1.神経芽腫の発生部位について
神経芽腫は、主に交感神経節や副腎髄質などから発生することが分かっています(図1)。
交感神経節は、脊椎(背骨)に沿って縦に連なる交感神経幹(神経線維の束)の中に並んでいる交感神経の集まりです。自律神経の1つで、内臓の働きを調節したり、血管を収縮させる働きがあります。
副腎髄質は、左右の腎臓の上にある副腎の中心部で、アドレナリンやノルアドレナリンという物質を分泌して、体のストレス反応などの調節を行っています。
2.神経芽腫とは
神経芽腫は、体幹(手足を除いた体の軸となる部分)の交感神経節や副腎髄質などから発生する小児がんの1つです。約65%が腹部で発生し、その半数は副腎髄質から発生します。その他では、頸部、胸部、骨盤部などからも発生します。
神経芽腫は5歳未満の小児に多く見られます。腫瘍には、悪性度の高いもの、自然に小さくなっていくもの(自然退縮)など、さまざまな種類がありますが、1歳半未満の小児では、予後が良好であることが多いです。
病理分類(組織分類)
腫瘍組織の病理分類では、神経芽腫、神経節芽腫、神経節腫の3つがあり、これら3つを総称して神経芽腫群腫瘍といわれています。ただし、神経節腫は良性腫瘍で、一般的には、小児がんである悪性腫瘍は、神経芽腫と神経節芽腫の2つを指します。
3.症状
初期の段階では、ほとんどが無症状です。進行してくると、おなかが腫れたり、触ったときに硬いしこりが触れて分かる場合があります。さらに発熱、貧血、不機嫌、歩かなくなる、眼瞼(まぶた)の腫れや皮下出血など、転移した場所(骨・骨髄など)によってさまざまな症状があらわれます。胸部から発生すると咳や息苦しさ、肩から腕の痛みなどが見られることがあります。腫瘍が脊柱の中に進展して、脊髄神経を圧迫すると、下肢麻痺(下半身の麻痺:排尿や排便の障害、歩行の障害など)を生じることもあります。また、特異的な症状として、眼球クローヌス/ミオクローヌス症候群と呼ばれる、目をきょろきょろさせたり、自分の意志とは無関係な動きをしたりすることがあります。
4.発生要因
神経芽腫の発生要因は、多くの場合は不明であり、遺伝や生活環境など特定の原因によるものではありません。