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全ページ表示がんの冊子腎細胞がん(じんさいぼうがん)

更新・確認日:2017年12月25日 [ 履歴 ]
履歴
2017年12月25日 「腎癌診療ガイドライン2017年版」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2013年11月22日 タブ形式への移行と内容の更新をしました。
2006年10月01日 更新しました。
1997年03月24日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期

腎細胞がんの病期(表2)は、がんの進展の程度を示すTNM分類(表1)に基づいて決められています。Tは原発腫瘍(primary Tumor)、Nは所属リンパ節(regional lymph Nodes)、Mは遠隔転移(distant Metastasis)を意味します。
表1 腎細胞がんの進展度(TNM分類)
表1 腎細胞がんの進展度(TNM分類)
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日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編「泌尿器科・病理・放射線科 腎癌取扱い規約 第4版(2011年)」(金原出版)より作成
表2 腎細胞がんの病期分類
表2 腎細胞がんの病期分類
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日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編「泌尿器科・病理・放射線科 腎癌取扱い規約 第4版(2011年)」(金原出版)より改変

●予後予測因子を用いたリスク分類について

予後とは、病気や治療などの、医学的な経過についての見通しのことです。腎細胞がんでは、予後を予測する判断材料として、予後と関連する複数の項目(予後予測因子)があり、予後予測分類(リスク分類)は治療の選択に用いられています。

(1)MSKCC分類

MSKCC分類は、米国のMemorial Sloan-Kettering Cancer Center(MSKCC)のMotzerらによって提唱された、予後を予測するための分類方法です。転移性の腎細胞がんの予後を予測する指標として用いられています。

表3に示す5つの項目が予後と関連することが知られており、これらの項目を何個満たしているかで、3つのリスクグループ(低リスク・中リスク・高リスク)のどこにあてはまるかが決まります。
表3 転移性の腎細胞がんの予後予測分類(MSKCC分類)
表3 転移性の腎細胞がんの予後予測分類(MSKCC分類)
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日本泌尿器科学会編「腎癌診療ガイドライン2017年版」(メディカルレビュー社)より改変

(2)IMDC分類

IMDC分類は、Hengらによって提唱された、予後を予測するための分類方法です。分子標的治療の予後を予測する指標として用いられています。

表4に示す6つの項目が予後と関連することが知られており、これらの項目を何個満たしているかで、3つのリスクグループ(低リスク・中リスク・高リスク)のどこにあてはまるかが決まります。
表4 転移性腎がんの予後予測分類(IMDC分類)
表4 転移性腎がんの予後予測分類(IMDC分類)
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日本泌尿器科学会編「腎癌診療ガイドライン2017年版」(メディカルレビュー社)より改変

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含め検討し、担当医とともに決めていきます。

腎細胞がんに対する標準治療は「手術(外科治療)」ですが、がんが小さい場合は、体への負担が手術よりも少ない「局所療法」が選択されることも増えてきています。また、がんが広がっていたり、転移がみられたりする場合に、薬物療法や放射線治療を行うこともあります。
図2は、I期・II期・III期の腎細胞がんに対する治療方法を、図3はIV期の腎細胞がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図2 腎細胞がんの治療の選択(I期・II期・III期)
図2 腎細胞がんの治療の選択(I期・II期・III期)
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日本泌尿器科学会編「腎癌診療ガイドライン2017年版」(メディカルレビュー社)より改変
図3 腎細胞がんの治療の選択(IV期)
図3 腎細胞がんの治療の選択(IV期)
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日本泌尿器科学会編「腎癌診療ガイドライン2017年版」(メディカルレビュー社)より改変

●妊娠や出産について

がんの治療が、妊娠や出産に影響することがあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕(にんよう)性温存治療(妊娠できる可能性を保つ治療)が可能か、治療開始前に担当医に相談してみましょう。

2.監視療法

手術などの治療をせず、CT検査、MRI検査、超音波検査の画像検査を定期的に行いながら、がんや体の状態などの経過を観察することを監視療法といいます。がんが小さく、腎臓内にとどまっているような、いわゆる早期のがんの場合に選択されることがあります。特に、高齢であったり、他の病気にかかっていたりするために、手術をするには危険性が高い患者さんでは選択肢の1つです。

