1.腎臓について
腎臓は、ソラマメのような形をした、成人の握りこぶしよりもやや大きい臓器です。腹部に左右1つずつあり、腸管全体を包み込む腹膜と背中の間にあたる、後腹膜腔という場所に位置しています。高さとしては、ちょうど肋骨の下端あたりです。
腎臓の主な働きは、血液をろ過して尿をつくることです。尿は腎実質(実質はさらに皮質と髄質に分けられます)でつくられ、腎盂に集められたあと、尿管を通って膀胱へと送られます。また、腎臓は血圧のコントロールや造血に関するホルモンの生成もしています。

2.腎細胞がんとは
腎細胞がんは、腎臓にできるがんのうち、腎実質の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものです。同じ腎臓にできたがんでも、腎盂にある細胞ががん化したものは「腎盂がん」と呼ばれ、腎細胞がんとは区別されます。腎細胞がんと腎盂がんでは、がんの性質や治療法が異なるためです。ここでは、腎細胞がんについて解説します。なお、一般的に「腎がん」とは腎細胞がんのことをいいます。
3.症状
腎細胞がんには、特徴的な症状はありません。そのため、小さいうちに発見される腎細胞がんは、他の病気のための検診や精密検査などで、偶然に発見されるものがほとんどです。肺や脳、骨に転移したがんが先に見つかり、結果として腎細胞がんが見つかることも少なくありません。
腎細胞がんが大きくなると、血尿が出たり、背中・腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、吐き気や便秘、おなかの痛みなどが生じたりすることもあります。気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
4.組織型分類(がんの組織の状態による分類)
腎細胞がんは、顕微鏡下でのがん組織の見え方によって、いくつかの組織型に分類されます。同じがんの中に、複数の組織型が混在していることもあります。
腎細胞がんの組織型は、治療を選択するときの判断材料の1つです。また、組織型によって、病状の進行や良くなる傾向も異なることが知られています。