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Q1 がんの患者でも、インフルエンザ予防接種を受けることができますか?
A1できます。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、接種自体でインフルエンザを発症することはありません。そのため安全性の面では、がんではない方と変わりません。一方で効果の面では、高度に免疫機能が低下した状態の間は、ワクチンの効果が十分得られないことがありますので、がんの症状や全身状態によって接種の時期などを検討する必要があります。まずはがん治療の担当医に相談してください。
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Q2 がんの治療中にインフルエンザ予防接種は勧められますか?
A2勧められます。がん種やがん治療により、がんの治療中の方の多くは、がんではない方と比べると、免疫機能が低下する傾向があります。免疫とは、感染症から自分の体を守る仕組みで、体内に入ってきた微生物を攻撃したり、一度かかった感染症にかかりにくくしたりする働きがあります。免疫機能が低下していると、インフルエンザにかかった場合に、通常より重症化する危険性があります。インフルエンザワクチンを接種してもインフルエンザにかかってしまうことはあるのですが、重症化を予防する効果があります。このように免疫が弱ってしまう中であってもインフルエンザへの抵抗力を高めるために、がんではない方以上に、がんの治療中の方にはインフルエンザ予防接種が勧められています。
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Q3 免疫機能が低下する治療は何ですか?
A3薬物療法の中には強い免疫抑制を伴うものがあります。副作用には個人差がありますが、骨髄抑制、白血球減少などがみられた場合は気を付けましょう。また、造血幹細胞移植を受けた場合、造血機能が回復するまで個人差はありますが1年から2年かかります。その他に、免疫器官として重要な役割を担っている脾臓を摘出または放射線治療した場合に免疫機能が低下することがあります。実際に免疫が低下しているかどうかは、血液検査などにより、がん治療の担当医の判断が必要です。
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Q4 インフルエンザ予防接種はどのタイミングですればよいですか?
A4ワクチンにより免疫ができるまでには、接種してから約2週間かかります。インフルエンザの流行は通常12月下旬から始まり1月から2月にピークを迎えますので、12月中旬までには接種しておくことが望ましいとされています。ただし、免疫機能が低下している状態ではワクチンを接種しても免疫が十分にできない可能性があります。そのため、Q3のように免疫機能が低下する治療を行う場合には、治療開始2週間前には接種していることが望ましいでしょう。すでに治療中、治療後の方は免疫機能の状態をみて接種のタイミングを検討する必要がありますので、がん治療の担当医とよく相談されることをお勧めします。
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Q5 インフルエンザ予防接種に保険適用や公費補助はありますか?
A5ワクチンの接種は病気に対する治療ではないため、健康保険が適用されません。原則的に全額自己負担となり、費用は医療機関によって異なります。
定期接種として、予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づく対象者については、接種費用の公費補助があります。その補助額は市区町村によって異なりますので、詳しくはお住まいの市区町村(保健所・保健センター)、医師会、医療機関、かかりつけ医などへお問い合わせください。
※定期接種の対象でない方であっても、市区町村によっては、独自の助成事業を行っている場合があります。予防接種法に基づく定期のインフルエンザ予防接種の対象となる方
- 65歳以上の方
- 60~64歳で、心臓、じん臓もしくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方(おおむね、身体障害者障害程度等級1級に相当します)
- 60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方(おおむね、身体障害者障害程度等級1級に相当します)
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Q6 インフルエンザワクチンの副反応は大丈夫ですか?
A6ワクチン接種後の反応で、免疫ができる以外のものを副反応といいます。インフルエンザ予防接種では、接種部位の痛み、頭痛、鼻水、疲労感、微熱などの副反応がみられることがあります。これまでのデータでは、これらの副反応の起こり方はがんであるかどうかとは関係がありません。がんであるかどうかに関わらず、過去に予防接種で強い副反応が出たことがある方や、卵が原因のアレルギー反応が強く出たことがある方は接種前に医師に伝えることが大切です。また、ワクチン接種後は安静にして様子をみましょう。気になる症状が出た場合は接種した医療機関に連絡をしてください。
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Q7 ワクチン以外にインフルエンザ予防として大切なことは何ですか?
A7ワクチンの接種だけでは、インフルエンザにかかることを完全には予防できません。そのため手洗い、うがいなど一般的な感染症予防策をしっかり守ることが大切です。手洗いの際には、指先や親指を含めて手指全体を15秒以上かけて十分に洗いましょう。インフルエンザの流行期には、できるだけ人混みを避けることや、睡眠や食事など規則正しい生活を送るよう心がけてください。また、同居のご家族にもしっかりインフルエンザ予防をしていただくことが、がんの治療中の方への感染予防につながります。体調が悪い時には、十分な手洗いのほかマスクをするなどして、がんの治療中の方にうつさないように配慮することが重要です。
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Q8 インフルエンザにかかってしまったらどうすればよいですか?
A8まずはかかりつけの内科など近くの医療機関を受診してください。がんの治療中であることを伝える必要がありますが、このような場合に何を伝えるべきなのか、前もってがん治療の担当医に確認しておくとよいでしょう。また、インフルエンザにかかった場合、がんの治療を中断したり、薬を変えたりすることもありますので、どのタイミングで連絡をしたらよいのかについても、がん治療の担当医にあらかじめ確認しておきましょう。
「インフルエンザQ&A」参考文献
- 厚生労働省ウェブサイト.インフルエンザQ&A
- 国立感染症研究所ウェブサイト.インフルエンザ
- 日本臨床腫瘍学会編:発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン改訂第2版;2017年.71-2,南江堂
- 日本乳癌学会編:乳癌診療ガイドライン(1)治療編2018年版;175-7,金原出版
- Beck CR, McKenzie BC, Hashim AB, et al.: Influenza vaccination for immunocompromised patients: systematic review and meta-analysis from a public health policy perspective. PLoS One, 2011; 6(12): e29249
- Beck CR, McKenzie BC, Hashim AB, et al.: Influenza vaccination for immunocompromised patients: systematic review and meta-analysis by etiology. J Infect Dis, 2012; 206(8): 1250-9
- Eliakim-Raz N, et al.: Influenza vaccines in immunosuppressed adults with cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 10: CD008983