本文へ移動
HOME > 診断・治療 > がんの治療方法 > がんゲノム医療とがん医療における遺伝子検査 > がんゲノム医療 もっと詳しく知りたい方へ

がんゲノム医療 もっと詳しく知りたい方へ

更新・確認日:2018年11月21日 [ 履歴 ]
履歴
2018年11月21日 掲載しました。

1.がんゲノム医療とは

1)ゲノムとは

●ゲノムとは、遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体を意味します。
ゲノムは体をつくるための、いわば設計図のようなもので、一人一人違っています。
詳細は下記をご覧ください。

2)がんゲノム医療とは

●がんゲノム医療は、遺伝子情報に基づくがんの個別化治療の1つです。
がんゲノム医療とは、主にがんの組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べ(がん遺伝子パネル検査)、遺伝子変異(※1)を明らかにすることにより、一人一人の体質や病状に合わせて治療などを行う医療です。現在、実施するための体制づくりが進められています。

一部のがんの治療では、すでに標準治療として、がんの組織などを用いて1つまたはいくつかの遺伝子を調べる「がん遺伝子検査」を行い、遺伝子に合う薬が使われています。しかし、「がん対策推進基本計画(第3期)」の「ゲノム医療」の定義(※2)に基づいて解釈すると、がん遺伝子検査はがんゲノム医療に含まれません。
このサイトのページでは「ゲノム医療」と「がん遺伝子検査」を分けて説明します。「がん遺伝子検査」については下記をご覧ください。
ほとんどのがんは、遺伝により発生するものではありませんが、生まれもった遺伝子の個人差が主な原因となって発病する遺伝性腫瘍(家族性腫瘍ともいいます)もあります。このページでは遺伝性腫瘍以外のがんに対する「がんゲノム医療」について説明します。遺伝性腫瘍については下記をご覧ください。

(※1)遺伝子変異:がん細胞の中の遺伝子がなんらかの原因で後天的に変化することや、生まれもった遺伝子の違い
(※2)「ゲノム医療」とは、個人の「ゲノム情報」をはじめとした各種オミックス検査情報を基にして、その人の体質や病状に適した「医療」を行うこと。

3)がんゲノム医療が行われる場合

●がんゲノム医療は、標準治療がないまたは終了しているなどの条件を満たす場合に行われます。
「がんゲノム医療」として、多数の遺伝子を同時に調べる検査である「がん遺伝子パネル検査」は、標準治療がないまたは終了したなどの条件を満たす場合に行われるようになってきています(図1)。
図1 遺伝子情報に基づくがんの個別化治療
図1 遺伝子情報に基づくがんの個別化治療の図

2.がん遺伝子パネル検査

1)がん遺伝子パネル検査とは

●がん遺伝子パネル検査は、合う薬があるかどうかを調べる検査です。
がん遺伝子パネル検査は、生検や手術などで採取されたがんの組織を用いて、高速で大量のゲノムの情報を読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置で、1回の検査で多数(数十~数百)の遺伝子を同時に調べます。
遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などでその薬の使用を検討します。

2018年11月現在は、一部が研究や先進医療として行われています。2019年度以降、がん遺伝子パネル検査が保険診療で受けられることを目指して準備が進められています。

2)検査の流れ

がん遺伝子パネル検査では、図2のように、一度に多くの遺伝子を調べます。

例えば、ある特定の遺伝子変異があった場合には、解析結果について複数の専門家で構成される委員会によって検討されます。担当医はこれを診断や治療の参考にして、遺伝子変異に効果が期待できる薬があるかどうか検討を行います。
効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などを含めてその薬の使用を検討します(図2)。効果が期待できる薬がない場合には、ほかの治療を検討します。

がん遺伝子パネル検査を実施しても遺伝子変異がなかった場合には、ほかの治療を検討します。
図2 がん遺伝子パネル検査(がんゲノム医療)
図2 がん遺伝子パネル検査(がんゲノム医療)の図

3)検査の対象となる人や状態

●がん遺伝子パネル検査は、誰でも受けられるわけではありません。
現在(2018年11月)、がん遺伝子パネル検査は誰でも受けられるわけではありません。一般的には、①標準治療がないなどのまれながん(希少がん)、②原発不明がん、③標準治療終了後で、次の新たな薬物療法を希望する場合に検討します。また、年齢や全身状態などの条件もあります。

また、がん遺伝子パネル検査は、研究・評価中の検査であり、標準治療の選択において調べる検査ではありません。まずは、安全性と有効性が確認されている標準治療を受けることが強く勧められます。

