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さまざまな症状への対応

排尿困難(尿が出にくい)

~がんの治療を始める人に、始めた人に~

1.排尿困難(尿が出にくいこと)について

がんの治療中や治療後に、尿閉にょうへい(尿が出なくなる)、尿に勢いがない、おなかに力を入れないと尿が出ない、尿が途中で途切れる、尿を一度に出しきることができない、排尿したあとも尿が残っているように感じる(残尿感がある)などの症状が出ることがあります。

頻尿や尿漏れなどについての情報を紹介しています。
泌尿器のさまざまな症状やその原因、対処の方法などについての専門医の解説が掲載されています。

2.原因

排尿困難(尿が出にくいこと)は、加齢などに伴い多くの人が経験する症状です。原因としては、膀胱炎などの尿路感染症や結石、前立腺肥大症、糖尿病などの生活習慣病、がん以外の病気で服用している薬の副作用などがありますが、がんそのものや、がんの治療によって起こることもあります。

がんによるものとして、膀胱や前立腺、子宮、卵巣、直腸のがんが尿道(尿の通り道)を圧迫し、尿が通りにくくなることがあります(通過障害)。脳腫瘍や脊髄せきずい腫瘍などにより排尿に関わる神経の働きが悪くなることで、うまく排尿できなくなることもあります(膀胱収縮障害)。また、脳腫瘍によって脳の排尿をコントロールする部分に障害が生じると、排尿が困難になることがあります。

がんの治療によるものとしては、子宮けいがん、子宮体がん、卵巣がん、直腸がんなどの骨盤内にあるがんを切除する際に、排尿に関わる神経に傷が付き、うまく排尿できなくなることがあります。また、がんの治療に用いる薬や、医療用麻薬や不安を和らげる薬などがんの治療に伴って使用する薬の副作用で、尿が出にくくなることもあります。

3.尿が出にくいときには

尿が出にくいとき、残尿感が続くときは、担当医に連絡して、病院に行ったほうがよいか確認しましょう。担当医から泌尿器科の受診を勧められることもあります。受診した場合は、排尿の状況を確認したり、膀胱内に残っている尿の量を確認する検査を行ったりして、原因を調べます。

尿が全く出ない、または出すのが極めて困難な状況を尿閉といいます。尿閉には、急に排尿ができなくなり、強い尿意や下腹部の痛みを伴う急性尿閉と、自覚症状のないまま次第に出し切れない尿の量が増えていく慢性尿閉があります。

尿が膀胱内に多量にたまっているのに全く出ないときには、緊急処置として、カテーテルという細い管を尿道口から挿入して尿を体の外に出します。完全に尿を出しきったあとすぐにカテーテルを抜く方法(導尿どうにょう)と、しばらく尿道にカテーテルを挿入したままにする方法(尿道カテーテル留置)があります。症状が長く続く場合は、自宅などで、自分でカテーテルを使用して排尿することもあります(自己導尿)。

服用している薬の副作用が原因と考えられる場合には、服薬を中止したり、同じ効果をもつ別の薬に変更したりすることがあります。このような場合は、医師から指示がありますので、自分の判断で薬を飲むのをやめたり、別の薬に変えたりするのはやめましょう。

尿が出にくいときには、症状の程度や原因に応じて、上のような対応をしたり、薬を使って治療したり、生活の中でできる工夫を取り入れたりします。まずは症状の程度や原因を確かめることが大切です。気になる症状がある場合には、担当医に相談しましょう。

4.本人や周りの人ができる工夫

本人や周りの人ができる工夫には、次のようなものがありますが、効果が科学的に証明されているわけではありません。以下の記載をヒントに、自分に合う方法を探していきましょう。必要に応じて、がんの治療を受けている病院や泌尿器科などで相談してみましょう。

水分などを必要以上にとりすぎない

一日2L以上の水分を飲んでいる場合には、量が多すぎないか、自分にとって適正な量はどのくらいか、担当医に相談してみましょう。また、アルコールやカフェイン、刺激の強い食品などについても、控えたほうがよいとされています。

時間を決めて、定期的にトイレに行く

がんの手術後に尿意を感じづらいときは、2~4時間ごとなど間隔を決めてトイレに行きます(時間排尿)。適切なタイミングには個人差もあります。

図1 時間排尿
図1 時間排尿

自分なりの「尿がたまったサイン」を見つけてトイレに行く

尿意の代わりになるサイン、例えばおなかの下のほうが張る、重い感じがするなど、尿がたまってきたときの自分の体の変化を見つけ、それを手掛かりにトイレに行くようにします。すぐには見つからないかもしれませんが、時間をかけて探していきましょう。

