに担当医にご相談ください。
3.晩期合併症
晩期合併症は、成長や時間の経過に伴って治療の影響によって起こる合併症のことです。どのような晩期合併症が出現するかは、病気の種類・受けた治療・治療を受けた年齢などに関連し、症状の程度も異なります。
身体的晩期合併症には、①成長障害(低身長、やせ)、②内分泌障害(成長ホルモン分泌障害、不妊)、③神経障害(運動障害、けいれん、知能障害、認知能力・記憶力・集中力の障害など)、④心機能障害(心筋症、不整脈、心不全など)、⑤骨・歯の異常(骨密度の低下、歯の欠損)、⑥二次がん(二次性脳腫瘍、二次性白血病)などがあります。
急性リンパ性白血病の治療で使用する抗がん薬による晩期合併症は、プレドニゾロンによる骨密度低下や成長障害、メトトレキサートによる認知機能障害や骨粗しょう症などがあります。急性骨髄性白血病の場合は、アントラサイクリン系薬剤による心機能障害、シタラビンによる認知機能障害などが起こることがあります。
中枢神経系再発や精巣再発では放射線治療を行うことがありますが、晩期合併症を少なくするため腫瘍がある部分に限局して弱い線量で行うなどの工夫がされています。
白血病〈小児〉 臨床試験
よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験による研究段階の医療が行われています。
現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。
白血病〈小児〉の臨床試験を探す
国内で行われている白血病〈小児〉の臨床試験が検索できます。
がんの臨床試験を探す チャットで検索
※入力ボックスに「白血病」と入れて検索を始めてください。チャット形式で検索することができます。
- 臨床試験への参加を検討したい場合には、今おかかりの担当医にご相談ください。
- がんの種類によっては、臨床試験が見つからないこともあります。また、見つかったとしても、必ず参加できるとは限りません。
白血病〈小児〉 患者数(がん統計)
1.患者数
急性リンパ性白血病は、日本では年間約500人が新たに診断されています。
急性骨髄性白血病は、日本では年間約180人が新たに診断されています。
2.生存率
小児がんの生存率に関する情報です。
白血病〈小児〉 関連リンク・参考資料
1.白血病〈小児〉の相談先・病院を探す
2.参考資料
- 日本小児血液・がん学会編.小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版 第3版.2016年,金原出版.
- JCCG長期フォローアップ委員会長期フォローアップガイドライン作成ワーキンググループ編.小児がん治療後の長期フォローアップガイド.2021年,クリニコ出版.
- Daniel A. Arber, et al. The 2016 revision to the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia. Blood. 2016; 127(20): 2392.
- Jeffrey E. Rubnitz, et al. How I treat pediatric acute myeloid leukemia. Blood. 2021; 138(12): 1009-1018.
- Patrick Brown, et al. Pediatric Acute Lymphoblastic Leukemia, Version 2.2020, NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. J Natl Compr Canc Netw. 2020; 18(1): 81-112.
- Swerdlow SH, editors. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. 2017, IARC.
作成協力
2022年06月06日 | 内容を更新しました。 |
2021年07月01日 | 「1.白血病〈小児〉の相談先・病院を探す」を追加しました。 |
2019年06月20日 | タイトルに〈小児〉を追記し、本文に「血液・リンパ【白血病】」へのリンクを追加しました。 |
2018年03月07日 | 4タブ形式に変更しました。 |
2017年02月01日 | 「小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版」「造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版)」より内容を更新しました。 |
2014年04月22日 | 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。 |