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造血幹細胞移植の治療の流れ

更新・確認日:2017年12月07日 [ 履歴 ]
履歴
2017年12月07日 「造血幹細胞移植の方法」「造血幹細胞の採取方法」「造血幹細胞移植を受けるには」「同種造血幹細胞移植後のドナーリンパ球輸注」の内容をまとめ、「造血細胞移植学会ガイドライン(第1、3巻,2014年/第2巻,2015年)」を基に更新し、タイトルを「造血幹細胞移植の治療の流れ」に変更しました。
2015年07月06日 「造血幹細胞移植の方法」の過去の実施状況等に関する内容を削除しました。「同種造血幹細胞移植後のドナーリンパ球輸注」の研究的治療に関する内容を一部削除しました。
2006年10月01日 「造血幹細胞移植の方法」「造血幹細胞の採取方法」「造血幹細胞移植を受けるには」「同種造血幹細胞移植後のドナーリンパ球輸注」を掲載しました。

1.治療の流れ

造血幹細胞移植の約1週間前より、大量化学療法や全身放射線照射からなる「移植前処置(いしょくぜんしょち)」という治療を行います。移植前処置は、腫瘍細胞を減少させ、患者さん自身の免疫細胞を抑制することが目的です。
移植当日は、あらかじめ採取しておいた造血幹細胞を静脈から投与する「輸注(ゆちゅう)」を行います。移植した幹細胞が血液の流れに乗って骨髄にたどり着き、そこで増殖を始め、白血球数がふえてくることを「生着(せいちゃく)」と呼びます。移植前処置の強度などによって異なりますが、移植から約1~数カ月でドナーの血液に置き換わります(図7)。

移植後数週間は、「クリーンルーム」や「移植病室」と呼ばれる防護環境が保たれる病室で過ごします。これらの病室は、特別な空調設備(ヘパフィルター) を使用してきれいな空気を循環させています。自家造血幹細胞移植(自家移植)の場合は、白血球減少期間が比較的短く免疫抑制剤が投与されないため、一般病室で治療を行うこともあります。

生着が確認されると、防護環境から出て一般病棟で生活することができます。感染症などの合併症が軽快し、食事が摂取できるようになり、リハビリが進めば退院が可能です。移植後も、再発や移植片対宿主病(いしょくへんたいしゅくしゅびょう:GVHD)や感染症などさまざまな合併症に注意しながら、定期的な通院が必要です。
図7 造血幹細胞移植の流れ
図7 造血幹細胞移植の流れの図

2.移植前処置

移植前処置とは、移植の準備のために行う大量化学療法や全身への放射線治療などを組み合わせた治療のことで、移植当日の約1週間前から行います。

1) 目的

移植前処置は以下を目的として行います。
  • 腫瘍細胞をできるかぎり減少させる。
  • (同種移植の場合は)患者さん自身の免疫細胞を十分に抑制し、移植したドナー幹細胞の拒絶を予防する。

2) 方法

自家移植では大量化学療法を行い、同種移植では大量化学療法と全身放射線治療などを組み合わせて行います。移植前処置の内容、すなわち薬剤の種類や量、放射線の照射量は、病気の種類や残存状態、移植する造血幹細胞の種類、患者さんの年齢や全身状態によって異なります。同種移植の場合は、移植前処置の強さを弱めて行う「骨髄非破壊的移植(ミニ移植)」が行われることもあります。

3)副作用

移植前処置では、大量の抗がん剤投与や全身放射線治療などにより、通常の化学療法や放射線治療よりも強い副作用が起こります。一時的に白血球が極度に減少するため、感染が起こりやすい状態となります。同時に赤血球や血小板も減少するため、貧血や出血を予防するために、適宜、赤血球/血小板輸血を行います。実施する移植前処置の内容によって異なりますが、その他には、口内炎、脱毛、食思不振、嘔気・嘔吐、下痢などが高頻度に起こり、肝臓、腎臓、心臓、肺、中枢神経などの重要な臓器に障害が起こることもあります。いずれの合併症も重症化した場合には命に関わることがあります。

3.造血幹細胞の投与(輸注)

移植は、造血幹細胞の含まれた細胞液を、輸血のように静脈から点滴で投与して行います(輸注[ゆちゅう]といいます)。造血幹細胞の種類によって投与量や投与時間が異なります。副作用として、一時的に発熱やアレルギー反応が起こることがあるため、予防的に抗ヒスタミン薬やステロイドを投与します。

4.生着

移植した造血幹細胞が骨髄で白血球ををつくり出すまでには時間がかかるため、移植前処置により白血球数がゼロとなった状態が数週間続きます。この期間をなるべく短くするため、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)という白血球をふやす薬を使用します。

好中球数が500/μL以上となり、それが3日以上続くことを「生着(せいちゃく)」と呼びます。引き続いて赤血球や血小板の増加がみられ、輸血が不要になります。好中球生着に要する期間は、末梢血幹細胞移植では10~14日間程度、骨髄移植では2~3週間程度、臍帯血移植では3~4週間程度です。

移植された造血幹細胞が患者さんの骨髄に根づくと、造血幹細胞は、そこでふたたび血液細胞をつくるようになります。

頻度は多くありませんが、移植から一定期間を過ぎても白血球がふえてこないこと、あるいは一度ふえた白血球が再び減少してしまうことがあります。これを「生着不全(せいちゃくふぜん)」と呼び、移植した幹細胞の機能不全、移植後の重症感染症など、さまざまな原因によって起こります。生着不全の治療は原因によって異なりますが、再移植が必要になることもあります。

5.再発

造血幹細胞移植の効果により寛解あるいは治癒(ちゆ)と判断されたあとでも、白血病やリンパ腫などのもともとの疾患が「再発」・「再燃」することがあります。

再発時の治療方針は、患者さん個々の状況によって異なります。病状の改善を目指すために、多くの場合、初発時に行ったような多剤併用化学療法や放射線照射による強力な治療が必要になります。完治を目指し、再度、造血幹細胞移植(再移植)を行うこともあります。一部の疾患では、ドナーリンパ球輸注(DLI)により長期間の寛解が得られることもあります。完治が期待できない場合には、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持しながら病気と付き合っていくことを目指した緩和的治療を行います。再発時の治療方針はさまざまなので、どの方法を選ぶかよく相談する必要があります。
【ドナーリンパ球輸注(DLI)について、さらに詳しく】
DLIは、造血幹細胞を提供したドナーからリンパ球を改めて採取し、患者さんに投与する治療法です。ドナーのリンパ球は献血と同じように、全血採血または成分採血で採取します。DLIの適応は、T細胞残存による生着不全のほか、同種移植後の白血病の再発時、移植後にEBウイルスによるBリンパ球増殖性疾患などの重症ウイルス感染症を来した場合などに考慮されます。
生着不全に対して行われる際は、患者さんの骨髄を検査し、骨髄球系細胞が完全にドナー由来であるのに、白血球の中のT細胞に患者さん自身のものが残っている場合に考慮されます。ドナーのリンパ球を輸注することによって、血球の増加を妨げている患者さん由来のT細胞を排除し、正常な造血機能の回復に導くことを期待して行います。
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【参考文献】
  1. 日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会編.造血細胞移植学会ガイドライン 第1巻.2014年;医薬ジャーナル社
  2. 日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会編.造血細胞移植学会ガイドライン 第2巻.2015年;医薬ジャーナル社
  3. 日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会編.造血細胞移植学会ガイドライン 第3巻.2014年;医薬ジャーナル社
  4. 神田善伸.インフォームドコンセントのための図説シリーズ 造血幹細胞移植.2009年;医薬ジャーナル社
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