4)検査結果に基づく治療

●がん遺伝子パネル検査を受けても必ず治療法が見つかるわけではありません。
がん遺伝子パネル検査の前には、あらかじめ以下についても知っておくことが大切です。

(1)がん遺伝子パネル検査で期待できること
がん遺伝子パネル検査を行って遺伝子変異が見つかった場合は、その遺伝子変異に対応した薬があれば、臨床試験などでその薬を使用することを検討できます。また、新たな治療法の開発などにつながる可能性があります。

(2)がん遺伝子パネル検査の限界
  • 検査の結果、遺伝子変異が見つからない場合もあります。がんの種類にもよりますが、治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異が見つかるのは全体の約半数の患者さんです。しかし、遺伝子変異があっても、使用できる薬がない場合もあり、がん遺伝子パネル検査を受けて、自分のがんに合う薬の使用(臨床試験を含む)に結びつく人は全体の10%程度といわれています。
  • がん遺伝子パネル検査では、多くの遺伝子を調べるため、本来目的とする個別化治療とは別に、がんになりやすい遺伝子をもっているかがわかる場合があり、これを二次的所見といいます。この場合、将来の健康に対する不安が生じる可能性があります。もちろん、もともと調べたいがんのこと以外(遺伝性のがんなど)は、たとえ見つかったとしても結果を聞かなくても構いません。結果を聞く場合にも、十分な理解ができるように、国は病院の体制を整備しています。
  • 以前に手術などで摘出したがんの組織を使用する場合もありますが、新たに組織を採取するために生検を行う場合は、生検に伴って体に負担が生じる可能性があります。

3.がんゲノム医療を受けたいときには

1)がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療連携病院

●先進医療としてのがん遺伝子パネル検査は、「がんゲノム医療中核拠点病院」と「がんゲノム医療連携病院」などで行われています。
2018年2月、「がんゲノム医療中核拠点病院」(全国11カ所)が指定されました。「がんゲノム医療中核拠点病院」は、遺伝子解析を行うことができ、専門の人材を育成するなど、がんゲノム医療を提供する基準を満たした病院です。

また、中核拠点病院と連携してがんゲノム医療を行う「がんゲノム医療連携病院」(全国135カ所[2018年10月時点])も発表されました。 詳しくは、以下をご覧ください。
がんゲノム医療を受けたいときには、まずは担当医に相談しましょう。
また、お近くのがん相談支援センターでも相談を行うことができます。お近くのがん相談支援センターは、下記のページから検索することができます。

2)その他関連して知っておきたいこと

(1)インターネットでの情報について
インターネットには信頼できる情報もある一方で、効果が科学的に証明されていない自由診療で行われる治療に関する情報もあるため、慎重な確認が必要です。
数ある情報に迷った時には、ひとりで悩まず担当医やがん相談支援センターにご相談ください。
(2)市販の遺伝子検査について
がんの発生や生活習慣病に関連した遺伝子検査が可能であるとして、簡易な遺伝子検査(いわゆるDTC[Direct-to-Consumer])が市販されています。市販の遺伝子検査の多くは、遺伝や医学を専門とする医師の判断を必要としておらず、検査結果やその解釈、推奨される対策などの信頼性に欠けるものもあります。市販の遺伝子検査を受ける場合には、信頼できる医療機関か、対面での遺伝カウンセリングが行われる体制が整っているかなどについて慎重な確認が必要です。遺伝子検査の結果、家族性腫瘍などの遺伝性疾患の可能性が見つかる場合があり、専門家のサポートが必要になります。
市販の遺伝子検査を希望する場合には、遺伝医学などの専門家(臨床遺伝専門医等)に相談することが望ましいとされています。

4.もっと詳しく:ゲノムとは、遺伝子とは

1)ゲノムとは

●ゲノムとは、遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体を意味します。
私たちの体は、約37兆個もの細胞からなっています。細胞の中には「核」と呼ばれる大切な部分があり、その中に遺伝子を乗せた「染色体」が入っています(図3)。ゲノムとは、染色体に含まれるすべての遺伝子と遺伝情報のことです。
染色体を構成する重要な成分が「DNA」で、DNAは4種類の「塩基」と呼ばれる分子のブロックが一列に並んでできている長い分子です。この4種類の塩基の並び(「配列」といいます)が、単語や文章のように決められた意味をもっていて、私たちの「遺伝子」の情報(遺伝情報)を構成しています。
図3 ゲノムと遺伝子
図3 ゲノムと遺伝子の図

2)遺伝子とは

●遺伝子は体をつくるための情報をもつ物質の一部(遺伝子領域)です。たくさんの遺伝子があり、それぞれ遺伝子の機能は異なります。
遺伝子は、染色体の一部です。1人のゲノムには約2万~3万個の遺伝子が含まれているといわれており、遺伝子ごとに、体をつくるためのさまざまな機能があります。