3.手術(外科治療)

一般的には、腎摘除術が標準的な術式です。しかし、近年の画像診断技術の向上などに伴って、がんがまだ小さいうちに見つかることが多くなってきたため、可能であれば腎部分切除術を行うことも増えてきました。

手術の術式としては、おなかを切開して行う「開腹手術」や、おなかに開けた小さな穴から腹腔鏡を入れて行う「腹腔鏡下手術(後腹膜鏡下手術)」があります。腎部分切除術では、手術用ロボットを遠隔操作して行う「ロボット支援手術」もあります。

手術の術式は、がんや体の状態などによって決められます。

1)腎部分切除術(腎機能温存手術)

がんを取り除くために、がんが生じている部位の腎臓を部分的に切除する術式です。残った腎臓の機能を温存できるという利点があり、長期的な視点でみたときに、腎機能の低下とそれに伴う合併症への影響を小さくできることから、より好ましい術式であると考えられています。主に4cm以下の小さながんの場合に選択されますが、がんの位置などによっては選択できない場合があります。

2)腎摘除術(根治的腎摘除術)

がんのある側の腎臓をすべて取り除く術式です。腎部分切除術の実施が適切ではない場合に選択されます。腎臓の頭側にある副腎を一緒に切除するかどうかは、がんの位置や副腎への転移の有無をふまえて決められます。がんの状況によっては、腎臓だけでなく、周囲の臓器や、血管内にあるがんを切除(静脈内腫瘍塞栓摘除[そくせんてきじょ]術)することもあります。

3)手術の合併症について

通常は、手術で片方の腎臓を摘出しても、残ったもう片方の腎臓で機能を補うことができるため、日常生活に支障を来すことはあまりありません。しかし、自分の腎臓の機能のみでは生命維持が難しい場合には、人工透析を行います。

4.局所療法

どこの施設でも行うことができるという一般的な方法ではありませんが、状況に応じて選択されることがあります。

1)動脈塞栓術

腎臓に血液を送っている腎動脈を人工的に閉塞させることで、がんに血液が流れ込まないようにする方法です。がんの摘出ができない場合や、大きながんを摘出する場合に、手術に先立って行われることもあります。治療後、一時的に発熱や痛みなどが起こることがあります。

2)経皮的局所療法

小さいがんに対する経皮的局所療法として、経皮的凍結療法、ラジオ波焼灼術(RFA)があります。体の外から特殊な針をがんに直接刺し、凍らせたり、熱で焼いたりしてがん細胞を死滅させる方法です。通常、超音波検査、CT検査、MRI検査を用いて確認しながら行われます。高齢者や、重篤な合併症をもつ場合、手術を希望しない場合に選択されることがあります。

(1)経皮的凍結療法

がんに向かって針を刺し、アルゴンガスを用いて組織を凍らせることで、がん細胞を死滅させます。

(2)ラジオ波焼灼術(RFA)

がんに向かって針を刺し、高周波電流により発生させた熱で焼くことで、がん細胞を死滅させます。ただし、腎細胞がんでは、現在のところ保険診療で受けることはできません。

5.放射線治療

放射線治療は、高エネルギーのX線を照射することで、がん細胞を死滅させる治療法です。脳や骨に転移がある場合、がんの進行を抑えたり、痛みを和らげたりするために行うことがあります。腎臓にあるがんへの放射線治療は有用性が低いとされており、腎細胞がんそのものに対しては、根治的な治療を目的として放射線治療を行うことはあまりありません。

6.薬物療法

腎細胞がんの薬物療法には、分子標的治療、免疫療法があります。薬物療法の主流は、長らく、免疫療法の1つであるサイトカイン療法でしたが、現在では、分子標的治療が1次治療(初回治療)の標準治療となっています。

