1.前立腺について
前立腺は男性のみにある臓器です。膀胱の出口側に尿道のまわりを取り囲むように位置し、後面は直腸に接しています。栗の実のような形をしています(図1)。
前立腺は精液の一部となる前立腺液をつくっています。前立腺液には、PSAというタンパク質が含まれています。ほとんどのPSAは前立腺から精液中に分泌されますが、ごく一部は血液中に取り込まれます。
2.前立腺がんとは
前立腺がんは、前立腺の細胞が何らかの原因で異常に増殖することにより起こる病気で、悪性腫瘍の1つです。多くの場合比較的ゆっくり進行し、早期に発見して適切な治療を行えば、治癒が望めます。
前立腺がんは、進行すると精のうや膀胱、直腸など周囲の組織に浸潤することがあります。また、リンパ節や骨に転移することがあり、肺、肝臓、脳などに遠隔転移することもあります。
一方、前立腺がんの中には、進行がゆっくりで、寿命に影響しないと考えられるがんもあります。例えば、他の病気で亡くなった人の病理解剖で前立腺がんが見つかることがあります。このような、死後に初めて発見されるがんのことをラテントがんといいますが、前立腺がんでは多いことが知られています。
がんの種類(組織型)について
前立腺がんのほとんどは腺がんです。正常な細胞の形や大きさに近くて性質のおとなしいもの、正常細胞からかけ離れた性質の悪いもの、そして両者の中間のものがあり、以前はグリーソン分類として5段階の組織型(パターン1~5)に分けられていました。現在は、パターン3~5をがんと判定し、パターン1~2はがんとみなさなくなったため、3段階の分類に変わっています。パターン3が最もおとなしいがんでパターン5が最も性質の悪いがんとなります。
ただし、前立腺がんは同時に悪性度(増えやすさ、広がりやすさ)の異なるがんが発生して共存することが多いため、各組織型の割合とその悪性度からスコア化を行って、全体の悪性度の判定に用います(グリーソンスコア)。グリーソンスコアについては、関連情報「前立腺がん 治療 1.リスク分類と治療の選択 2)前立腺がんのリスク分類」もご覧ください。
3.症状
早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありません。ただし、尿が出にくい、排尿の回数が多いなどの症状が出ることもあります。
進行すると、上記のような排尿の症状に加えて、血尿や排尿痛、骨への転移による腰痛などがみられることがあります。気になる症状がある場合には、早めに泌尿器科を受診することが大切です。
4.関連する疾患
前立腺肥大症
前立腺がんに似た排尿の症状があらわれる病気に、前立腺肥大症があります。前立腺肥大症は、前立腺を作っているさまざまな細胞が増殖して前立腺が大きくなる(肥大する)良性の病気で、加齢に伴って多くみられるようになります。主な症状は、尿が出にくい、尿の切れが悪い、排尿後もすっきりしない、夜間にトイレに立つ回数が多い、我慢ができずに尿をもらしてしまうなどです。
前立腺がんとは全く別の病気で、前立腺肥大症から前立腺がんに変化することはありませんが、前立腺肥大症の治療中に前立腺がんが見つかるなど、2つの病気が並行して起こることもあります。
2024年07月30日 | 「前立腺癌診療ガイドライン 2023年版」「泌尿器科・病理・放射線科前立腺癌取扱い規約 第5版」より、内容を更新しました |
2021年02月24日 | 「5.患者数(がん統計)」を更新しました。 |
2019年07月24日 | 用語集へのリンクを追加しました。 |
2017年07月26日 | 「前立腺癌診療ガイドライン 2016年版」より、内容の更新をしました。4タブ形式に変更しました。 |
2014年11月18日 | 「4.疫学・統計」を更新しました。 |
2013年11月08日 | 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。 |
2006年10月01日 | 内容を更新しました。 |
1996年10月16日 | 掲載しました。 |