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造血幹細胞移植とは

更新・確認日:2017年12月07日 [ 履歴 ]
履歴
2017年12月07日 「造血幹細胞とは」「造血幹細胞移植の対象となる病気」「造血幹細胞移植の種類」「造血幹細胞移植の各方法の比較」「同種造血幹細胞移植:ミニ移植」の内容をまとめ、「造血細胞移植学会ガイドライン(第1、3巻,2014年/第2巻,2015年)」を基に更新し、タイトルを「造血幹細胞移植とは」に変更しました。更新に伴い「造血幹細胞移植の治療成績」を削除しました。
2015年07月06日 「造血幹細胞移植の対象となる病気」を現在の造血幹細胞移植の適応に合わせ、固形がんに関する内容などを削除しました。「造血幹細胞移植の種類」の過去の実施状況等に関する内容を削除しました。「造血幹細胞移植の各方法の比較」の移植の適応範囲に関する研究報告を一部削除しました。「同種造血幹細胞移植:ミニ移植」の研究報告に関する内容(図)を一部削除しました。「造血幹細胞移植の治療成績」の研究的治療に関する内容を一部削除しました。
2007年01月11日 「造血幹細胞とは」「造血幹細胞移植の対象となる病気」「造血幹細胞移植の種類」を掲載しました。
2006年12月11日 「同種造血幹細胞移植:ミニ移植」を掲載しました。
2006年10月01日 「造血幹細胞移植の各方法の比較」「造血幹細胞移植の治療成績」を掲載しました。

1.造血幹細胞とは

血液は「血球(けっきゅう)」と「血漿(けっしょう)」という細胞成分から成り立っています。
血球には赤血球・白血球・血小板の3種類の細胞があり、骨の中心部にある「骨髄」という組織でつくられています。造血幹細胞は骨髄の中で血球をつくり出すもとになっている細胞です。血漿は、血液から血球を除いた液体成分です。

造血幹細胞は骨髄の中で盛んに細胞分裂を行い、赤血球・白血球・血小板に成長します。造血幹細胞がさまざまな細胞に成長する過程を「分化」と呼びます。一方で造血幹細胞には、細胞分裂によって自らと同じ細胞をふやす能力もあり、これを「自己複製」と呼びます。このように造血幹細胞は、さまざまな細胞に「分化」できる性質と、「自己複製」によって増殖し数を維持できる性質とを兼ね備えています(図1)。

造血幹細胞は基本的には骨髄にありますが、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)という白血球をふやす薬を投与したときなどの特殊な状況では、骨髄から全身の血液中に流れ出すことがあります。血液中に流れ出した造血幹細胞を末梢血幹細胞(まっしょうけつかんさいぼう)と呼びます。また、赤ちゃんとお母さんを結ぶ臍帯(さいたい:臍の緒[へそのお])と胎盤(たいばん)の中に含まれる臍帯血にも造血幹細胞があります。
図1 造血幹細胞について
図1 造血幹細胞についての図

2.造血幹細胞移植とは

造血幹細胞移植は、通常の化学療法や免疫抑制療法だけでは治すことが難しい血液がんや免疫不全症などに対して、完治させることを目的として行う治療です。
通常の治療法に比べて、非常に強い副作用や合併症を生じることもあります。そのため、造血幹細胞移植を行うかを決定する際には、患者さんごとに、慎重な検討がされます。

造血幹細胞移植では、大量の化学療法や全身への放射線治療などからなる移植前処置(いしょくぜんしょち)のあとに、自分またはドナーから事前に採取した造血幹細胞を点滴で投与します。血液やリンパのがんなど化学療法や放射線治療が効きやすいがんが治療の対象になります。

移植前処置の目的は、腫瘍細胞を減少させ、患者さん自身の免疫細胞を抑制することです。これによって、移植された造血幹細胞が患者さんの骨髄に根づき(生着する)、正常な造血機能が回復することが期待できます。骨髄に根づいた造血幹細胞は、そこで血液細胞を造るようになります。
また、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植(同種移植)の場合は、ドナーのリンパ球が患者さんの腫瘍細胞を攻撃する移植片対白血病効果(GVL効果)も期待されます。

3.造血幹細胞移植の種類

造血幹細胞移植にはさまざまな種類があり、移植前処置の種類・患者さんとドナーとの関係性・移植に使用する細胞などによって分類されます(図2)。それぞれに特徴(長所・短所)があり(表1)、患者さんとドナーそれぞれの立場から総合的に最もよいと考えられる移植方法が選択されます。
図2 造血幹細胞移植の種類
図2 造血幹細胞移植の種類の図

1)移植前処置の種類による分類

(1)骨髄破壊的移植(フル移植)

大量化学療法や全身への放射線治療などからなる強力な移植前処置のあとに、造血幹細胞を投与する治療です。
強力な移植前処置を行うため、副作用や合併症が起きやすく、実施には制限があります。通常、50歳から55歳以下で、全身状態が良好な患者さんにのみ適応となります。

(2)骨髄非破壊的移植(ミニ移植)

骨髄非破壊的移植(ミニ移植)では、フル移植よりも強度が弱い移植前処置を行ったあと、造血幹細胞を投与します。
ドナーのリンパ球が患者さんの腫瘍細胞を攻撃する移植片対白血病効果(GVL効果)が得られると考えられますが、フル移植に比べて、抗腫瘍効果や免疫抑制効果が弱いため、再発や、ドナー由来の移植片への拒絶が増加する可能性があります。
移植前処置による副作用や合併症が少ないため、高齢者や臓器に障害がある患者さんにも適応になることがあります。

2)ドナーとの関係性による分類

(1)自家造血幹細胞移植(自家移植)

