1.がんは珍しくない病気
高齢化が進んでいる今日、日本人の2人に1人は一生のうちに何らかのがんにかかるといわれています。がんは決して珍しい病気ではありません。また今日では、がんの治療をしながら、これまで通りに仕事や通常の社会生活をしている方も多くいらっしゃいます。
「がんになったのは、食生活が悪かったからだ」「家族が気を付けてあげられなかったからだ」などと、過去を振り返ったり、原因を求めたい思いにかられたりする方もいるかもしれません。しかし、多くのがんの原因は解明されていません。視点を未来に向け、少しずつでも、自分にできることを見つけていきましょう。
2.がんの治療の流れ
表1は、治療の流れに沿って、医療者に聞いておくとよいことの例を示したものです。大まかな流れを把握しておくと、どの場面で担当医との面談に家族として同席したらよいかを考えたり、気持ちの準備をしたりしやすくなります。診断時には、検査結果を踏まえて、担当医から医学的な診断名と、今後の治療方針について話があります。病気を正しく理解するためにも、正式な診断名をご本人と一緒に確認しましょう。また、治療開始までの間に、治療に関わる費用や生活について(仕事や学校、家事、育児、介護など)もある程度考えておくことも大切です。
3.がんになったご本人への接し方の基本
多くの患者さんは、がんになったからといって、極端に気を使われることや、無理に何かを言ってもらうことを望んでいるわけではありません。肩の力を抜いて、まずは、診断や治療などのその時々で、ご本人がどのような気持ちでいるか、想像してみましょう。
もちろん、ご本人の気持ちを100%理解することはできません。思いがけない行き違いが生じることもあることでしょう。
それでも、「一生懸命に相手を理解しようとしたこと」「手探りでも、コミュニケーションを重ねていったこと」は、相手に伝わり、そうしたあなたの存在そのものが、ご本人にとって大きな支えにつながります。
がんになったご本人との関係性はさまざまです。本人と家族や、配偶者、親、きょうだいなどの家族間で、治療方針などについての考え方が異なることもあるかもしれません。大切に思うからこそ、お互いに譲れず、対立してしまうこともあるでしょう。そのようなときには、具体的な方針については意見が異なるけれど、おおもとにある、がんと診断されたご本人を大切に思う気持ちは同じ、ということを改めて共有し、話し合うことが大切です。また、ご本人を含めた家族間の意見が合わないときには、第三者に入ってもらうのも1つの方法です。「がん相談支援センター」では、がんになったご本人だけでなく、ご家族も相談をすることができます。
4.情報はご本人とあなたを支える「力」
がんといっても、その種類や進行度によって状態はさまざまです。まずは、担当医とよく話し、病状を正確に把握することが大切です。疑問点は遠慮せずに質問しましょう。面談の前に、不安なことや聞きたいことをメモにまとめておくと役に立ちます。
その上で、もっと詳しく知りたいと思ったら、自分たちでも調べてみましょう。情報を得ることで、漠然とした不安が軽減することがあります。また、納得のいく決定をすることにもつながります。
5.家族は第二の患者
がんが珍しくない病気になりつつあるとはいえ、大切なご家族ががんと診断され、「家族ががんであることを、受け入れられない」などの思いを抱いたり、混乱したりすることはごく自然なことです。
そうした中で、「自分がつらくても、本人はもっとつらいのだから、我慢しなくては」と気持ちを抑えてしまう場合も少なくありません。その結果、さまざまな不安や気持ちの落ち込みが続いてしまう方もいます(図1)。
一方で、そうしたつらさを抱えながらも、仕事や学校、家族の世話や家事など、あなた自身の日常生活を維持していく必要もあるでしょう。
こうしたことから、ご家族は、がんになったご本人と同じかそれ以上に精神的負担がかかる「第二の患者」ともいわれています。ご本人をサポートするためにも、あなたが意識的に自分自身をいたわり、必要な支援を求めることは大切です。
6.困ったときには医療者や相談員に相談する
重要なことは、つらい気持ちをひとりで抱えないことです。
家族であるあなたの心配事を、友人や知人へ相談することだけでなく、医療者に相談することもできます。「担当医が忙しそうでなかなか話をしにくい」と感じる場合には、看護師などの医療者に声をかけても構いません。
また、「がん相談支援センター」を活用することも1つです。
「がん相談支援センター」は、ご家族の心のつらさへの対処はもちろん、患者さんご本人の副作用への対処や治療費の支払い、各制度の活用など、仕事や生活全般にわたって、幅広い相談ができます。
現実的に、家族だけでできる支援には限界があります。ぜひ、周囲の力やさまざまな制度を利用しながら、歩みを進めていきましょう。