がんと診断されてから治療が始まるまでには、多くの場合、時間がかかります。ここでは、がんであることが確定する(確定診断)までの本人や家族としての気持ち、セカンドオピニオンなどに関する体験談を紹介します。
1.検査・セカンドオピニオン
細胞診の結果が出るまでの不安
世間は明るいクリスマス。そんななか、僕は甲状腺がんの疑いがあると言われており、完全に声が嗄れた状態だった。「こんなに急に進行するとは、よほどたちの悪いがんなのか」という思いもあったが、当時は「命より大切」と思っていた声を失ったショックのほうがずっと大きかった。失った声が戻ってくるのかどうかが重大だった。
詳しい診断のために、首に針を刺す細胞診を受け、医師からは「けっして大学病院から離れないでください」と言われていた。「結果が出るのは、本来なら年明けです。でもそれでは正月を越すのも嫌でしょうから、年末に結果を出すようにします」と配慮してくれた。
そして年末。結果は「甲状腺乳頭がん」であった。甲状腺がんのなかでは比較的予後がいいといわれる種類のがんだ。医師からは、喉頭全摘はしないが、声は最低限しか戻らないと言われた。声を完全に失う最悪の事態は避けられた!思わずガッツポーズをしてしまった。その後受けたPET検査やCT検査では、転移などの異常は見つからなかった。
あれから4年半、声は回復手術をして元通りではないが、ほぼ日常生活に差し障りがないところまで回復している。
(50代 男性)
受けてよかった「セカンドオピニオン」
膀胱がんで膀胱を全摘出した4年後、今度は肺にがんが見つかりました。がんは横隔膜のすぐそばにあり、細胞の採取時に横隔膜を傷つける心配があること、PET検査でほかにがんが見つからなかったことから、手術で病変部を摘出して病理検査を行い、膀胱がんが肺に転移したことが判明しました。
主治医から、抗がん剤による治療を勧められましたが、今一つ納得できなかったので、セカンドオピニオンを受けました。抗がん剤治療の必要性を中心に質問し、詳しく説明していただきました。「転移は、何もないところからいきなり発生することはない。膀胱がんの手術をした時点で肺に転移していて(見えなかっただけで、膀胱の外に出ていた)、4年間で見える大きさに育ち、今回発見されたということ。まだ目に見えていないところに転移している可能性は高いが、細胞の数は圧倒的に少ないので、抗がん剤が効く可能性が高い」ということが理解できました。セカンドオピニオンの先生からは、ステージ4で転移は楽観視できないので、手立てのあるうちに治療したほうがよいと勧められました。
結果としては、主治医の先生と同じ見解でしたが、1時間しっかり説明を聞き、細かいところまで質問できたので納得して治療を受けることができました。セカンドオピニオンは意思決定のために必要で、受けてよかったと思います。
(60代 男性)
2.家族としての関わり
突然の診断を受けた家族としての戸惑い:医療者の情報の伝え方で変わる見え方・捉え方
私の姉と兄は、ふたりとも同じ膵がんでした。兄は49歳のときに、食欲不振、腰背部痛を訴え、病院を受診。最初は「胃潰瘍かな」と軽い気持ちで病院へ行きました。一通りの検査を行った結果「胃がんの可能性が高い。肝臓も転移あり。今日の検査では、がん細胞が見つからなかったので、後日再度胃カメラをし、結果が出るまでさらに2週間かかる。確定診断はその後になる」「できる治療は抗がん剤のみ。抗がん剤をしても年単位の延命は難しい」と告げられ、あまりにも突然のことに戸惑いながらも、こちらからセカンドオピニオンしたい旨をお伝えするも「セカンドオピニオンするならいくらでも協力しますが、時間とお金がかかりますよ」と、本人を前にそう説明を受けました。がん細胞が見つからないとは? 確定診断まで2週間も待たなければならないのか、その間に進行してしまうのではないか、セカンドオピニオンを勧められないということは、もう治療選択の余地もないのか、と検査に対する疑問がふくらんでいきました。がんだとしたら、1日でも早く治療したい。時間がないかもしれない。2週間以上も待っていられない。とにかくいても立ってもいられない。そんな焦りがあり、冷静な判断が難しい時期だったように思います。初診の先生に対し、一部不信感をもってしまったため、別の病院へ行き、一から検査のし直しをしていただいたところ「膵尾部がん、多発性肝転移」であることがわかりました。
姉は、56歳のときに膵頭部がんが見つかりました。3年前に兄が膵がんになった際「家族性膵がん」という言葉を見つけました。姉と私は「もしかしたら私たちも膵がんのリスクがあるかもしれないから、少しでも異常があれば早めに病院に行くようにしようね」と話していました。ある日、姉から「背中が痛くて最近寝付けない」と連絡がありました。「我慢できる程度の痛みだけど、弟のこともあるから早めに病院行こうかな」と、近所の個人病院を受診しました。採血結果に異常はありませんでしたが、担当医へ家族歴を伝えたところ「不安要素を取り除くためにも、念のため、大きな病院でCT検査を受けましょう」と提案を受けました。何でもないことを証明するための検査を受けに、姉は1人で大きな病院へ行ったのですが、その日の診察で「膵がんです」と告げられ帰されました。そんな辛い宣告を1人で聞かせてしまい、家族として大きな後悔が残っていますが、膵がんのリスクを知っていたことが、早期発見につながり、姉はその後、手術することができました。
(50代 女性)