人のゲノムは31億もの塩基配列からなりますが、一部の塩基配列が異なること(遺伝子多型)で、一人一人の個性が生まれます。これにより外見や性格、病気のなりやすさ、薬の効き方、副作用などが人によって違ってくると考えられています。

こういった塩基配列の違いは、「生殖細胞(精子、卵子)」を介して親から子に伝わります。一方、環境や生活習慣や加齢などによって体細胞(体をつくる細胞)の一部に塩基配列の違いが起こることもあります。

3)がんとゲノム・遺伝子

●がんは、ゲノムの変化(変異)によって起こる病気です。
がんは、ゲノムの変化(変異)に伴って塩基配列の違いが生じ、遺伝子が正常に機能しなくなった結果、起こる病気です。

ほとんどのがんは、喫煙や生活習慣、加齢などが原因となり、正常な細胞の特定の「体細胞」の遺伝子が後天的に変異することによって、がん細胞が発生します。がんが進行していく際には、がん細胞においてのみこの遺伝子変異が、進行・増殖のもととなると考えられています。このようながん細胞にだけ起きた遺伝子変異は、次の世代に遺伝するものではありません。

一方で、原則的に生涯変化しない、生まれもった「生殖細胞」の遺伝子変異が主な原因となって発病するがんもあります。これらは、がんの中では珍しく、親から子へ遺伝する可能性がある遺伝性腫瘍(家族性腫瘍)といいます。

5.よく使われる専門用語

ゲノム :遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体に対する総称。
遺伝子変異 :遺伝子がなんらかの原因で後天的に変化することや、生まれもった遺伝子の違いのこと。
がんゲノム医療 :主にがんの組織を用いて、遺伝子を網羅的に調べ、一人一人の体質や病状に合わせて治療などを行う医療。
がん遺伝子検査 :1回の検査で1つまたはいくつかのがんに関連する遺伝子を調べる検査。一部のがんでは保険診療となっている。
がん遺伝子
パネル検査
:1回の検査で多数の遺伝子を同時に調べる検査。
コンパニオン診断薬 :最適な治療薬を選ぶために、がん組織などを手がかりに調べる診断薬。薬とセットで使うため、英語で「対(つい)の一方」を意味するコンパニオン診断薬と呼ばれる。
標準治療 :臨床試験により、安全性や有効性が確認された現時点で最良の治療。
個別化治療 :遺伝子変異などの一人一人の体質や、病気の特徴に合わせた治療を行うこと。
次世代
シークエンサー
:ゲノムの塩基配列を高速に読み出せる装置。従来のDNAシークエンサーに比べて、一度に多くの遺伝子を調べることができる。また、これまでよりも短時間(2週間~1カ月)で、費用が安く解析できる。
研究段階の医療 :よりよい標準治療の確立を目指している研究・開発中の医療。
保険診療 :必要かつ適切な医療について認められている、健康保険で受けられる診療。

6.「がんゲノム医療」参考文献

  1. 外部サイトへのリンク厚生労働省.がん対策推進基本計画(第3期);2018年
  2. 外部サイトへのリンク厚生労働省.がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会 報告書;2017年
  3. 外部サイトへのリンク厚生労働省.医療中核拠点病院等の指定要件に関する報告書;2017年
  4. 日本癌学会ウェブサイト.日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会合同 次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス(第1.0版);2017年(閲覧日:2018年11月20日)
  5. 外部サイトへのリンク厚生労働省.第1回がんゲノム医療中核拠点病院(仮称)等の指定要件に関するサブワーキンググループ (資料);2017年
  6. Ahmet Zehir, et al.Mutational Landscape of Metastatic Cancer Revealed from Prospective Clinical Sequencing of 10,000 Patients.Nature Medicine.2017June;23(6):703-713
  7. 外部サイトへのリンク厚生労働省.ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース 第4回 高田委員提出資料2「一般市民を対象とした遺伝子検査に関する見解」;2016年
  8. 日本医師会ウェブサイト.医の倫理 かかりつけ医として知っておきたい遺伝子検査、遺伝学的検査 Q&A;2016年(閲覧日:2018年11月20日)
  9. 服部成介、水島-菅野純子 著.よくわかるゲノム医学 –ヒトゲノムの基本から個別化医療まで- 改訂第2版.2016年,羊土社
  10. 日本臨床腫瘍学会 編.新臨床腫瘍学 改訂第5版.2018,南江堂
  11. 新井正美 著.癌の遺伝医療-遺伝子診断に基づく新しい予防戦略と生涯にわたるケアの実践-.2015年,南江堂
よりよい情報提供を行うために、アンケートへの協力をお願いいたします。
アンケートページへ
用語集
このページの先頭へ