薬物療法に用いる薬剤は、がんや体の状態、前の治療で使用した薬剤の種類をふまえて選択します。

1)分子標的治療

分子標的治療は、腎臓にあるがんやそこから転移したがんを手術で取り除く前に、がんの大きさを小さくする目的で行われることもあります。

治療によってあらわれる副作用は、使用する薬剤ごとに異なるため、期待される治療効果と副作用について、治療開始前に十分な説明を受けましょう。
使用する薬剤は、スニチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、テムシロリムス、エベロリムスです。1次治療だけでなく、2次治療、3次治療でも選択されます。

2)免疫療法

免疫療法とは、サイトカイン療法や、免疫チェックポイント阻害剤による薬物療法のことです。進行性の腎細胞がんの場合に選択されることがあります。

(1)サイトカイン療法

1次治療で、分子標的薬の使用が適さない場合は、サイトカイン療法も選択肢の1つです。インターフェロンαやインターロイキン-2の薬剤が用いられます。

治療によってあらわれる副作用の症状はさまざまです。個人差が大きいですが、一般的には、発熱やだるさ、食欲不振、悪心・嘔吐(おうと)、頭痛、脱毛、白血球減少などが報告されています。

(2)免疫抑制阻害療法(免疫チェックポイント阻害剤)

現在のところ2次治療、3次治療の選択肢の1つであり、薬剤としてはニボルマブが用いられます。しかし、ニボルマブを用いるタイミングについて一定の見解は得られておらず、他の薬剤を含め、免疫チェックポイント阻害剤の使用方法は今後大きく変化していく可能性があります。
ニボルマブの主な副作用としては、疲労感、味覚異常、吐き気のほか、下痢・口内炎などの胃腸障害、かゆみ・発疹などの皮膚障害があります。その他、腎臓や肝臓などの内臓機能の障害、糖尿病や甲状腺機能障害などの内分泌系の障害、貧血、横紋筋融解症、間質性肺炎など、全身のあらゆる部位にさまざまな症状を引き起こす可能性があります。ニボルマブによる治療終了後、数週間から数カ月たって副作用があらわれることもあるため注意が必要です。

7.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

以下に、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【腎・尿路(膀胱を除く)のがんの生存率について、さらに詳しく】
治療については、手術(外科治療)だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している、手術だけを受けた患者さんを対象とした生存率と、異なる場合があります。
表5 腎・尿路(膀胱を除く)のがんの病期別生存率(対象:2006〜2008年に診断を受けた患者さん)
表5 腎・尿路(膀胱を除く)のがんの病期別生存率(対象:2006〜2008年に診断を受けた患者さん)
全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2017年12月集計)による
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8.リハビリテーション

治療の途中や終了後は、体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示のもと、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動を、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

9.緩和ケア

緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。患者さんのニーズに応じて幅広い対応をします。患者さん本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えるようにしましょう。

10.臨床試験

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験や治験などの研究段階の医療が行われています。

1)腎細胞がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

11.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

1)転移

腎細胞がんは、さまざまな部位や臓器に転移する可能性がありますが、特に転移しやすい部位は肺です。骨や脳などに転移することもあり、転移した場所によって、あらわれる症状も多岐にわたります。

転移に伴う症状としては、肺への転移では、胸の痛み・咳・血痰(けったん)・黄疸など、骨への転移では、骨の痛み・骨折など、脳への転移では、頭痛・片側の運動麻痺(まひ)などがみられます。また、がんが全身へ広がる(転移する)のに伴って、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状があらわれます。

転移した場合の治療では、がんや体の状態に応じて、薬物療法や放射線治療を行います。また、腎臓内のがんの量を減らしたり、転移したがんを取り除いたりするために、手術が選択されることもあります。

2)再発

がんが腎臓にとどまっていて、根治的に腎摘除を行った場合でも、その後、20〜30%の患者さんで再発するとされています。しかし、再発する可能性の高さを知るための手法は確立しておらず、どのような患者さんで再発する可能性が高いかは明確ではありません。

再発した場合の治療は、転移のある腎細胞がんに対する治療と同様に、薬物療法が中心です。再発したがんの状況によっては、がんを手術で取り除くことも治療の選択肢の1つとなる場合があります。

なお、再発予防を目的として手術後に薬物療法を行うことは、現時点ではその効果が明確ではなく、重篤な副作用の報告もあることから、推奨されていません。
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