1.横紋筋とは
筋肉は、横紋筋と平滑筋に分けられます。横紋筋は、さらに、骨格筋と心筋に分けられます(図1)。
骨格筋は、骨格に付着して体を動かすことを主な働きとしており、自分の意思で動かすことができます(随意筋)。
心筋は、心臓の壁を構成して心臓を動かすことを主な働きとしており、自分の意思で動かすことはできません(不随意筋)。
一方、平滑筋は消化管や気道などの内臓や血管の壁に見られる筋肉で、心筋と同様に、自分の意思で動かすことはできません(不随意筋)。消化管では、収縮・弛緩によって内容物(食べ物)を移動させるぜん動運動などの働きをしています。
横紋筋は、細長い繊維状の細胞(筋線維)が集まって構成されており、その名の通り、横じまの模様が見られます(図2)。
2.横紋筋肉腫とは
横紋筋肉腫は、筋肉などの軟らかい組織(軟部組織)から発生する軟部肉腫の1つで、将来、骨格筋(横紋筋)になるはずの細胞から発生した悪性腫瘍です。軟部悪性腫瘍としては小児で最も多く見られます。
横紋筋肉腫は、実際には病名に使用されている「横紋筋」(骨格筋)だけではなく、全身のあらゆる部位から発生します。
特に、
- 膀胱、前立腺、傍精巣、子宮、腟などの「泌尿器や生殖器」
- 傍髄膜(鼻咽頭、鼻腔、副鼻腔、中耳などの頭蓋底付近)や眼窩(眼球が入っている骨のくぼみ)を含む「頭頸部」
- 「四肢(上肢、下肢)」
によく見られます(図3)。
原発部位が四肢の場合、その周囲のリンパ節(領域リンパ節)や遠隔への転移が多いとされています。
3.症状
腫瘍が発生する部位により症状は異なります。一般に、局所(腫瘍が発生した部位)の腫れや痛みのほか、腫瘍の圧迫によって、眼球の突出、鼻血、頭痛、血尿、排尿の障害、便秘、腹痛など、さまざまな症状があらわれます。
治療に際しては、腫瘍が発生した部位に応じて、さまざまな診療科と連携します。例えば、頭頸部・鼻腔や喉頭であれば耳鼻咽喉科、四肢であれば整形外科、その他、小児外科、泌尿器科、婦人科、形成外科、皮膚科、脳神経外科など多くの診療科と関わることになります。
4.発生要因
横紋筋肉腫の発生要因は、多くの場合は不明です。近年、一部の横紋筋肉腫の発生に、ある特定の遺伝子の変異が関与していることが分かってきました。しかし、この変異がなぜ起こるのかは、まだよく分かっていません。