自分に合った排尿方法を探し、試してみる

以下のような工夫をするなど、自分に合った排尿方法を見つけていきましょう。よい方法がないか、泌尿器科などで相談してみるとよいでしょう。

  • 腹圧をかけて排尿する
    図2 腹圧をかけた排尿法
    図2 腹圧をかけた排尿法
  • 一度排尿した直後に、もう一度排尿する(2回排尿)
  • 洗浄機能付き便座の温水による刺激で、排尿を促す
  • ぬるま湯を陰部にかける
  • トイレに設置してある「流水音」や水の流れる音を流す
  • リラックスできる環境を整える
  • 排尿している自分を思い浮かべながら排尿する

体調を整える

体調を整えるための工夫をしましょう。体を冷やさないことが大切です。また、便秘によって膀胱が圧迫されると、尿の通りが悪くなることがあるため、便秘を予防しましょう。水分を適度にとることや、食生活を整えることを心がけるとよいでしょう。便秘の症状がみられる場合には、早めに担当医に相談しましょう。

骨盤底筋体操を行う

骨盤底筋とは、肛門や尿道などを締める筋肉の集まりです。骨盤底筋を鍛えると、排尿困難の改善に効果があるとされています。

骨盤底筋体操は、骨盤底筋を鍛えるために行う体操です。あおむけや四つんばいなどの体勢を取り、意識して肛門をキュッと締め、5つ数えて緩めるという動作を繰り返します。このとき、腹筋に力が入らないように気を付けましょう。1セット10~20回程度で1日4セットを目安に行います(図3、4)。

骨盤底筋を鍛える方法には、このほかにもさまざまなものがありますので、医師や看護師などの医療者に相談し、自分の生活に取り入れやすく、続けられそうなものを選びましょう。

図3 骨盤底筋体操(あおむけ)
図3 骨盤底筋体操(あおむけ)
日本がんリハビリテーション研究会編「がんのリハビリテーション診療ベストプラクティス 第2版(2020年)」(金原出版)より作成
図4 骨盤底筋体操(四つんばい・座位・立位)
図4 骨盤底筋体操(四つんばい・座位・立位)
日本がんリハビリテーション研究会編「がんのリハビリテーション診療ベストプラクティス 第2版(2020年)」(金原出版)より作成

排尿日誌を付ける

排尿日誌は、市販のノートなどにトイレに行った時間や尿の量などの状況を記録するものです。記録を付けることで、自分の排尿の状況を客観的に把握することができ、対処の方法を考えるヒントにもつながります。記載する内容や期間については、症状などによって異なるため、担当医に相談しましょう。

排尿日誌をつけると、症状や状況を担当医に正確に伝えることができます。自分に合った治療法を見つけることにもつながるため、治療方針を決める前に、医師から作成を指示されることもあります。

図5 排尿日誌(例)
図5 排尿日誌(例)

5.こんなときは相談しましょう

尿が出ず、下腹部が張って苦しいときや、1日以上尿が出ないとき、極端に尿の量が少ないときには、すぐに受診する必要があります。気付かないうちに症状が進むこともあるため、尿が出にくくなったと感じたときは、迷わず担当医に連絡して相談しましょう。

受診するときは、いつから、どのような症状があるか伝えます。飲んだ水分の量やトイレに行った回数、時間などを記録した排尿日誌をつけている場合は、持参しましょう。

6.「排尿困難(尿が出にくい)」参考文献

  1. 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会編.がん患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン2016年版,金原出版.
  2. 日本緩和医療学会編.専門家をめざす人のための緩和医療学 改訂第3版.2024 年,南江堂.
  3. 日本婦人科学会編.患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版.2023年,金原出版.
  4. 大腸癌研究会編.患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版.2022年,金原出版.
  5. 西智弘ほか編,森田達也ほか監.緩和ケアレジデントマニュアル 第2版.2022年,医学書院.

本ページの情報は、「『がん情報サービス』編集方針」に従って作成しています。十分な科学的根拠に基づく参考資料がない場合でも、有用性が高く、体への悪影響がないと考えられる情報は、専門家やがん情報サービス編集委員会が評価を行った上で掲載しています。

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更新・確認日:2025年03月27日 [ 履歴 ]
履歴
2025年03月27日 「尿が出にくい」を「「尿が出にくい もっと詳しく」と統合し、タイトルを「排尿困難(尿が出にくい)」に変更して更新しました。
2019年12月05日 掲載しました。
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