患者自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・保存しておき、大量化学療法による移植前処置後に投与する方法です(図3)。免疫反応に関連した合併症である移植片対宿主病(いしょくへんたいしゅくしゅびょう:GVHD)のリスクがないのが利点ですが、移植片対白血病効果(GVL効果)は期待できません。

(2)同種造血幹細胞移植(同種移植)

「同種」とは「同じ種類の生物」という意味で、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する方法です(図3)。大量の化学療法や全身への放射線治療からなる移植前処置のあとに、ドナーから採取した造血幹細胞を移植します。幹細胞ドナーは、患者さんとの間で白血球の型であるHLAの一致度が高い方が条件がよいとされます。ドナー候補は、まずHLAの合っている確率が高い血縁者(兄弟、姉妹、親子など)から探し、見つからないときは非血縁者(骨髄バンクドナーや臍帯血ドナー)から探します。
図3 自家移植と同種移植の違い
図3 自家移植と同種移植の違いの図

3)移植に使用する細胞による分類

(1)骨髄移植

骨髄にある造血幹細胞を採取して移植する方法です。通常、骨髄液は腸骨(ちょうこつ)という骨盤の骨から採取されます(図4)。
図4 骨髄採取の様子の図
図4 骨髄採取の様子の図

(2)末梢血幹細胞移植

血液中にある造血幹細胞を採取して移植する方法です。通常、造血幹細胞は血液中にはいないため、白血球をふやす薬であるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与したあと、骨髄から血液中に流れ出した造血幹細胞を「血球成分分離装置」を使って採取します(図5)。
図5 末梢血幹細胞採取の様子
図5 末梢血幹細胞採取の様子の図

(3)臍帯血移植

胎児と母親を結ぶ臍帯と胎盤に含まれる胎児由来の血液(臍帯血)に造血幹細胞が豊富に含まれています。臍帯血の提供に同意した妊産婦がドナーとなり、分娩後に臍帯血を採取し、臍帯血中に含まれる造血幹細胞を移植する方法です(図6)。
図6 臍帯血移植
図6 臍帯血移植の図
【表1 各造血幹細胞移植の特徴】
表1 各造血幹細胞移植の特徴
分類 種類 長所 短所
移植前処置 骨髄破壊的移植
(フル移植)
・抗腫瘍効果が高い ・移植前処置の副作用が強いため、年齢や全身状態などの制限がある
骨髄非破壊的移植
(ミニ移植)
・移植前処置の副作用が少なく、高齢者や臓器障害がある患者さんにも適応になる場合がある ・抗腫瘍効果や免疫抑制効果が弱いため、再発や拒絶が増加する可能性がある
ドナーとの
関係性
自家造血幹細胞移植
(自家移植)
・GVHDや拒絶がない ・幹細胞採取時に腫瘍細胞が混入することや、移植後のGVL効果がないことから、再発リスクが高まる可能性がある
同種造血幹細胞移植
(同種移植)
・GVL効果が期待できる ・GVHDや拒絶のリスクがあり、免疫抑制剤の投与が長期間必要になる
・免疫回復に月~年単位の長期間を要する
・免疫不全に伴って感染症にかかりやすくなる
細胞の由来 骨髄移植 ・通常1回の採取で移植に必要な細胞数を確保できる ・血液をあらかじめ採取する自己血貯血の必要があり、採取時の全身麻酔、採取後の痛みなど、ドナーの負担が大きい
・好中球回復(生着)が末梢血幹細胞移植に比べて遅い(3週間前後)
末梢血幹細胞移植 ・ドナーに全身麻酔や自己血貯血が不要であり、負担が少ない
・好中球回復(生着)までの期間が短い(2週間前後)
・採取前にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)の投与を要し、また1回の採取で必要な細胞数を確保できないことがある
・慢性GVHDが多い
臍帯血移植 ・ドナーへの負担がない
・HLA型の適合範囲が広い
・凍結保存された細胞のため、提供申請から臍帯血入手までの期間が短い
・慢性GVHDが起こりにくい
・採取できる細胞数が少ない
・好中球回復(生着)までの期間が長い(3-4週間)
・生着不全のリスクが高い
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4.HLAとは

HLA(Human leukocyte antigen)とはヒトがもつ白血球の型です。HLAには多くの型がありますが、造血幹細胞移植では特にHLA-A・HLA-B・HLA-C・HLA-DRを合わせる必要があります。ヒトはHLA-A・HLA-B・HLA-C・HLA-DRを2セットもっており、合計8抗原が一致することが最良です。両親から1セットずつ遺伝的に受け継ぐため、HLAが完全に一致する確率は兄弟姉妹間では1/4ですが、非血縁者間では極めて低くなります。ドナーを検索する際、血縁者にHLAが一致したドナーがいない場合は、骨髄バンクへ登録し非血縁ドナーを探します。

HLA8抗原が完全に適合しないと移植ができないわけではありませんが、一部が不適合のドナーから移植を受けた場合は、生着不全や移植片対宿主病(GVHD)をはじめとする免疫関連合併症のリスクが高くなるため、免疫抑制剤を使用して予防を強化する必要があります。また近年では、免疫抑制療法の工夫により、親子間などでHLAが1セットしか合っていないドナーからの移植(HLA半合致移植、通称ハプロ移植)も行われるようになっています。
【参考文献】
  1. 日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会編.造血細胞移植学会ガイドライン 第1巻.2014年;医薬ジャーナル社
  2. 日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会編.造血細胞移植学会ガイドライン 第2巻.2015年;医薬ジャーナル社
  3. 日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会編.造血細胞移植学会ガイドライン 第3巻.2014年;医薬ジャーナル社
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